D51ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)
D51ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお送りします。毎夜22:00~24:00の「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定で、後藤雅洋が執筆したコラムとともにジャズの魅力をお伝えします。

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月曜日 22:00~

マル・ウォルドロン『レフト・アローン』(Bethlehem)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第88回
「サイドマン聴きシリーズ」 その5・ジャッキー・マクリーンの2(再放送)


「サイドマンのスター」というのは少し矛盾した言い方ですが、ジャッキー・マクリーンはまさにサイドマンのスターなのです。似た言い方に、「サイドマン聴きシリーズ」にも登場した「名盤の陰にトミフラあり」の名脇役、トミー・フラナガンがいますが、この二人の立ち位置はちょっと違う。
ピアノとアルトの違いもありますが、トミー・フラナガンは主役のホーン奏者をひき立て、結果として「名盤作り」に貢献しているわけですが、ジャッキー・マクリーンは彼ならではの個性的アルト・サウンドを聴くために、マクリーン・サイド盤をチェックするファンが多いのです。
結果として、必ずしも名盤ではなくとも、マクリーンの存在に的を絞れば楽しめるアルバムや、意地の悪い言い方ですが、主役やアルバム・コンセプトはいまいちでも、マクリーン・フリークなら楽しめるマニアック盤も今回は登場です。
トップバッターはドナルド・バード。彼もまたハードバップのスターで、マクリーン、バードの二人に、低音域で重石の役目を果たすバリトン・サックスのペッパー・アダムスが加わった豪華3管アルバム『オフ・トゥー・ザ・レイシス』(Blue Note)は、どなたにもオススメの好盤です。冒頭の名曲《恋人よ我に帰れ》が気持ちよい。
ジャッキー・マクリーンといえばハードバップのイメージが強いのですが、彼はオーネット・コールマンと共演したことでもわかるように、フリー・ジャズへの関心も強かった。2番手に登場するトロンボーン奏者、グレシャン・モンカー3世は、フリー・ジャズというより“60年代新主流派”に括られるミュージシャンですが、こうしたちょっと“新しめのサウンド”でも、マクリーンの存在感は確かです。共演のボビー・ハッチャーソンのヴァイブがいかにも新主流派的。
ドラム奏者、アート・テイラーの隠れ好盤『テイラーズ・ウェイラー』(Prestige)の、そのまた裏側、アナログ時代B面に収録された、ドナルド・バード、チャーリー・ラウズらとの3管セッションは、何の説明も要らないハードバップ好演。《クバーノ・チャント》のエキゾチックな曲想が心地よい。
次は極め付きマル・ウォルドロンの『レフト・アローン』(Bethlehem)です。伝説の歌い手、ビリー・ホリディ晩年の伴奏者を務めたマルが、ホリディに捧げた名曲《レフト・アローン》をマクリーンがホリディに成り代わり切々と歌い上げます。
ジャズではほんとうに珍しいチューバを吹く、レイ・ドレイパーの『チューバ・サウンド』(Prestige)は、正直名盤とは言いかねるのですが(リーダーのソロが少々タイクツ)、われらがマクリーンに的絞れば充分楽しめる。まさに「サイドマンのスター」の本領発揮的アルバムです。プレスティッジ時代のマクリーンは、ちょっと黄昏た気分が聴きどころでもあります。
一方、オルガン奏者ジミー・スミスと組んだ『オープン・ハスス』(Blue Note)でのマクリーンは、アーシーでソウルフルな側面を見せ、芸風の幅の広さを実感させてくれます。どんな楽器と組み合わせてもマクリーン節は健在なのです。そして最後、ハンク・モブレイの『ハイ・ヴォルテージ』(Blue Note)では、トランペットのブルー・ミッチェルと共にガッチリとモブレイを支えている。このアルバムは作曲者としてのモブレイの持ち味も聴きどころです。

【掲載アルバム】
ドナルド・バード『オフ・トゥー・ザ・レイシス』(Blue Note)
マル・ウォルドロン『レフト・アローン』(Bethlehem)
ジミー・スミス『オープン・ハウス』(Blue Note)

月曜日 22:00~ 2時間番組

火曜日 22:00~

マイルス・デイヴィス『バグス・グルーヴ』(Prestige)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第21回
『ジャズレーベル完全入門』~プレスティッジ編(再放送)


プレスティッジは、ブルーノートと並んでジャズ黄金時代と言われた1950~60年代の名盤を数多く残している。しかし二つのレーベルの性格は微妙に違う。ブルーノートがリハーサルにもちゃんとギャラを払って、よりキチンとした作品を作ろうと努力したのに比べ、プレスティッジは悪く言えば大量生産、よく言えばドキュメンタリー的手法で生々しくジャズ・シーンを切り取った。
しかしそのやり方は成功した。理由は二つあって、まず1949年という比較的早い時期に設立されたため、若き日のマイルスをはじめ、多くの有能な新人ミュージシャンを他社に先んじて契約できたということ。次いで、レーベルの活動時期がジャズの黄金時代と一致していたという幸運がある。
プレスティッジ・レーベルはマイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、エリック・ドルフィーといったジャズの巨人たちの優れた録音を残した一方、ジャッキー・マクリーンに代表される、愛すべきハードバッパーたちの傑作アルバムも大量に制作している。
プレスティッジのマイルスといえば、たった2回のセッションで4枚もの優れたアルバムを作ってしまった『リラクシン』などing4部作が有名だが、それに先んじる1954年に録音された『バグス・グルーヴ』もプレスティッジならではの傑作だ。マイルスとモンクが喧嘩したというウワサが流れたこの“クリスマス・セッション”は、ハードバップの先駆けとしての貴重な記録だ。
記録といえば、ほとんどレギュラー・グループを持てなかったエリック・ドルフィー唯一の双頭コンボであるブッカー・リトルとのライヴ・アルバム『ファイヴ・スポット第1集』は、彼らの貴重な共演の記録であると同時に、ドルフィーの代表作である。そして、マイルス・グループでデビューしたコルトレーンが、ようやく自分のスタイルを確立させた記念碑的作品『ソウルトレーン』も、彼の初期の傑作として愛聴されている。
プレスティッジで一番知られているアルバムは、なんと言ってもソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』だろう。ハードバップ絶頂期と言われた1956年に録音されたこの作品は、インプロヴァイザー、ロリンズの才能を余すところ伝えた名盤中の名盤だ。意外なところでは、クール派の白人テナー奏者スタン・ゲッツの『スタン・ゲッツ・カルテット』がある。しかし、プレスティッジはリー・コニッツ、レニー・トリスターノといったクール・ジャズの代表的ミュージシャンをいち早く録音しており、このレーベルの幅の広さを示した作品と言ってよいだろう。
そして、つい最近惜しくも亡くなったジャッキー・マクリーン初期の傑作『4,5、&6』、マクリーンと並ぶパーカー派アルト奏者、フィル・ウッズの『ウッドロアー』、プレスティッジのハウス・ピアニストといってもよいマル・ウォルドロン『マル1』などは、まさにジャズ喫茶の定番アルバムである。珍しいのは、巨人バド・パウエル唯一のプレスティッジ吹込み『スティット、パウエル、J.J.』で、これは彼の代表作といってよい素晴らしい演奏だ。最後に収録したレイ・ブライアントの『レイ・ブライアント・トリオ』は、名曲《ゴールデン・イヤリング》の魅力で多くのファンに親しまれている。

【掲載アルバム】
マイルス・デイヴィス『バグス・グルーヴ』(Prestige)
エリック・ドルフィー『ファイヴ・スポット第1集』(Prestige)
ソニー・ロリンズ『サキソフォン・コロッサス』(Prestige)

火曜日 22:00~ 2時間番組

水曜日 22:00~

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第34回
マイルス・デイヴィス特集 その1(再放送)


今回から3回にわたってマイルス・デイヴィスのアルバムをご紹介いたします。第1回は彼のスタート地点から、ハードバップが爛熟期を迎えた1958年までの作品を順に聴いていただきます。
ジャズの帝王と呼ばれたマイルスは“クール”“ハードバップ”“モード”など、モダンジャズのほとんどのスタイルに顔を出している特異なミュージシャンだ。その彼のスタート地点を示すのが、1949年にパリで開かれた国際ジャズ・フェスティヴァルのラジオ実況録音である。アナウンサーがタッド・ダメロンとの臨時編成で登場するマイルスを、今最新流行のジャズスタイル、ビ・バップのスターとして紹介している。
それも当然のことで、マイルスはこの前年までビ・バップの創始者であるチャーリー・パーカーのコンボに参加していたのだ。パーカーの名演で有名なサヴォイのセッションに、マイルスはサイドマンとして参加している。まだマイルスはパーカーの鋭いラインにスムースなサウンドで対比をつける役割しか果たしていないが、マイルスの音楽の原点を知る意味でぜひ聴いておきたい。もちろんパーカーは絶好調。
マイルスはアドリブ一発が勝負のビ・バップの限界を感じ、パーカー・コンボを辞した後、アンサンブルに重点を置いた9重奏団を結成する。彼らのアルバム『クールの誕生』は、後のウエストコースト・ジャズにも影響を与えた。だがマイルスは50年代に入ると、より黒人カラーを強く打ち出したアルバム『ディグ』で、ビ・バップの発展進化形であるハードバップへの道を探る。
それが形を成したのが、1954年に録音された『バグス・グルーヴ』だ。タイトル曲でマイルスは共演者のセロニアス・モンクに対し、「オレのソロの時はバックでピアノを弾くな」と言ったといわれているが、これはグループ・コンセプトを重視するハードバップならではの発想である。
1955年、マイルスは理想のチームを結成する。新人テナー奏者、ジョン・コルトレーンをサイドマンに起用した新カルテットだ。ベースはポール・チェンバース、ドラムス、フィリー・ジョー・ジョーンズ、ピアノがレッド・ガーランドの黄金のクインテットだ。
彼らはこのメンバーでジャズファンの注目を一気に集め、メジャー・レーベルであるコロンビアに移籍する。コロンビア移籍第一弾『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』はセロニアス・モンク作曲のタイトル曲が有名だが、ハードバップ完成形の典型としても重要な作品である。
一方マイルスは優れた白人アレンジャーであるギル・エヴァンスとの共同作業にも手を染め、ガーシュイン作曲『ポーギー&ベス』でハードバップの枠組みを超える試みを世に問う。かつての作品『クールの誕生』にもギルは助言を与えているが、マイルスの音楽を考える時、ギルの存在は無視できない。
コード進行に基づくアドリブを基本とするハードバップは、やがて行き詰まりを迎える。同じ原理では限界があると感じたマイルスは、コードの代わりにモードという音楽上の概念を利用した新しいジャズ「モード・ジャズ」を発想する。
アルバム『マイルストーン』に収録されたタイトル曲は、モードに基づいた新しい時代の響きを感じさせる斬新な演奏だ。

【推薦盤】
チャーリー・パーカー『コンプリート・スタジオ・レコーディングス・オン・サヴォイ・イヤーズ第3集』(Savoy)
マイルス・デイヴィス『バグス・グルーヴ』(Prestige)
マイルス・デイヴィス『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』(Columbia)

水曜日 22:00~ 2時間番組

木曜日 22:00~

『チェッツ・チョイス』(Criss Cross)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第49回
チェット・ベイカー特集 その2 「後期チェット・ベイカー」(再放送)


実を言うと、私がチェット・ベイカーの魅力に開眼したのは80年代になってからだった。それまではウエストコースト・ジャズのスターの一人、ぐらいの認識しかなく、あまり積極的に彼のアルバムを聴くことは無かった。
それが変わったのは、雑誌に掲載された1枚の壮絶なポートレイトだった。若い頃の面影はなく、人生の深遠を覗いたかのようなすさんだ表情からは一種迫力のようなものがにじみ出ている。そこで70年代以降のアルバムを集中して聴いてみると、演奏も良くなっているのだ。確かにトランペットの音色のなめらかさや勢いに衰えはうかがえるものの、シンプルなフレーズから醸し出される深みやコクは、むしろ増している。
その中でも1978年にフランスで録音された『トゥー・ア・デイ』(All Life)は歳を感じさせない快適な演奏で、ウエストコースターというよりはハードバッパーと言っても差し支えないようなノリの良いアルバム。ジャズ喫茶で受けるタイプで、小気味よさが聴き所だ。1曲目のタイトル曲も良いが、《イフ・アイ・シュド・ルーズ・ユー》はまさにチェットのために書かれたような憂いを篭めた名曲・名演。
ちょっと音質は悪いが、迫力という点では『スター・アイズ』(Marshmallow)は白眉と言って良い。デューク・ジョーダンのピアノとベースだけという変則トリオだが、ドラムスのいない分、チェットが補って余りある気合の充実した演奏で、あえてビ・バップ的と言いたくなるような緊張感がたまらない。
チェットがドイツのヴァイヴ奏者、ウォルフガング・ラッカーシュミットとデュオで吹き込んだ『バラッズ・フォー・トゥー』(Sandra)は、異色作だが、チェットの新たな魅力が浮き彫りにされた興味深い作品。底力のあるミュージシャンはどんなフォーマットでも自分の個性を発揮できるという良い見本である。
一方、ヨーロッパ、ジャズ・ピアノ界のベテラン、ルネ・ユルトルジュのトリオをバックにした『ライヴ・アット・ザ・パリ・フェスティヴァル』(Carlyne)は、オーソドックスなワン・ホーンでチェットが伸びやかにトランペットを吹きまくる。かつて、アート・ペッパーと共演した作品で披露した《フォー・マイナーズ・オンリー》が聴ける。
ギターのフィリップ・カテリーンをサイドに迎えた『チェッツ・チョイス』(Criss Cross)はまさにチェットの80年代的傑作。麻薬を巡るさまざまなトラブルをはじめ、人生の深遠を覗き見たものにしか出せない枯れた境地は、50年代のチェットの演奏からは聴くことができないものだ。個人的には晩年の作品を愛聴する私にとって、このアルバムがチェット評価の転機となった。
最後の1枚は『スター・アイズ』でも共演したデューク・ジョーダンがキチンとしたピアノ・トリオでバックを務める人気盤『ノー・プロブレム』(Steeple Chase)。タイトル曲であるジョーダンの名曲《ノー・プロブレム》がやはり良い。ジョーダンの哀愁とチェットの黄昏た感じが実にうまくこの曲のマイナー・イメージとマッチしている。
正直に言って、晩年のチェットのアルバムにはマトモに音の出ていないような怪しげなシロモノも多いが、良いものは若い頃の勢いだけの演奏より含蓄、滋味に満ちた、聴き飽きのこない傑作ぞろいだ。ぜひ晩年のチェットの演奏にも興味を持っていただきたいと思う。

【掲載アルバム】
『トゥー・ア・デイ』(All Life)
『スター・アイズ』(Marshmallow)
『チェッツ・チョイス』(Criss Cross)

木曜日 22:00~ 2時間番組

金曜日 22:00~

フレディ・ハバード『オープン・セサミ』(Blue Note)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第75回
「私の好きなジャズ」その1~ノリノリ・ハードバップ編(再放送)


もしかすると、「ジャズ喫茶のオヤジは、いつも自分の好きなジャズが聴けていいなあ」と思われるかもしれませんが、私は必ずしも「好み」だけで選曲しているわけではありません。お客様に気持ちよくジャズを楽しんでいただけるよう、それなりに考えているのです。また、自著でも、嫌いなものを紹介したりはしませんが、「ジャズの全貌」を幅広くファンの皆様にご紹介したいという思いを込めて書いています。
そういう姿勢が伝わるのか、店などに出ていると「後藤さんの個人的な愛聴盤はなんですか?」とよく聞かれるのです。そういう方々のご質問に答えるため、去る2月12日、『いーぐる連続講演:第438回』として、少々図々しいとは思いましたが「私の好きなジャズ」という講演を行いました。今回からしばらくこのシリーズ講演の内容をご紹介することにいたします。
ジョニー・グリフィン、ジャッキー・マクリーンといった、いつも番組でお送りしているジャズマンと代わり映えしない顔ぶれを見て、「やっぱり好みで選曲しているんだ」と思われた方、それは早計というものです。彼らは昔から「ジャズ喫茶のスター」として、ファンに愛聴されてきたミュージシャンなのです。長年ジャズ喫茶をやってきたので、好みがジャズ喫茶的になってしまったのかもしれません。
『ア・ブローイング・セッション』(Blue Note)はジョニー・グリフィン、ジョン・コルトレーン、ハンク・モブレイの3人のテナーマンがそれぞれ技を競う、典型的な「ブローイング・セッション」で、まさにピッタリなアルバム・タイトルですね。聴きどころは3人のフレージング、音色の違いがそれぞれの個性を現しているところです。
ジャッキー・マクリーンの『ジャッキーズ・バッグ』(Blue Note)では、マクリーンがいいのは言うまでもありませんが、渋い味を出しているサイドのテナーマン、ティナ・ブルックスも私は好きです。
リーダーこそフレディ・レッドですが、やはり聴きどころはマクリーンなのが『ザ・ミュージック・フロム・ザ・コネクション』(Blue Note)です。とは言え、彼の魅力をうまく引き出しているのが、レッドの書いた名曲であるのも事実です。
白人パーカー派アルトの代表、フル・ウッズの代表作『ウッドロアー』(Prestige)は、ウッズの明るいアルトの音色が魅力です。80年代イギリス発のクラブ・ジャズ・ブームで注目を集めたケニー・ドーハムの『アフロ・キューバン』(Blue Note)は、4管の厚みのあるサウンドを心地よくスイングさせるコンガの響きが心地よい。
ワンホーンで貫禄を示すデクスター・ゴードンの『ゴー!』(Blue Note)は、朗々たるデックスのテナーが楽しめます。モンクのサイドマンとして知られたチャーリー・ラウズの、ハードバッパーとしての魅力を知らしめるのが『モーメント・ノティス』(Jazzcraft)。同じくブローテナーの第一人者、ブッカー・アーヴィンの代表作が『ザ・ソング・ブック』(Prestige)。ちょっと以外なのがジョニー・コールズの『リトル・ジョニーC』(Blue Note)かもしれませんが、こういうのが「聴けば納得の好盤」ではないでしょうか。そして、これも知名度はありませんが、クリフォード・ブラウン直系のトランペッターの名盤が『ヒア・カムス』(Blue Note)です。
トランペッターと言えば、さすがの実力を見せているのがフレディ・ハバードで、『オープン・セサミ』(Blue Note)は彼の代表作にして最高傑作といえるでしょう。地味なトランペッターですが私はアート・ファーマーが大好きです。『2トランペッツ』(Prestige)は、同じトランペッターのドナルド・バードとの対比が面白い。最後のアルバムもファーマーですが、こちらはむしろ共演者のフィル・ウッズが聴きどころかもしれません。

【掲載アルバム】
ジャッキー・マクリーン『ジャッキーズ・バッグ』(Blue Note)
フレディ・ハバード『オープン・セサミ』(Blue Note)
アート・ファーマー『2トランペッツ』(Prestige)

金曜日 22:00~ 2時間番組

[Recommend!] 土・日曜日 22:00~

渡辺貞夫『Sadao Watanabe meets New Japan Philharmonic』(Victor Entertainment)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第227回
新譜紹介 第92回


前回、『ジャズ喫茶いーぐるの現代ジャズ入門』(シンコーミュージック刊)の内容をご紹介させていただいたばかりですが、このたび扶桑社さんから『マンガで学ぶジャズ教養』というタイトルの本を出版させていただくこととなりました。私は監修を担当し、飛鳥幸子さんがイラストを担当しています。
内容は「教養」と銘打っていますが堅苦しいものではなく、古本屋さんに務めている青年がフトしたきっかけで父親がUKのハーフの女の子と出会い、ジャズに興味を持って行くというストーリーを軸に、ジャズの「いろは」が身に着くといった楽しいものです。

詳しくは「https://www.amazon.co.jp/dp/4594095607」をご覧になってください。

さて、今回も日本人ミュージシャンの聴き応えあるアルバムがたくさん出ました。トランぺッター、MAKOTO、サックス、DAISUKEによる2管カルテット、JABBERLOOPによるアルバム 『WAVE』 (Junonsaisai Records)はとにかく聴いていて気持ちがいい。勢いがハンパないんですね。「これがオレたちの音楽なんだ」という自信に満ちた主張がダイレクトに伝わってくる。日本のミュージック・シーン活性化を象徴するような作品と言っていいでしょう。
映画音楽の世界で名を成した作曲家、ジョエル・グッドマンがたいへん興味深い作品を発表しました。『An Exquisite Moment』 (A 64)は今注目のサックス奏者、ダニー・マッキャスリン、ドラマー、エリック・ハーランドはじめ、ランディ・ブレッカーら豪華なゲストを迎えた贅沢なアルバム。映画音楽家らしい、聴き手の想像力を膨らませるような空間表現がジャズに新たな魅力を加えています。
そして3番目にご紹介するのは日本のブラジル音楽グループの老舗「ショーロ・クラブ」のチャーミングな新作『Caleidoscopio』 (Happiness Record)です。バンドリン、秋岡欧、コントラバス、沢田譲治、ギター、笹子重治による日本唯一のブラジル伝統音楽ショーロを演奏するショーロ・クラブですが、ジャズとして聴いてもなんら違和感がないのは素晴らしいですね。
そして今回私が一番感心したのは超ベテラン渡辺貞夫の『Sadao Watanabe meets New Japan Philharmonic』(Victor Entertainment)です。近年クラシカルなストリングス・サウンドとジャズを融合させた作品が好評ですが、このアルバムは新日本フィルとナベサダという日本を代表する音楽家同士の顔合わせが凄い。
はるか昔、ナベサダは新日本フィルと共演しているのですが、このアルバムは彼らのなんと35年ぶりの共演。今年の春にスミダトリフォニーホールで1日限りの公演として開催された時のライブ・レコーディングです。
聴きどころは二つあって、まずは常時共演しているわけでないにもかかわらず、ナベサダ以下のジャズ・チームと新日本フィルのマッチングの素晴らしさです。これはジャズ畑の村田陽一の指揮の賜物でしょう。
そしてもう一つは何といってもナベサダのアルトの音色です。もう相当お歳を召しているにもかかわらず艶と張りのあるサウンドがたまらないですね。しかも年輪のワザか、一音一音に込められた豊かな情感が聴き手の心を深く惹きつけるのです。やはり彼は素晴らしい!
フランス出身のヴァイブラフォン奏者サイモン・ㇺリエによる『Simon Moullier Trio Inception 』(Fresh Sound New Talent)は、彼が率いるレギュラー・トリオでジャズ・スタンダードに取り組んだアルバムです。フレンチ・ジャズらしい軽やかさが聴きどころですね。
そして最後に収録したのは東京のジャズ・シーンで活躍するUno Trioによる 『Ride On 』(Jazz Spot Sunroad)です。メンバーは宇野究人のピアノ、伊苅久裕のベース、そして芋川智輝のドラムスを中心にヴォーカリスト、三田珠理らがゲストで脇を固めています。彼らもまた冒頭にご紹介したJABBERLOOP同様、確信をもって自分たちの音楽をやっているスタンスが好ましい。

【掲載アルバム】
JABBERLOOP『WAVE』 (Junonsaisai Records)
渡辺貞夫『Sadao Watanabe meets New Japan Philharmonic』(Victor Entertainment)
Uno Trio 『Ride On 』(Jazz Spot Sunroad)

土・日曜日 22:00~ 2時間番組

インフォメーション

ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

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