D51ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)
D51ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお送りします。毎夜22:00~24:00の「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定で、後藤雅洋が執筆したコラムとともにジャズの魅力をお伝えします。

放送スタイルタイムテーブル参照

備考毎月1日に更新

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    • Old Folks
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    • Miles Davis

月曜日 22:00~

ハンク・モブレイ『ソウル・ステーション』(Blue Note)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第90回
「サイドマン聴きシリーズ」 その7・ウイントン・ケリー(再放送)


 サイドマンとしては例外的な超大物、ジョン・コルトレーンに始まり、トミー・フラナガン、ジャッキー・マクリーンと続いてきたこのシリーズ、やはり名サイドマンはピアニストに多いのではないでしょうか。そういう意味では、アルト奏者マクリーンも、例外的にサイドとしても名盤が多い貴重な存在だったと言えるでしょう。
 というわけで今回はマイルス・デイヴィス・コンボにも名を連ねた名ピアニスト、ウイントン・ケリーのサイドマンとしての名盤をご紹介いたします。まずはトランペットによるワン・ホーンという、実は難しいフォーマットで極め付きの名演を残した、ブルー・ミッチェルの『ブルース・ムーズ』(Riverside)。
 軽やかなケリーのピアノに導かれ、ミッチェルの端正なトランペット・サウンドが心持哀調を帯びた名曲《アイル・クローズ・マイ・アイズ》をけれん味なく歌い上げます。これ見よがしのフレーズは一切無く、淡々と音を積み重ねるミッチェルに、弾むようなリズムが心地よいケリーのピアノが実に塩梅の良いアクセントを付け加える。両者の絶妙の対比がこのアルバムを名盤たらしめているのです。
 端正なトランペットの次は、黒々としたテナー・サウンドがじんわりと聴き手の心に染み通るハンク・モブレイの最高傑作『ソウル・ステーション』(Blue Note)。いっしょに組む相手によってはけっこう吹きまくりのモブレイですが、彼の本領はむしろこのアルバムのようなワン・ホーンによる「しんみり路線」なのです。その落ち着いた味わいに色を添えるケリー、まさに名盤は生まれるべくして生まれる。
 さて、その「吹きまくり大会」の大名盤がジョニー・グリフィンの『ア・ブローイング・セッション』(Blue Note)。コルトレーン、グリフィンら当代の早吹き連中に混ざり、モブレイもがんばる。さすが3本テナーはちょっとばかり暑苦しいかなっというところに、一服の清涼剤としてケリーのピアノがそよ風を送ります。
 ところで、ケリーのピアノ・サウンドはテナーマンと相性がいいような気がします。ソニー・ロリンズのワン・ホーン・カルテットの名盤『ニュークス・タイム』(Blue Note)で脇を固めているのがケリーです。そして先ほどのグリフィンがウェス・モンゴメリーと畢生の名演を繰り広げた大名盤『フル・ハウス』(Riverside)も、まさにケリーのピアノがあってこそ、という気がしないでもありません。
 そしていよいよコルトレーンの登場。爽やかなケリーのピアノに先導されてコルトレーンが飛び出す『コルトレーン・ジャズ』(Atlantic)もまた、ケリーの涼しげなピアノ・サウンドがコルトレーンの「熱さ」と良い対比を生み出しているのです。
 最後は泣く子も黙る御大マイルス・デイヴィスの親しみやすい人気盤、『いつか王子様が』(Columbia)。話は変わりますが、歴代マイルス・コンボのピアニストのうち、誰が一番かという話題がありますが、別格的存在のビル・エヴァンスを除いても、ほんとうにそれぞれの個性が際立っています。ですから、好みによってさまざまな答えが予想されますが、「ソロだけでも楽しめる」というところにポイントを絞ると、私はケリーの評価はかなり高くなるのでは、と思うのです。というか、それがケリーの特徴でもあり、セッションの脇役として場を盛り上げるだけでなく、個人プレイもまた凄い。いわゆる「パウエル派ピアニスト」の中でトップにケリーを私が挙げるのは、そんな理由があるからなのです。

【掲載アルバム】
ブルー・ミッチェル『ブルース・ムーズ』(Riverside)
ハンク・モブレイ『ソウル・ステーション』(Blue Note)
ウェス・モンゴメリー『フル・ハウス』(Riverside)

月曜日 22:00~ 2時間番組

火曜日 22:00~

チェット・ベイカー&アート・ペッパー『プレイボーイズ』(Pacific Jazz)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第23回
『ジャズレーベル完全入門』~パシフィック・ジャズ編(再放送)


 パシフィック・ジャズは、1952年に熱心なジャズ・ファンであるリチャード・ボックによってロサンゼルスに設立されたジャズレーベルだ。ロスという土地柄、ちょうどそのころ西海岸で隆盛を誇った白人ミュージシャンによる“ウェスト・コースト・ジャズ”が録音の中心となったが、中にはクリフォード・ブラウンやケニー・ドーハムの作品もあるので、今回はそうした珍しいアルバムもご紹介しよう。
 『プレイボーイズ』は、チェット・ベイカーにアート・ペッパーという、ウェスト・コーストの2大スターが共演した、素晴らしいアルバムだ。聴き所は、ウェスト・コースト・ジャズの特長を生かした洒落た三管アレンジと、チェット、ペッパーのソロが実にうまい具合にブレンドされているところだろう。イースト・コーストの黒人ジャズに引けをとらないコクのある演奏だ。
 続く『バド・シャンク・カルテット』は、いかにも白人ジャズらしい清楚な雰囲気が人気を呼んだアルバムで、シャンクの涼しげなフルートが聴き所。名曲《ネイチャー・ボーイ》が収録されているのもポイントだろう。
 パシフィック・ジャズを代表するアルバムを1枚あげろと言われたら、やはり『ジェリー・マリガン・カルテット』が出てくるのではなかろうか。トランペットのチェット・ベイカーとバリトン・サックスのジェリー・マリガンが結成したピアノレス・カルテットは、そのユニークな楽器編成で注目を浴びた。
 ふつうのジャズコンボでよく使われるアルト、あるいはテナー・サックスの代わりに、より音域の低いバリトン・サックスと、それと対比を成す高音楽器のトランペットを配したこのグループは、あえてピアノも外し、巧みなアレンジで評判を得た。このアルバムも聴き所はマリガンのアレンジの才能と、チェット、マリガンのソロの巧みな融合だろう。
 パシフィック・ジャズは白人ジャズのイメージが強いが、西海岸を根拠地にしていたクリフォード・ブラウンの作品も録音している。あまり知られていないが『ジャズ・イモータル』はなかなか魅力的なアルバムだ。レーベルのせいか、ブラウンの洗練された側面が切り取られているような気もする。
 同じ黒人ジャズでも、ケニー・ドーハムとジャッキー・マクリーンのコンビによる『インタ・サムシン』になると、これは完全にハードバップ色が強くなり、ブルーノートやプレスティッジの作品とほとんど見分けがつかない。
 意外なところでは、典型的なエヴァンス派白人ピアニストであるクレア・フィッシャーがモロ・ハードバップを演奏している『サージング・アヘッド』だろう。冒頭のバップ・ナンバー《ビリース・バウンス》など、黒人パウエル派ピアニストを髣髴させるのりの良さである。
 最後の曲は、なんと言ってもパシフィック・ジャズの人気盤である『チェット・ベイカー・シングス』から極めつけ《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》で締めくくりたい。中性的なチェットの歌声は不思議な魅力を持っている。

【掲載アルバム】
チェット・ベイカー&アート・ペッパー『プレイボーイズ』(Pacific Jazz)
『ジェリー・マリガン・カルテット』(Pacific Jazz)
『チェット・ベイカー・シングス』(Pacific Jazz)

火曜日 22:00~ 2時間番組

水曜日 22:00~

マイルス・デイヴィス『ビッチェス・ブリュー』(Columbia)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第36回
マイルス・デイヴィス特集 その3(再放送)


 1968年、ジャズ・アルバムの常識を覆す異様なジャケットによって登場したマイルスの新譜『マイルス・イン・ザ・スカイ』は、ジャズファンの間に論争の嵐を巻き起こした。今聴いてみれば、取り立てて変わっているワケではないこの作品が大騒ぎになったのだから、まさに隔世の感だ。
 要するに、エレクトリック楽器を使用したことと、ロック・ビートを採用したことが当時の保守的なジャズファンの逆鱗に触れたのだが、これ以後、現実のジャズシーンはマイルスが敷いたエレクトリック路線の上を歩んでいったのだった。
 注目したいのが、その直前1967年に吹き込まれた『ネフェルティティ』のタイトル曲で、まったくアドリブ・パートがない。この演奏は、マイルスが従来のジャズ・スタイルに飽き足らなくなったことを示している。
 そして1969年の問題作『ビッチェス・ブリュー』の登場なのだが、実を言うと、この作品も発売当時は必ずしも好意的な目では迎えられなかった。マイルスがロックに媚を売ったという、表面的な見方が流通していたからだ。実際は、マイルスは単にロック的手法を利用しただけだったのだが、、、ここでは名演の誉れ高い《スパニッシュ・キー》を収録。
 事実、同時期のライヴ盤『マイルス・アット・フィルモア』などを聴けば、リズムがなんであれ、エレピがどうあれ、マイルスの演奏はまごうことなきジャズそのものなのが良くわかる。ただ、ライヴなので漫然と聴いているとポイントが掴みにくいかも知れないが、《フライデイ・マイルス》は誰が聴いてもナットクの名演だろう。ソプラノ・サックスのスティーヴ・グロスマンも畢生の力演だ。
 いまでこそ「クラブシーンで注目」などと喧伝される『オン・ザ・コーナー』も、発売当時は中古セールのコーナーに山積みされていた。70年代の平均的ジャズファンは、この手のリズムをジャズから外れるものとしてアタマから毛嫌いしていたのだ。
 その一方、70年代マイルスはなお一層先鋭性を強め、もはやトランペットを吹かずともマイルス・ミュージックを表現できるまでのカリスマ的存在となっていた。そのことを証明するのが、アルバム『ゲット・アップ・ウィズ・イット』に収録された《レイテッドX》で、マイルスはオルガンのみで、他の誰にも真似できないマイルス・ミュージックを提示している。
 そしてマイルスが活動を一時停止する最後の年、1975年の大阪公演の記録『アガルタ』『パンゲア』が発売される。今になってみれば、これが彼のジャズマン人生の一つのピークであったことは間違いない。ピート・コージー、レジー・ルーカスらによって生み出されたカオス状の音塊から、マイルスの研ぎ澄まされたトランペットが浮き上がる瞬間がたまらなくカッコいい。
 その後、5年以上の中断期間を経てシーンに復帰したマイルスをファンは温かく迎えたが、明らかに音楽のテイストは変化していた。ひとことで言えば、ポピュラー・ミュージックに接近し、かつての先鋭な姿勢は影を潜め、一般音楽ファンにも愛される存在となったのである。とはいえ、さすがマイルス、音楽の質は非常に高い。
 ここでは復帰第一作『ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン』から冒頭の《ファット・タイム》と、個人的にマイルス最後のジャズ・アルバムと思い定めている『デコイ』から、タイトル曲を収録した。

【掲載アルバム】
『ビッチェス・ブリュー』(Columbia)
『アット・フィルモア』(Columbia)
『アガルタ』(Columbia)

水曜日 22:00~ 2時間番組

木曜日 22:00~

ジャッキー・マクリーン『4,5&6』(Prestige)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第51回
ジャッキー・マクリーン特集 その1 「プレスティッジ時代」(再放送)


 ジャズ喫茶を代表するジャズマンは誰かというと、それはジャッキー・マクリーンではないだろうか。マイルスやエヴァンスはもちろん素晴らしいミュージシャンだが、彼らはジャズ喫茶と関わり無く多くのファンを獲得している。だがマクリーンは、ジャズ喫茶という特別な場所から人気が広まった、マニア好みなジャズマンなのだ。
 実際、ジャズ喫茶にマクリーンはよく似合う。どの時代のどんなアルバムをかけても場の空気にしっくりと馴染む。だから店の選曲でも彼の登場回数は多い。それを反映し、私の選曲している有線の番組でも、マクリーンは定番になっている。そのジャズ喫茶代表選手、ジャッキー・クリーンを3回にわたってご紹介しよう。今回はその第1回目として、プレスティッジ時代を中心に初期マクリーンの名盤をお楽しみください。
 アルトサックス奏者、ジャッキー・マクリーンがファンの眼に留まった最初のアルバムが、1951年、マイルスのサイドマンとして録音に加わった『ディグ』(Prestige)だ。チャーリー・パーカーをアイドルとしたマクリーンらしく、かなりパーカーに似ている。しかし、当然だけどまだ後年の闊達さはない。一生懸命パーカーの役割を演じているところがほほえましい。最初にソロをとっているのはマクリーンの友人でもあるソニー・ロリンズで、マクリーンの登場はマイルスの後。
 その後マクリーンは白人ピアノ奏者、ジョージ・ウォリントンのクインテットに在籍し、トランペットのドナルド・バードとともにハードバップの名脇役としてスタートを切る。ご紹介する曲はベース奏者、オスカー・ペティフォードの名曲《ボヘミア・アフター・ダーク》。最後にオマケのように付いている短い曲はマクリーン作の《ザ・ペック》だ。ちなみに原盤のプログレッシヴ盤は、超幻の名盤。
 次にマクリーンが参加したのが、有名なチャールス・ミンガスのアルバム『直立猿人』(Atlantic)。白人テナー奏者、J.R.モントローズとたった二人のフロントで、2管とは思えない分厚いサウンドを提供している。しかしこれはミンガスのリーダー・シップが功を奏していると言ってよいだろう。
 そしていよいよマクリーンがリーダーとして個性を発揮するアルバムのご紹介だ。最初は、後にアート・ブレイキーのジャズメッセンジャーズでともにフロントを勤める、トランペットのビル・ハードマンをフィーチャーした『ジャッキーズ・パル』(Prestige)。あまり有名なアルバムではないが、マクリーン、プレスティッジ時代を象徴する鄙びた味の隠れ名盤で、ジャズ喫茶ではどんな状況でかけてもハズさない、重宝するアルバム。
 続いて、根っからのマクリーンフリークが愛聴する『ア・ロング・ドリンク・オブ・ザ・ブルース』(New Jazz)。ただしこれはアナログ時代にB面に収録されたワンホーン・セッションが聴き所。しみじみと歌いかけるマクリーン節は絶品だ。そしてこれもマクリーンのマイナー・ムードが満喫できる『ファット・ジャズ』(Jubilee)は、レイ・ドレイパーのチューバが珍しい、3管アレンジがポイント。『メイキン・ザ・チェンジス』(New Jazz)も地味なアルバムだけれど、ワンホーンで吹きまくる《ビーン・アンド・ボーイズ》の気持ちよさがやみつきになる。そして最後を飾るのが、説明不要50年代マクリーンの代表作『4,5&6』(Prestige)から、有名な《センチメンタル・ジャーニー》。なぜかしら懐かしさを感じさせる名演だ。

【掲載アルバム】
ジャッキー・マクリーン『4,5&6』(Prestige)
ジャッキー・マクリーン『ア・ロング・ドリンク・オブ・ザ・ブルース』(New Jazz)
ジャッキー・マクリーン『ジャッキーズ・パル』(Prestige)

木曜日 22:00~ 2時間番組

金曜日 22:00~

マイルス・デイヴィス『アガルタ』(Columbia)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第77回
「私の好きなジャズ」その3~大物編(再放送)


 「私の好きな大物ジャズマン」ということでセレクトしてみて気がついたのですが、パーカー、ドルフィー、オーネットと、アルトサックス奏者が多いのです。もしかすると、私がジャズに求めるスピード感、スリルの表現には、アルトならではのタイトな音色が向いているのかもしれませんね。
 大物中の大物、チャーリー・パーカーの魅力はなんと言ってもアドリブのスリルです。一瞬の閃きにすべてを賭けてしまう、ビ・バップならではの潔さがたまらない。パーカーマニアは、鞭が撓るように小気味良く加速された、腰が強く輪郭のハッキリしたアルトサウンドが出てくるだけでもう満足です。
 ダイアルとサヴォイはパーカーの絶頂期を記録した2大レーベルです。ほぼ同時期の録音なので甲乙つけがたいのですが、しいて特徴を挙げれば、有名な《チュニジアの夜》のソロに象徴されるダイアルセッションの完成度、のっけから即興で飛ばしまくる《クラウンスタンス》や、マイルスが一生懸命パーカーに追いつこうとする《バード・ゲッツ・ザ・ワーム》など、サヴォイならではの荒削りな魅力といったところでしょうか。
 パーカーの真の後継者は、実はジャッキー・マクリーンなどフレーズを真似た“パーカー派”ではなく、むしろエリック・ドルフィーなのではないかと思わせるのが、アルバム『アウト・ゼアー』(Prestige)です。意表を突くフレーズが力強く艶やかなアルトサウンドに乗って奔出するところなど、まさにパーカー的。
 それもそのはず、名を成してからこそいわゆる“パーカーフレーズ”はほとんど吹かないドルフィーの初期の演奏には、明らかにパーカーの影響がみられます。また、録音こそ残っていませんが、“フリージャズ”の代表選手、オーネット・コールマンも若い頃はパーカーに夢中だったそうです。アルバム『ゴールデン・サークルのオーネット・コールマンVol.1』(Blue Note)は、自在にアルトを操り、泉が湧き出るごとく奔放にアイデアを飛翔させる、彼のアルト奏者としての実力を知らしめる傑作です。そして、あたかもエレクトリック・マイルスに挑戦するがごとく、独自のエレクトリック・ミュージックを創出した『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』(Horizon)は、オーネット・コールマンの音楽観の集大成とも言うべきユニークな音楽です。
 チャーリー・パーカーのサイドマンからスタートしたマイルス・デイヴィスは、時代によって著しくスタイルを変えてきましたが、1970年代半ばの大阪でのライヴ『アガルタ』(Columbia)は彼の音楽の究極点を示す壮絶な演奏です。どの時代のマイルスも素晴らしいのですが、どれか1枚と言われれば、私はこの時代のアルバムを挙げます。
 『スティット・パウエル・J.J.』(Prestige)と3人のミュージシャン名が列記されていますが、やはりこれはバド・パウエルとソニー・スティットのセッションが目玉でしょう。勢い込むパウエルと、それを迎え撃つスティットのやり取りはなんともスリリング。ふつう、テナーとピアノではどうしてもテナーが目立つものですが、パウエルに限っては完全にスティットを圧倒しています。やはりジャズピアノの王者と言われるだけのことはありますね。
 そして、そのパウエルにアドヴァイスしたセロニアス・モンクのユニークさは、ホンの2、3音鍵盤を叩くだけで露になります。思いのほか録音が少ない、モンクのピアノトリオの傑作が『セロニアス・モンク・トリオ』(Prestige)です。

【掲載アルバム】
『チャーリー・パーカー・ザ・コンプリート・スタジオ・レコーディング・オン・サヴォイ・イヤーズ』(Savoy)
エリック・ドルフィー『アウト・ゼアー』(Prestige)
マイルス・デイヴィス『アガルタ』(Columbia)

金曜日 22:00~ 2時間番組

[Recommend!] 土・日曜日 22:00~

テイラー・アイグスティ『Plot Armor』 (Core Port)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第229回
新譜紹介 第94回


 このコーナーは毎月日本に入荷した新録作品をランダムに購入・試聴したうえでのご紹介ですので、楽曲の配列こそ聴きやすい自然な流れになるよう工夫していますが、1本の番組として「新譜紹介」以上のタイトルを付けることは難しいのです。しかし偶然、まさにこれが「現代ジャズの現況だ」と言えるような新録作品がそろってしまうことがあるのですね。
 今回図らずも、昨年私が出版した『ジャズ喫茶いーぐるの現代ジャズ入門』で現代ジャズの大きな特徴として挙げた、「ジャズの世界音楽化」が見事に実現されているのです。「ジャズの世界音楽化現象」とは、アメリカ発祥の“ジャズ”が世界各地で演奏・享受されているだけでなく、そのレベルがひと昔前とはくらべものないぐらい進化・洗練されている状況のことです。
 その大きな理由として、ジャズがもともと備えていた混交・融合音楽としての性格が、一世紀以上の歴史を経て世界各地で花開いたということなのです。結果としてジャズの多様性が増し、いよいよ今後の展開が面白くなってきているのですね。何しろ今回の新譜紹介は、今注目のUKに始まり、北欧、ブラジル、US、フランスと続き、最後は日本なのです!

 最初にご紹介するのは、現代ロンドン・シーンを牽引する優れたコンポーザー兼プロデューサーであるアレックス・ヒッチコックが3っつの異なるバンドを率い、ロンドンの伝説的ジャズクラブ「ヴォルテックス」で3晩に渡って行われたライヴ・レコーディング『Dream Band : Live in London』(Whirlwind)です。
 最初のトラックのメンバーはジェームス・コーパス(tp) キット・ダウンズ(p) ルイス・ライト(vib) コーナー・チャップリン(b) マーク・マイケル(ds)によるオーソドックスなアコースティック・ジャズですが、すべてのトラックの作曲を担当したヒッチコックの斬新なアイデアが演奏に活き活きとした躍動感を与えています。ヴァイヴ・サウンドの扱いが秀逸。
 2曲目はヴォーカルのリーゼロッテ・オストロムとマーク・カヴマのトランペット、そしてロブ・ルフトのギター・サウンドが溶け合う心地よいトラック。どちらもいわゆるUKジャズのイメージとは一味異なる洗練さが聴きどころで、それも含めUKシーンの多様性:活性化が浮き彫りとなっています。
 次に収録したアルバムはコペンハーゲンを拠点に活動する若手テナー奏者、アンドレア・トフテマルクの『La Gare』 (April)で、ゲスト・トランぺッターとしてジェラード・プレゼンサーが参加したオーソドックスな2管クインテット(トラックによりワン・ホーン・カルテット)です。
 聴きどころはサックス、トランペットともに落ち着いたふくよかなサウンドが魅力で、それでいながら明らかな現代性を感じさせるサウンドが聴き手を惹きつけるところですね。現代のジャズはフォーマットこそオーソドックスでもやはり時代を反映しているのです。
 ブラジルのギタリスト兼コンポーザー、ファビアーノ・ド・ナシメントの『Mundo Solo』 (Unimusic)は、楽曲によりパーカッション、ベース、ドラムスがゲスト参加していますが、基本「Mundo Solo = ソロ・ワールド」というタイトル通り、ナシメントがさまざまな楽器を使用しロサンゼルスの自宅で制作されたものです。
 アンビエント~ニューエイジ的なサウンドながらやはりブラジリアン・テイストを感じさせる彼の音楽は、“ジャズ”というフォーマットの多様性~自由度が世界音楽化を促進させていることを実感させます。
 そしてUSの「真打」登場です。2022年グラミー賞に輝くピアニスト、テイラー・アイグスティの新作『Plot Armor』 (Core Port)は、巧緻で洗練されたサウンド・テクスチャーに絡むアウグスティのピアノが素晴らしい。そして彼のプロデュースの才を現しているのがテレンス・ブランチャード(tp) ベン・ウェンデル(ts,ss) ジュリアン・ラージ(g)といった現代アメリカのトップ・ミュージシャンの巧みな起用に加え、ベッカ・スティーヴンスらの個性的なヴォーカルをフィーチャーし、まさに「今のアメリカン・ジャズ」を表現しきっているところですね。これは傑作です。
 このところUKシーンに押され気味だったフランスから魅力的な新人女性ヴォーカリストが誕生しました。ギャビ・アルトマンのデビュー作『Gabi Hartman』 (Sony Music) は、小細工なしで「声の魅力」に的を絞ったオーソドックスなヴォーカル・アルバムです。ことさら技巧をひけらかさない穏やかな歌声は幅広いファンに届いて行くことでしょう。
 最後に収録したのは、西山瞳が新たに編成した西嶋徹(b) 則武諒(ds)を率い新境地を開拓したピアノ・トリオ・アルバム『Dot』 (Meantone) です。今や巷にピアノ・トリオ・アルバムはあふれるほど出回っているのですから、その中で独自性を打ち出すのはたいへんななこと。
 その困難な挑戦に、西山は「ジャズの基本」である「個性表現」を前面に打ち出すことで見事成果を上げました。取り立ててキャッチーなことはしていないのですが、じっくりと耳を傾けることで彼女のオリジナリティが際立っているのです。

【掲載アルバム】
アレックス・ヒッチコック『Dream Band : Live in London』(Whirlwind)
テイラー・アイグスティ『Plot Armor』 (Core Port)
西山瞳『Dot』 (Meantone)

土・日曜日 22:00~ 2時間番組

インフォメーション

ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

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発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

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