D51ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)
D51ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお送りします。毎夜22:00~24:00の「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定で、後藤雅洋が執筆したコラムとともにジャズの魅力をお伝えします。

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月曜日 22:00~

『チャーリー・パーカー・ザ・コンプリート・スタジオ・レコーディング・オン・サヴォイ・イヤーズ』(Savoy)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第77回
「私の好きなジャズ」その3~大物編(再放送)


「私の好きな大物ジャズマン」ということでセレクトしてみて気がついたのですが、パーカー、ドルフィー、オーネットと、アルトサックス奏者が多いのです。もしかすると、私がジャズに求めるスピード感、スリルの表現には、アルトならではのタイトな音色が向いているのかもしれませんね。
大物中の大物、チャーリー・パーカーの魅力はなんと言ってもアドリブのスリルです。一瞬の閃きにすべてを賭けてしまう、ビ・バップならではの潔さがたまらない。パーカーマニアは、鞭が撓るように小気味良く加速された、腰が強く輪郭のハッキリしたアルトサウンドが出てくるだけでもう満足です。
ダイアルとサヴォイはパーカーの絶頂期を記録した2大レーベルです。ほぼ同時期の録音なので甲乙つけがたいのですが、しいて特徴を挙げれば、有名な《チュニジアの夜》のソロに象徴されるダイアルセッションの完成度、のっけから即興で飛ばしまくる《クラウンスタンス》や、マイルスが一生懸命パーカーに追いつこうとする《バード・ゲッツ・ザ・ワーム》など、サヴォイならではの荒削りな魅力といったところでしょうか。
パーカーの真の後継者は、実はジャッキー・マクリーンなどフレーズを真似た“パーカー派”ではなく、むしろエリック・ドルフィーなのではないかと思わせるのが、アルバム『アウト・ゼアー』(Prestige)です。意表を突くフレーズが力強く艶やかなアルトサウンドに乗って奔出するところなど、まさにパーカー的。
それもそのはず、名を成してからこそいわゆる“パーカーフレーズ”はほとんど吹かないドルフィーの初期の演奏には、明らかにパーカーの影響がみられます。また、録音こそ残っていませんが、“フリージャズ”の代表選手、オーネット・コールマンも若い頃はパーカーに夢中だったそうです。アルバム『ゴールデン・サークルのオーネット・コールマンVol.1』(Blue Note)は、自在にアルトを操り、泉が湧き出るごとく奔放にアイデアを飛翔させる、彼のアルト奏者としての実力を知らしめる傑作です。そして、あたかもエレクトリック・マイルスに挑戦するがごとく、独自のエレクトリック・ミュージックを創出した『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』(Horizon)は、オーネット・コールマンの音楽観の集大成とも言うべきユニークな音楽です。
チャーリー・パーカーのサイドマンからスタートしたマイルス・デイヴィスは、時代によって著しくスタイルを変えてきましたが、1970年代半ばの大阪でのライヴ『アガルタ』(Columbia)は彼の音楽の究極点を示す壮絶な演奏です。どの時代のマイルスも素晴らしいのですが、どれか1枚と言われれば、私はこの時代のアルバムを挙げます。
『スティット・パウエル・J.J.』(Prestige)と3人のミュージシャン名が列記されていますが、やはりこれはバド・パウエルとソニー・スティットのセッションが目玉でしょう。勢い込むパウエルと、それを迎え撃つスティットのやり取りはなんともスリリング。ふつう、テナーとピアノではどうしてもテナーが目立つものですが、パウエルに限っては完全にスティットを圧倒しています。やはりジャズピアノの王者と言われるだけのことはありますね。
そして、そのパウエルにアドヴァイスしたセロニアス・モンクのユニークさは、ホンの2、3音鍵盤を叩くだけで露になります。思いのほか録音が少ない、モンクのピアノトリオの傑作が『セロニアス・モンク・トリオ』(Prestige)です。

【掲載アルバム】
『チャーリー・パーカー・ザ・コンプリート・スタジオ・レコーディング・オン・サヴォイ・イヤーズ』(Savoy)
エリック・ドルフィー『アウト・ゼアー』(Prestige)
マイルス・デイヴィス『アガルタ』(Columbia)

月曜日 22:00~ 2時間番組

火曜日 22:00~

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第10回
1957年のアルバム(再放送)


1956年を名盤の年としてご紹介したが、翌1957年もまた現代に聴き継がれる優れたアルバムが数多く録音された。1954年をひとつのエポックとして、ニューヨークの若手黒人ミュージシャンたちの間で意欲的に演奏されるようになった“ハードバップ”は、56年に完成を見、57年以降はその「新しいジャズの演奏法」が若手ミュージシャンたちの間に広まっていったのである。
その典型がジョン・コルトレーンの『ブルー・トレーン』だろう。マイルスと同年生まれのコルトレーンは、若干シーンに出遅れたがマイルス・バンドのサイドマンで鍛えられ、57年には待望の初リーダー作『コルトレーン』をプレスティッジ・レーベルから出す。そして同年ブルーノート・レーベルに吹き込んだのが『ブルー・トレーン』だ。このアルバムはブルーノートらしい入念なリハーサルから生まれたリー・モーガン、コルトレーン、カーティス・フラーの3管の響きがすばらしい。
そのリー・モーガンもこの年代表作を出している。ブルーノートの『キャンディ』は、シンプルなワンホーンで、ちょっと不良っぽいモーガンの小粋な魅力を巧みに掬い取った傑作である。
前年にプレスティッジから大名盤『サキソフォン・コロッサス』を出したソニー・ロリンズも絶好調で、この年ブルーノートからクラブ・ライヴの傑作『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』を出す。ライヴの迫真性を巧みに再現したルディ・ヴァン・ゲルダーの迫力のあるサウンドで有名なこのアルバムは、実は選曲の妙もあって今日名盤の地位を築いた。後にこの夜のすべての演奏が発表されたが、オリジナル・アルバム収録の6曲がやはり群を抜いていた。プロデューサー、アルフレッド・ライオンの耳の確かさを証明するアルバムでもある。個人的にはアナログB面収録の《ソニー・ムーン・フォー・トゥー》以下が好きなので、今回もその3曲を収録している。
面白いのはこのようにシーンが盛り上がると、その熱気がほかのミュージシャンにも乗り移ることで、ウェスト・コーストのスーパースター、アート・ペッパーも57年には超有名盤『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』を吹き込んでいる。 このアルバムは当時のナンバーワン・グループ、マイルス・クインテットのリズムセクションであるレッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズが西海岸を訪れた際アート・ペッパーと共演した珍しい作品。初顔合わせにもかかわらずこれほど完成度の高いアルバムが生まれるのは、もちろんペッパーの力量もあるけれど、「新しいジャズの演奏法」が東海岸西海岸を問わず、また黒人白人の人種の壁を越えて認知されていったことの証明でもある。
57年は海を越えた外国でも傑作が記録されている。トミー・フラナガンの『オーヴァーシーズ』はヨーロッパで録音されたがメンバーは全員アメリカ人。中でもドラムスのエルヴィン・ジョーンズの快演が話題になった。このアルバムは当時としては珍しいピアノ・トリオ演奏で、トミー・フラナガンの名を一気に高めた記念すべき作品である。

火曜日 22:00~ 2時間番組

水曜日 22:00~

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第22回
『ジャズレーベル完全入門』~リヴァーサイド編(再放送)


リヴァーサイドのレーベル・イメージを代表するミュージシャンは、セロニアス・モンクとビル・エヴァンスだろう。そのせいか、このレーベルには優れたピアノ・アルバムが多い。3大ジャズ・レーベルのトップ、ブルーノートがあまりピアノ・トリオ作品を録音していないのに比べ、対照的だ。
しかしリヴァーサイドの特徴はそれだけではない。ジャズ評論家でもある名プロデューサー、オリン・キープニュースは、ギターの大物ウェス・モンゴメリーを紹介したり、ファンキー・ジャズに路線変更したキャノンボール・アダレイを録音したりと、時代の動きを的確にフォローしている。
また、比較的地味なミュージシャンの優れた作品も多く、冒頭の『ブルース・ムーズ』など、ブルー・ミッチェルの最高傑作といってよい。名曲《アイル・クローズ・マイ・アイズ》で始まるこのアルバムは、ワンホーン、トランペット作品の名盤に必ず数え上げられる。
リヴァーサイドの見識を示すのがジョージ・ラッセルの『エズ・セティック』だ。難解な理論家のイメージが強いが、このアルバムを聴けば彼のアレンジの素晴らしさに驚くことだろう。とりわけエリック・ドルフィーのソロが圧倒的で、ドルフィー・ファンは必聴のアルバムだ。
セロニアス・モンクは40年代からブルーノートに録音を残しているが、ジャズファンの間で広く知られるようになったのは、50年代になってからのリヴァーサイド作品がきっかけだった。優れたアルバムに事欠かないが、ジョニー・グリフィンを従えた「ファイブ・スポット」でのライヴは、このカルテットの充実振りを示した定評のある演奏。
そしてウェス・モンゴメリーのギタリストとしての実力を存分に堪能させてくれるのが、『インクレディブル・ジャズ・ギター・オブ・ウェス・モンゴメリー』だ。オクターブの二つの音を同時に弾いてメロディー・ラインを演奏するオクターブ奏法、コードでフレーズを聴かせるコード奏法など、彼の超絶テクニックが惜しげもなく披露され、ギターファンなら絶対に持っていたいアルバムだ。
キャノンボール・アダレイがマイルス・グループから独立した第一作が『ザ・キャノンボール・アダレイ・クインテット・イン・サンフランシスコ』で、それまでとは打って変わったファンキー路線を突き進む。同じフレーズを執拗に繰り返して黒っぽい雰囲気を醸しだすファンキー・ジャズは日本でも大ヒットした。
同じソニー・ロリンズのアルバムでも、リヴァーサイド作品は一味違った上品な味付けになっている。あまり有名ではないが、『ザ・サウンド・オブ・ソニー』はロリンズ・ファンの隠れた愛聴盤になっていたりする。確かに日常的にゆったりとロリンズの世界に浸るに、この何気なさは貴重だ。
そして最後は極めつけ、ビル・エヴァンスの「リヴァーサイド四部作」である。これはエヴァンスがリヴァーサイドに吹き込んだ、名ベーシスト、スコット・ラファロと共演した4枚の作品のことを言う。そのうちの1枚『エクスプロレーションズ』は、有名な『ワルツ・フォー・デビー』の影に隠れがちだが、アナログ時代のB面に収録された名曲《ナルディス》を賞賛するファンは多い。

【掲載アルバム】
セロニアス・モンク『ミステリオーソ』(Riverside)
ウェス・モンゴメリー『インクレディブル・ジャズ・ギター・オブ・ウェス・モンゴメリー』(Riverside)
ビル・エヴァンス『エクスプロレーションズ』(Riverside)

水曜日 22:00~ 2時間番組

木曜日 22:00~

アート・ペッパー『ミーツ・ザ・リズム・セクション』(Contemporary)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第38回
『ジャズ・レーベル完全入門』~コンテンポラリー編(再放送)


コンテンポラリー・レーベルの特徴は、「サウンド」という言葉で言い表わすことが出来るだろう。まず、会社が西海岸のロスにあるので、1950年代当時隆盛を極めていたウエスト・コースト・ジャズ特有の軽快なサウンドを捉えているということ。そして、録音の音色という意味でもこの会社は独自性を持っている。
東海岸の代表的ジャズ・レーベル、ブルーノートの伝説的録音技師、ルディ・ヴァン・ゲルダーにも比肩される、ロイ・デュナンという名録音技師が録ったコンテンポラリー・サウンドは、独特の明快な軽やかさを持っている。つまりジャズ・スタイルのサウンドの特徴と、録音の音色の傾向が一致しているのだ。
最初の1枚は、名盤紹介に必ず出てくるアート・ペッパーの『ミーツ・ザ・リズム・セクション』から、おなじみの《ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ》。このアルバムは、録音のよさからオーディオファンが装置のチェックに使うことでも有名。そして次はこれも良く知られた名盤、ソニー・ロリンズの『ウエイ・アウト・ウエスト』。ブルーノート盤のゴリゴリした録音と比べてみると、同じ人が吹いているとは思えないほど明るく軽やかに聴こえるのがわかるだろう。
ウエスト・コースト・ジャズの職人アルト奏者、レニー・ニーハウスはちょっと馴染みが薄いかもしれないけれど、音楽監督として良くこの人の名が映画のクレジットに出てくる。有名なところでは、クリント・イーストウッド監督の映画『バード』で、チャーリー・パーカーの演奏をデジタル処理し、現代のミュージシャンと共演させるというアクロバット技を仕掛けたのがこの人だ。
第2次大戦後、進駐軍(占領軍のこと)として日本に来たこともあるハンプトン・ホースは、バド・パウエル直系のウエスト・コースト・ピアニスト。パウエル派ならではのノリの良いピアノには定評がある。
ジャズ雑誌の人気投票第1位、すなわちポール・ウイナーが3人集まった『ポール・ウイナーズ』は、バーニー・ケッセルのギターをレイ・ブラウンのベースとシェリー・マンのドラムが支えた、ウエストのスター・バンド。そのシェリー・マンがリーダーになったアルバム、『マイ・フェアー・レディ』は、ミュージカル・ナンバーをクラッシク畑でも活躍するピアニスト、アンドレ・プレヴィンに弾かせた名作。
コンテンポラリー・レーベルは80年代になっても活動し、オーソドックスなスタイルの傑作を残している。ロフト・シーンで知られたテナー奏者、チコ・フリーマンとウィントン・マルサリスの若手二人を、ベテラン、ヴァイヴ奏者、ボビー・ハッチャーソンが支えた『デスティニーズ・ダンス』は80年代の名盤だ。同じくウェザーリポートのドラマーとして知られたピーター・アースキンの初リーダー作『ピーター・アースキン』は、軽快なドラムソロのトラックに続く《E.S.P》が気持ちよい。ジョージ・ケイブルスのピアノは、現代的でありながら古きよき時代のフレイバーを感じさせるところが魅力だ。センチメンタルな味の《ブルー・ナイツ》は、なかなかの名曲。
再び50年代に戻り、知られざるベーシスト、カーティス・カウンスのリーダー作をご紹介しよう。フロントのトランペッター、ジャック・シェルドンの名前を知らずとも、聴けば納得の隠れ名盤だ。ベテラン、アルト奏者、ベニー・カーターの『スインギン・ザ・20s』は軽やかなアルトの音色が聴き所。これも録音の良さがカーターの魅力を引き出している。 そして最後は、70年代に吹き込まれたレイ・ブラウンの『サムシング・フォー・レスター』。ピアノ・トリオ・フォーマットでシダー・ウオルトンの演奏が光る。意外なことに、この編成でブラウンがリーダーになったのは初めてだとか。タイトルは、この録音の直後に心臓発作で亡くなってしまったコンテンポラリーのオーナー・プロデューサー、レスター・ケーニッヒに捧げたもの。

【掲載アルバム】
アート・ペッパー『ミーツ・ザ・リズム・セクション』(Contemporary)
ソニー・ロリンズ『ウエイ・アウト・ウエスト』(Contemporary)
『ポール・ウイナーズ』(Contemporary)

木曜日 22:00~ 2時間番組

金曜日 22:00~

ハービー・ハンコック『処女航海』(Blue Note)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第64回
『ジャズ・ジャイアンツ、これだけ聴けば大丈夫』 その11、ハービー・ハンコック(再放送)


今回は現在でも第一線で活躍しているピアニスト兼コンポーザー、バンド・リーダー、ハービー・ハンコックの名演を時代を追ってご紹介いたします。ピアニストには、ピアノ・トリオ作品が多いビル・エヴァンスのようなタイプと、ホーン奏者を入れ自らはバンド・リーダーとして振舞うミュージシャンに別れる。ハンコックはデビュー・アルバム『テイキン・オフ』(Blue Note)から、フレディ・ハバード、デクスター・ゴードンといった大物ホーン奏者をフロントに据え、自らのオリジナル《ウオーターメロン・マン》で大ヒットを放った。
その後、マイルス・バンドのサイドマンを務めつつ、ブルーノートに多くのリーダー作を録音するが、フレディ・ハバードをフロントに据えた64年の『エンピリアン・アイルズ』(Blue Note)辺りから60年代ジャズの一翼を担った新主流派的スタイルを身に付けるようになる。そして翌65年、ブルーノート新主流派の代表作とも言われた『処女航海』を発表、この作品はマイルス・バンドのサイドマンたちで固められ、60年代の新人たちが新たなサウンドに挑戦する様が記録されている。
そしてジャズシーンが大きく動き出した68年、フリューゲルホーン、アルトフルート、トロンボーンという斬新な楽器編成によるオーケストラルな音の響きを重視した作品、『スピーク・ライク・ア・チャイルド』(Blue Note)を発表、多彩な才能の一角を露にする。 ところが70年代に入ると、エレクトリック・ピアノを駆使しリズムを前面に押し出した画期的アルバム『クロッシング』(Warner Bros.)でオーソドックスなスタイルから大きく変身、ファンをアッと言わせた。この方向は後の大ヒット作『ヘッド・ハンターズ』(Columbia)へと受け継がれることになるが、継続的にハンコックの新譜を聴いてきたファンにとっては、『クロッシング』が大きなターニングポイントとして印象付けられている。
そうかと思うと、始めて挑戦したソロピアノ作品『ザ・ピアノ』(Columbia)では、極めて正統的なジャズピアニストとしての顔を見せ、いったいこの人の本音はどこにあるのだろうという疑問を持つファンもいた。私の考えでは、ハンコックは幼児期の経歴からみても、ごくオーソドックスな音楽的教養を土台としたジャズ・ミュージシャンで、60年代のサウンドの響きを重視したスタイルは、クラシック音楽のハーモニー感覚に繋がるものだ。そしてリズミックな要素やファンク的感覚は、彼がストリートから学んだものだろう。
こうした幅広い音楽的バックグラウンドから生まれた傑作が70年代後半の諸作で、日本で録音された『ダイレクト・ステップ』(Columbia)にしろ、未発表テープにあとからシンセサイザーをダビングした『ミスター・ハンズ』(Columbia)にしろ、当時大流行したフュージョンとは一味違う深い音楽性が感じられる。
そして81年にファンの要望に応えるようにして出された2度目のアコースティック・トリオ・アルバム『ハービー・ハンコック・トリオ・ウイズ・ロン・カーター・トニー・ウイリアムス』(Columbia)では、かつてのマイルス・バンドの盟友たちと再会セッションを行い、相変わらずエレクトリックとアコースティックの双方で才能を発揮した。
その後も多くの作品を発表しているが、中でも97年録音の、同じくマイルス・バンドでの仲間ウエイン・ショーターとのデュオ・アルバム『1+1』(Verve)は、単なる大物同士の顔合わせ作品に終わらない質の高いものだ。

【掲載アルバム】
ハービー・ハンコック『処女航海』(Blue Note)
ハービー・ハンコック『ダイレクト・ステップ』(Columbia)
ハービー・ハンコック、ウエイン・ショーター『1+1』(Verve)

金曜日 22:00~ 2時間番組

[Recommend!] 土・日曜日 22:00~

アラン・クアンInvisible Architecture『Between Now And Never』 (Maidin Cultural Enterprise)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第216回
新譜特集 第81回


このところコロナの影響も一段落したためか、海外ミュージシャンの来日公演が再び活発になっています。先日、前々回ご紹介した、シャバカ・ハッチングスがシンセサイザー奏者ダナログ(ダン・リーヴァーズ)、ドラムのタマックス(マックス・ハレット)と組んだコズミック・トリオ、「ザ・コメット・イズ・カミング」のステージを観たのですが、ライヴではCDには収まり切れない「ダンス音楽としてのジャズ」の復活を実感しました。それにしても、シャバカのサックスはいい音を出していましたね。
それはさておき、現代ジャズシーンの活性化には目を見張るものがあり、次々と新しい才能が登場しています。今回最初にご紹介する香港のギタリスト、アラン・クアン率いるグループ「Invisible Archtecture」による新譜『Between Now And Never』 (Maidin Cultural Enterprise)は、「アジアン・テイスト」などという言い回しが過去のものとなったことを実感させてくれました。
メンバーはアランのギターの他にキーボードJordan Gheen、ドラムスMatt Youngを中心としており、今回のアルバムはコロナ禍のためリモート制作されたそうです。先ほど「アジアン・テイスト」などと言いましたが、彼らの「宇宙的」とも思える斬新なサウンドは、良い意味で「国籍不明」なのです。これもジャズの国際化の現れなのでしょう。とにかく聴いていて気持ち良いのです。
バッド・プラスと言えば私などはピアノのイーサン・アイヴァーソンがいた頃の斬新なピアノ・トリオとしてのイメージが強烈でしたが、今回の新作『The Bad Plus 』(Edition) は、ピアニストの代わりにテナー奏者クリス・スピード、ギターのベン・モンダーが加わったカルテット編成。
当然出てくるサウンドはピアノ・トリオ時代とは違うのですが、面白いことにオリジナル・メンバー、デヴィッド・キングが叩き出すダイナミックかつアグレッシヴなドラミングのせいか、グループとしてのバッド・プラスの一貫性は十分に感じられるのです。クリス・スピードのテナーにしろベン・モンダーのギターにしろ、完全に「バッド・プラス的」なのが面白い。
アレシャンドリ・ヴィアナ、まったく知らないピアニストでしたが、新宿タワー・レコードの試聴機に入っていたので聴いてみると、なかなか良いのです。アルバム『ムジカ・パラ・ダール・ソルテ』 (Paraphernalia Record)を店に持ちかえり大音量で聴いてみると、リズム感、ノリの良さにおいて満点ジャズでした。だいぶ前にユニークなピアニスト、アマーロ・フレイタスのアルバム『Sankofa』をご紹介しましたが、同じブラジリアン・ミュージシャンならではの明るい切れの良さが心地良い。取り立ててエスニック・テイストを強調しているわけではないのですが、やはりアメリカ系ミュージシャンとは一味違うフレイヴァーが感じられます。
近年オペラの作曲も手掛けるドラマー、タイソーン・ショーリーのトリオに、かつてスティーヴ・コールマンのユニークなグループ「M-BASAコレクティヴ」のメンバーだったアルト奏者グレッグ・オズビーが参加したライヴ・アルバム『Off-Off Broadway Guide To Synergism』(PI Record)は、いかにもニューヨーク的な緊張感あふれるスリリングな演奏が魅力です。
今や大御所的風格を備えるギタリスト、ビル・フリゼールの新作『Four』 (Blue Note)は、共演のサックス、クラリネット奏者グレッグ・タルディのカラーが強く感じられます。フリゼールはコロナ禍で友人たちとの別れを体験したそうで、そうした想いを込めたアルバムといった側面もあるようです。ただあまり陰鬱な感じは無く、いつものフリゼール・カラーであるノスタルジックな側面が聴き手の心を和ませます。
実を言うと、今回一番面白かったのは最後に収録した「bohemnianvoodoo」のピアニスト木村イオリと、その弟木村仁星のアルバム『Moonflight』 (Playwright)でした。ピアノとローズ・ピアノによるデュオ作品で、キーボード同士の共演が得てして冗長に流れがちななかで、聴き手を飽きさせないのは大したもの。実の兄弟であるゆえの息の合い様もあるのでしょうが、良い意味で「好きな音楽」を「身内」でやっているからこその音楽への没入が私たちの耳を惹きつけるのでしょう。

【掲載アルバム】
アラン・クアンInvisible Architecture『Between Now And Never』 (Maidin Cultural Enterprise)
The Bad Plus (Edition)
木村イオリ・木村仁星『Moonflight』 (Playwright)

土・日曜日 22:00~ 2時間番組

インフォメーション

ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

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