D51ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)
D51ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお送りします。毎夜22:00~24:00の「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定で、後藤雅洋が執筆したコラムとともにジャズの魅力をお伝えします。

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備考毎月1日に更新

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    • Blue Friday
    • Kenny Dorham
    • 23:58:07
    • Alone Together
    • Kenny Dorham

月曜日 22:00~

ビル・エヴァンス『ポートレイト・イン・ジャズ』(Riverside)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第124回
「ジャズの巨人」シリーズ 第2回 ビル・エヴァンス(再放送)


前回予告したとおり、今回もまた「ジャズの巨人」です。ビル・エヴァンスはさまざまな人気投票で必ず上位に入る人気ミュージシャンであると同時に、ジャズを長く聴き続けてきたコアなジャズファンからも高く評価されている、まさにジャズの巨人です。彼の功績は、モダン・ジャズ・ピアノの改組、バド・パウエルの業績を引き継ぎつつも、白人ミュージシャンらしい個性とピアノ・トリオのスタイルを一新するという、大きな改革をなしたことです。
とは言え、誰しもデビューの頃はさまざまな要素が混在していたり、いまひとつスムースさを欠いていたりするもの。その辺りの変化が良くわかるように、今回は録音年代順に聴いていくことにします。最初にご紹介するのは、エヴァンスを世に紹介したリヴァーサイド・レーベルからの記念すべき初リーダー作『ニュー・ジャズ・コンセプション』です。悪くない演奏ですし、後のエヴァンス・スタイルの萌芽が見えますが、少々ギクシャクしていたり肩に力が入り過ぎのようなところもうかがえます。それが『エヴリボディ・ディグス・ビル・エヴァンス』(Riverside)ともなると、まったく同じ傾向ながら完全に一個のピアニストとしての個性を確立させています。
そしてなんと言っても、マイルスのサイドマンという当時のジャズ・ピアニスト憧れの地位を手に入れたのが『カインド・オブ・ブルー』(Columbia)です。マイルスはこの時期、エヴァンスからの影響をあからさまに語っています。そしてもちろんエヴァンス自身の音楽的進歩も大きかった。その成果が歴然と現れたのがスコット・ラファロとの共演第1作『ポートレイト・イン・ジャズ』(Riverside)です。ここでの《枯葉》は絶品。
エヴァンスはサイドマンとしてのアルバムは比較的少ない方ですが、キャノンボール・アダレイとの異色作『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』(Riverside)は傑作です。エヴァンスの代表作とも言うべき名曲《ワルツ・フォー・デビー》も素晴らしい。以下は世に「リヴァーサイド4部作」と呼ばれた、ラファロとの貴重な共演盤に記録された名演集です。まず耽美的とも思えるリリカルな表現が魅力的な《ナルディス》は、『エクスプロレーションズ』の白眉。そして極め付き名盤『ワルツ・フォー・デビー』からは、出だしの一音から聴き手を魅了する《マイ・フーリッシュ・ハート》。最後は同日録音の『サンディ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』から、通好みの名曲《グロリアス・ステップ》。
ビル・エヴァンスというと、共演するミュージシャンとの魅力的なコラボレーションが有名ですが、その代表がジム・ホールとの『アンダーカレント』(United Artists)でしょう。《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》はジャズマン同士がお互いの出す音によって刺激され、よりスリリングなアドリブが展開される「インタープレイ」の典型的名演です。もちろんこれはラファロとの共演体験の賜物。
《ハイ・マイ・ハート・シングス》もまたエヴァンスの名演で知られた名曲ですが、これは同名のアルバムから。そして、その名も『インタープレイ』(Riverside)とされたフレディ・ハバード、ジム・ホールとの共演盤は極め付き《あなたと夜と音楽と》が有名です。エヴァンスとしては珍しい、寛いだ気分のライヴ盤が『シェリーズ・マン・ホール』(Riverside)。こういうエヴァンスも悪くありません。
そして、ヴァーブに移籍してからの代表作がエディ・ゴメス、ジャック・デジョネットを従えた新トリオによるモントルーでのライヴ盤で、かつての名演《ナルディス》をまったく違う切り口で演奏しています。晩年の枯淡とも言える境地を吐露した名演が、ハーモニカの名手トゥート・シールマンスと共演した『アフィニティ』(Warner Bros,)。そして最後期エヴァンスの傑作が『アイル・セイ・グッドバイ』(Fantasy)です。

【掲載アルバム】
ビル・エヴァンス『ポートレイト・イン・ジャズ』(Riverside)
ビル・エヴァンス『サンディ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』(Riverside)
ビル・エヴァンス『エクスプロレーションズ』(Riverside)

月曜日 22:00~ 2時間番組

火曜日 22:00~

『チェッツ・チョイス』(Criss Cross)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第49回
チェット・ベイカー特集 その2 「後期チェット・ベイカー」(再放送)


実を言うと、私がチェット・ベイカーの魅力に開眼したのは80年代になってからだった。それまではウエストコースト・ジャズのスターの一人、ぐらいの認識しかなく、あまり積極的に彼のアルバムを聴くことは無かった。
それが変わったのは、雑誌に掲載された1枚の壮絶なポートレイトだった。若い頃の面影はなく、人生の深遠を覗いたかのようなすさんだ表情からは一種迫力のようなものがにじみ出ている。そこで70年代以降のアルバムを集中して聴いてみると、演奏も良くなっているのだ。確かにトランペットの音色のなめらかさや勢いに衰えはうかがえるものの、シンプルなフレーズから醸し出される深みやコクは、むしろ増している。
その中でも1978年にフランスで録音された『トゥー・ア・デイ』(All Life)は歳を感じさせない快適な演奏で、ウエストコースターというよりはハードバッパーと言っても差し支えないようなノリの良いアルバム。ジャズ喫茶で受けるタイプで、小気味よさが聴き所だ。1曲目のタイトル曲も良いが、《イフ・アイ・シュド・ルーズ・ユー》はまさにチェットのために書かれたような憂いを篭めた名曲・名演。
ちょっと音質は悪いが、迫力という点では『スター・アイズ』(Marshmallow)は白眉と言って良い。デューク・ジョーダンのピアノとベースだけという変則トリオだが、ドラムスのいない分、チェットが補って余りある気合の充実した演奏で、あえてビ・バップ的と言いたくなるような緊張感がたまらない。
チェットがドイツのヴァイヴ奏者、ウォルフガング・ラッカーシュミットとデュオで吹き込んだ『バラッズ・フォー・トゥー』(Sandra)は、異色作だが、チェットの新たな魅力が浮き彫りにされた興味深い作品。底力のあるミュージシャンはどんなフォーマットでも自分の個性を発揮できるという良い見本である。
一方、ヨーロッパ、ジャズ・ピアノ界のベテラン、ルネ・ユルトルジュのトリオをバックにした『ライヴ・アット・ザ・パリ・フェスティヴァル』(Carlyne)は、オーソドックスなワン・ホーンでチェットが伸びやかにトランペットを吹きまくる。かつて、アート・ペッパーと共演した作品で披露した《フォー・マイナーズ・オンリー》が聴ける。
ギターのフィリップ・カテリーンをサイドに迎えた『チェッツ・チョイス』(Criss Cross)はまさにチェットの80年代的傑作。麻薬を巡るさまざまなトラブルをはじめ、人生の深遠を覗き見たものにしか出せない枯れた境地は、50年代のチェットの演奏からは聴くことができないものだ。個人的には晩年の作品を愛聴する私にとって、このアルバムがチェット評価の転機となった。
最後の1枚は『スター・アイズ』でも共演したデューク・ジョーダンがキチンとしたピアノ・トリオでバックを務める人気盤『ノー・プロブレム』(Steeple Chase)。タイトル曲であるジョーダンの名曲《ノー・プロブレム》がやはり良い。ジョーダンの哀愁とチェットの黄昏た感じが実にうまくこの曲のマイナー・イメージとマッチしている。
正直に言って、晩年のチェットのアルバムにはマトモに音の出ていないような怪しげなシロモノも多いが、良いものは若い頃の勢いだけの演奏より含蓄、滋味に満ちた、聴き飽きのこない傑作ぞろいだ。ぜひ晩年のチェットの演奏にも興味を持っていただきたいと思う。

【掲載アルバム】
『トゥー・ア・デイ』(All Life)
『スター・アイズ』(Marshmallow)
『チェッツ・チョイス』(Criss Cross)

火曜日 22:00~ 2時間番組

水曜日 22:00~

フィル・ウッズ『ウッドロアー』(Prestige)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第62回
『ジャズ・ジャイアンツ、これだけ聴けば大丈夫』 その9 フィル・ウッズ(再放送)


ジャズのアドリブを大きく変えたモダンジャズの創始者、チャーリー・パーカーの影響は、1950年代以降のほとんどのアルトサックス奏者に及んでいました。黒人ミュージシャンではジャッキー・マクリーンが代表格で、彼のアルバムは多くのジャズファンから愛されています。
一方、白人ミュージシャンでもっとも強い影響をパーカーから受けたのは、なんといってもフィル・ウッズでしょう。何しろ彼はパーカーを敬愛するあまり(と言っていいのか)パーカーの死後、彼の未亡人と結婚してしまうのです。もっとも、パーカー“最後の”妻であったチャン・リチャードスンは写真で見る限り相当の美人ではあったのですが、、、
1931年生まれですから今年79歳になるウッズは、1950年代にはハードバップ・アルト奏者として多くの名盤を世に送り出しました。『ウッドロアー』(Prestige)はデビュー間もない1955年に録音されましたが、彼の優れた資質が完璧に記録された初期の最高傑作です。
滑らかなトーン、よどみないフレージング、そしてほのかな甘さを湛えた彼のアルトサウンドは、黒人中心の新しいジャズスタイル、“ハードバップ”の中で、白人ハードバッパーの存在意義を証明してみせたのです。勢いに乗ったタイトル・チューン《ウッドロアー》の輝き、そして続くバラード・ナンバー《フォーリン・イン・ラヴ・オール・オーヴァー・アゲイン》の甘さ、まさに名演、名盤です。
赤く火の燃える暖炉の前でかわいいワン公を抱えて寝そべるジャケットが印象的な『ウォーム・ウッズ』(Epic)も初期の名盤で、こちらはホンの少し翳りを感じさせる、哀感のこもったアナログ時代のB面がマニアの聴き所です。もちろん番組ではそちらの面を収録しました。すべて良い曲ですが、アップテンポの名曲《ガンガ・ディン》が圧巻。
一般論ですが、黒人ミュージシャンは独自の味わいで聴かせ、白人ミュージシャンはテクニックを土台にしてそこに各人の個性を上乗せすると言われています。これは同じパーカー派アルトであるマクリーンとウッズの関係を見ると、なるほどとうなずけます。味のマクリーンに対し、ウッズのテクニックはほぼ完璧です。そうしたウッズの特徴がもっとも良く現れたのが、同じ白人アルトサックス奏者、ジーン・クイルと組んだ『フィル・トークス・ウイズ・クイル』(Epic)で、テクニシャン同士の壮絶なつばぜり合いが聴き所。
60年代の末、ウッズも多くのジャズマン同様、ヨーロッパに新たな活動の場を見出します。ジョルジュ・グルンツのピアノ、アンリ・テキシェのベース、ダニエル・ユメールのドラムスという、後のヨーロッパ・ジャズシーンを牽引していく若手ミュージシャンでサイドを固めた新しいグループ、ヨーロピアン・リズム・マシーンの第1作『アライヴ・アンド・ウエル・イン・パリ』(Pathe)はウッズの新生面を拓いた60年代の名盤で、アルトサウンドも力強さを増したハードなものに大きく変化しています。
『ライヴ・フロム・ザ・ショウボート』(RCA)は70年代ライヴの傑作です。ギター、パーカッションを加えた多彩なサウンドが新鮮な、ザ・フィル・ウッズ・シックスによる演奏で、ウッズはアルトのほかにソプラノ・サックスも披露しています。最後にご紹介する『スリー・フォー・オール』(Enja)は、名人トミー・フラナガンのピアノとレッド・ミッチェルのベースだけという変わった編成で、ウッズがクラリネットを演奏した珍しいアルバムです。彼の隠れ名盤と言っても良いでしょう。

【掲載アルバム】
フィル・ウッズ『ウッドロアー』(Prestige)
フィル・ウッズ『アライヴ・アンド・ウエル・イン・パリ』(Pathe)
フィル・ウッズ『スリー・フォー・オール』(Enja)

水曜日 22:00~ 2時間番組

木曜日 22:00~

マイルス・デイヴィス『アガルタ』(Columbia)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第77回
「私の好きなジャズ」その3~大物編(再放送)


「私の好きな大物ジャズマン」ということでセレクトしてみて気がついたのですが、パーカー、ドルフィー、オーネットと、アルトサックス奏者が多いのです。もしかすると、私がジャズに求めるスピード感、スリルの表現には、アルトならではのタイトな音色が向いているのかもしれませんね。
大物中の大物、チャーリー・パーカーの魅力はなんと言ってもアドリブのスリルです。一瞬の閃きにすべてを賭けてしまう、ビ・バップならではの潔さがたまらない。パーカーマニアは、鞭が撓るように小気味良く加速された、腰が強く輪郭のハッキリしたアルトサウンドが出てくるだけでもう満足です。
ダイアルとサヴォイはパーカーの絶頂期を記録した2大レーベルです。ほぼ同時期の録音なので甲乙つけがたいのですが、しいて特徴を挙げれば、有名な《チュニジアの夜》のソロに象徴されるダイアルセッションの完成度、のっけから即興で飛ばしまくる《クラウンスタンス》や、マイルスが一生懸命パーカーに追いつこうとする《バード・ゲッツ・ザ・ワーム》など、サヴォイならではの荒削りな魅力といったところでしょうか。
パーカーの真の後継者は、実はジャッキー・マクリーンなどフレーズを真似た“パーカー派”ではなく、むしろエリック・ドルフィーなのではないかと思わせるのが、アルバム『アウト・ゼアー』(Prestige)です。意表を突くフレーズが力強く艶やかなアルトサウンドに乗って奔出するところなど、まさにパーカー的。
それもそのはず、名を成してからこそいわゆる“パーカーフレーズ”はほとんど吹かないドルフィーの初期の演奏には、明らかにパーカーの影響がみられます。また、録音こそ残っていませんが、“フリージャズ”の代表選手、オーネット・コールマンも若い頃はパーカーに夢中だったそうです。アルバム『ゴールデン・サークルのオーネット・コールマンVol.1』(Blue Note)は、自在にアルトを操り、泉が湧き出るごとく奔放にアイデアを飛翔させる、彼のアルト奏者としての実力を知らしめる傑作です。そして、あたかもエレクトリック・マイルスに挑戦するがごとく、独自のエレクトリック・ミュージックを創出した『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』(Horizon)は、オーネット・コールマンの音楽観の集大成とも言うべきユニークな音楽です。
チャーリー・パーカーのサイドマンからスタートしたマイルス・デイヴィスは、時代によって著しくスタイルを変えてきましたが、1970年代半ばの大阪でのライヴ『アガルタ』(Columbia)は彼の音楽の究極点を示す壮絶な演奏です。どの時代のマイルスも素晴らしいのですが、どれか1枚と言われれば、私はこの時代のアルバムを挙げます。
『スティット・パウエル・J.J.』(Prestige)と3人のミュージシャン名が列記されていますが、やはりこれはバド・パウエルとソニー・スティットのセッションが目玉でしょう。勢い込むパウエルと、それを迎え撃つスティットのやり取りはなんともスリリング。ふつう、テナーとピアノではどうしてもテナーが目立つものですが、パウエルに限っては完全にスティットを圧倒しています。やはりジャズピアノの王者と言われるだけのことはありますね。
そして、そのパウエルにアドヴァイスしたセロニアス・モンクのユニークさは、ホンの2、3音鍵盤を叩くだけで露になります。思いのほか録音が少ない、モンクのピアノトリオの傑作が『セロニアス・モンク・トリオ』(Prestige)です。

【掲載アルバム】
『チャーリー・パーカー・ザ・コンプリート・スタジオ・レコーディング・オン・サヴォイ・イヤーズ』(Savoy)
エリック・ドルフィー『アウト・ゼアー』(Prestige)
マイルス・デイヴィス『アガルタ』(Columbia)

木曜日 22:00~ 2時間番組

金曜日 22:00~

ケニー・ドーハム『アフロ・キューバン』(Blue Note)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第110回
ケニー・ドーハム特集(再放送)


ジャズマンを代表するアルバムの変遷も面白いものです。私がジャズを聴き始めた1960年代、ケニー・ドーハムの代表作と言えば、間違いなく『静かなるケニー』と邦題が付けられた『クワイエット・ケニー』(New Jazz)でした。そしてジャズ喫茶でのリクエストでも、マル・ウォルドロンの『レフト・アローン』(Bethlehem)と並ぶ人気盤。「いーぐる」でも実によくかかりました。
変化が現れたのは1980年代、イギリス発の「クラブ・ジャズ・ムーヴメント」がきっかけ。コンガ、カウベルの響きも軽やかな名曲《アフロディジア》が収録された『アフロ・キューバン』(Blue Note)が、ダンス・ミュージックとして大脚光を浴びたのです。そのニュースはいち早く日本にも伝わり、そのころようやくこのアルバムの日本盤が当時の東芝EMIから発売されたこともあいまって、ケニー・ドーハムと言えば今回冒頭に収録した『アフロ・キューバン』となったのです。
確かにテナー・サックスにトロンボーン、そしてバリトン・サックスまで加えた豪華4管にパーカッション隊を加えた小気味良いサウンドは、まさにハード・バップ。ジャズ喫茶ファンにもピッタリの名曲でした。
ところで『静かなるケニー』にしても『アフロ・キューバン』にしても、「静と動」で趣こそ違え前述のように典型的ハード・バップなので、ドーハムと言うと「ハード・バッパー」のイメージが強いのですが、彼は由緒正しいビ・バッパーなのです。あのマイルス・デイヴィスが辞めた後、チャーリー・パーカーのサイドマンを務めたのがドーハム。折があれば、パーカーのサヴォイ・セッションに収録されたドーハムの演奏もお聴きになってみてください。
さて2枚目にご紹介するアルバムはまさしくハード・バッパー、ジャッキー・マクリーンと共演した『インタ・サムシン』(Pacific Jazz)。この二人の組み合わせも相性が良く、今回はご紹介しませんでしたが、『マタドール』(United Artists)や『ジャッキー・マクリーン・クインテット』(Blue Note)なども傑作です。
3枚目は知名度こそ低いかもしれませんが、まさしくドーハムの最高傑作と言っても過言ではない『ジャズ・プロフェッツ』(ABC)。制作会社がすぐつぶれ、「幻の名盤」として一部のコアなマニアには知られていましたが、だいぶ経ってから日本盤が発売されるまで、聴いた人がいないためあまり紹介されることもありませんでした。タイトルは知る人ぞ知る名白人テナー奏者、J.R.モンテローズとドーハムが結成したジャズ・グループの名称です。それにしても、「ジャズの予言者たち」というネーミングはカッコいいですね。
『ショート・ストーリー』(Steeple Chase)は、1963年にドーハムがヨーロッパに演奏旅行に出かけた際、現地のミュージシャンたちと共演した記録。サイドでフルューゲルホーンを吹いているのはアラン・ボッチンスキー。しかしやはり聴きどころはドーハムの熱演と、それを煽り立てるテテ・モントリューのノリの良いピアノでしょう。
『ラウンド・ミッド・ナイト』(Blue Note)は、前述のJ.R.モンテローズにケニー・バレルのギターが加わった、これも折り紙つきの名盤。そして最後はドーハムがワンホーンでしみじみと歌い上げる、冒頭にご紹介した『静かなるケニー』です。これもまたサイドで主人を盛り立てるフォミー・フラナガンが名演です。まさに「名盤の影にトミフラあり」ですね。

【掲載アルバム】
ケニー・ドーハム『アフロ・キューバン』(Blue Note)
ケニー・ドーハム『ジャズ・プロフェッツ』(ABC)
ケニー・ドーハム『ショート・ストーリー』(Steeple Chase)

金曜日 22:00~ 2時間番組

[Recommend!] 土・日曜日 22:00~

エリック・ドルフィー『ファー・クライ』(プレスティッジ)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第254回
「ジャズ喫茶のジャズ」 第14回 : 同じ曲がこんなに違う!スタンダード聴き比べ


ジャズに興味を待たれた方にぜひお薦めしたいのが、この「スタンダード聴き比べ」です。というのも、私自身、ジャズが本当に面白くなったきっかけがこのスタンダード・ナンバー聴き比べだったのです。
ジャズを聴き始めたころ、最初に不思議に思ったのは、同じ楽曲を何人ものミュージシャンが演奏していることでした。それまで私が親しんでいたロック、ポップスの世界では、他人のヒット曲を歌う例はあまり多くありません。
そこで意識的に同じ楽曲を続けて異なったミュージシャンの演奏で聴くことを繰り返してみると、いろいろと興味深いことが見えてきたのです。それは、演奏する人によってずいぶんと楽曲のイメージが異なることと、しかしロック、ポップスのような「これが決定版」といえるケースはあまりなく、それぞれの演奏に良いところがあるのですね。
こうしたジャズならではの特徴は、実は「ジャズという音楽の本質」に繋がっているのです。つまりジャズは「それが魅力的ならどんなスタイルもOK」という自由さが聴きどころになっている音楽ジャンルなのです。

元はシャンソンだった名曲「枯葉」は、冒頭に収録したキャノンボール名義ながら実質マイルス・ディヴィスによる名演によってジャズのスタンダード・ナンバー、つまり定番楽曲となりました。
そこでボビー・ティモンズやらビル・エヴァンスがこの曲を採り上げているのですが、同じピアノ・トリオ演奏ながら、ティモンズとエヴァンスではまったく雰囲気が違っています。しかし、それぞれの良さがあるので、好みによって、あるいは気分によって両バージョンを楽しむことが出来るのです。それと同時に、同じ楽曲なので、ティモンズとエヴァンスの個性の違いも実にわかりやすいのです。
スタンダード・ナンバーは、最初ヴォーカル・ナンバーで聴くとその曲の作曲家が狙った気分がわかりやすいと言えるでしょう。「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」はヘレン・メリルの名唱でファンに知られるようになりました。
アート・ペッパーによる同曲は、コール・ポーター作によるこの曲のイメージを比較的正確に伝えています。それに対し、リー・コニッツの演奏は楽曲の基本構造を踏まえつつもそれを即興演奏の素材とする、元祖チャーリー・パーカー流のスタイルを貫いていますね。
ヴォーカルでなくとも、ピアノ・トリオによる演奏もまた比較的楽曲の気分をわかりやすく伝えるケースが多そうです。「ジャズ・スタンダードと言えばソフトリー」などとファンの間で愛聴された「朝日のように爽やかに」も、最初ウィントン・ケリーの演奏で曲の雰囲気を掴んだ後で、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーンといった大物サックス奏者の演奏を聴けばおのずと両者の個性が明らかになりますね。
ジャッキー・マクリーンの名演によって、一時期ジャズ喫茶リクエストの定番となったマル・ウォルドロンの名曲「レフト・アローン」も、エリック・ドルフィーの手にかかるとまた別の光が当てられます。こうしたところがスタンダード聴き比べの面白いところなのです。
北欧の名曲「デア・オールド・ストックホルム」をバド・パウエルは哀感たっぷりに歌い上げますが、フィル・ウッズ、ジーン・クイルのコンビは妙に威勢の良い演奏なって、これもまた違った解釈なのだとナットクです。
同じように、ビル・エヴァンスとアート・ペッパー、両者の「あなたと夜と音楽と」も、ともに名演と言って良いでしょう。バップ定番「チュニジアの夜」ですが、元祖チャーリー・パーカー・ヴァージョンは典型的ビ・バップ。それに対しアート・ブレイキーの時代になると、見事ハードバップ名演となっているのですね。
ロック、ポップスでは、例えばポール・マッカートニーの歌う「イエスタディ」のように、「やはり本家の歌がいいね」となりがちですが、ジャズでは作曲者、セロニアス・モンクの演奏による「ラウンド・ミッドナイト」も、そしてマイルス・ディヴィスがフィーチャーされたミシェル・ルグランのアレンジだって悪くないよねとなるのが、ジャズならでは面白さなのです。

《参考アルバム》
ビル・エヴァンス『ポートレイト・イン・ジャズ』(リヴァーサイド)
リー・コニッツ『モーション』(ヴァ―ヴ)
エリック・ドルフィー『ファー・クライ』(プレスティッジ)

土・日曜日 22:00~ 2時間番組

インフォメーション

ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

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