ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)
ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお送りします。毎夜22:00~24:00の「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定で、後藤雅洋が執筆したコラムとともにジャズの魅力をお伝えします。

放送スタイルタイムテーブル参照

備考毎月1日に更新

歌 入/無混在

テンポオール

対応サービス

  • 時刻
  • 楽曲名
  • アーティスト名
    • 23:49:32
    • Get Happy
    • Tommy Flanagan
    • 23:54:44
    • My Shining Hour
    • Tommy Flanagan

月曜日 22:00~

クリフォード・ブラウン「スタディ・イン・ブラウン」(EmArcy)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第131回
「ジャズの巨人シリーズ」 第9回 クリフォード・ブラウン(再放送)


若くして不慮の自動車事故で亡くなってしまったクリフォード・ブラウンは、極めて短い活動期間にもかかわらず、多くの名盤を残しています。それは一にも二にも、彼の演奏技術が優れていたからです。トランペットいう楽器の特性を完璧に生かした、輝かしく勢いのある彼のサウンドは誰にも真似できません。
ブラウニーと愛称されたクリフォード・ブラウンは、デビュー時から完璧なトランペット技術でファンを驚かせました。最初にご紹介するアルバム「ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド」(Columbia)は1952年の録音で、ラテン・バンドのサイドマンとしての初録音です。音楽自体はちょっとレトロな感じですが、後半に登場するブラウニーのソロは既に完成されています。
次にご紹介する「ジャズ・イモータル」(Pacific Jazz)は、珍しくブラウニーがズート・シムス他、ウェスト・コーストのミュージシャンたちと共演したアルバムで、彼がどのようなタイプのジャズマンとも合わせられることが良くわかる、実に心地よい演奏です。
有名なアート・ブレイキーの「バードランドの夜Vol.2」(Blue Note)では、まさにハードバップの夜明けを告げるブラウニーの熱演が記録されていますね。共演のルー・ドナルドソンも元気一杯。そしていよいよマックス・ローチとの双頭バンドです。「スタディ・イン・ブラウン」、「クリフォード・ブラウン・アンド・マックス・ローチ」(共にEmarcy)では、サイドのテナー奏者、ハロルド・ランドの好演も手伝って、どちらも彼らの代表作にふさわしい名盤です。
しかし気が付きにくいのがローチの役割で、メロディ楽器の陰に隠れがちですが、実は演奏を隅々までコントロールしているのは、むしろ年上のローチなのですね。彼がしっかりとリズム・キープしているおかげで、ブラウニーはじめ、ランドもまた彼らの個性を自在に発揮できるのです。
ブラウニーはトランペットの圧倒的技術を誇るだけでなく、「歌心」においても優れていました。ストリングスとの共演では、シンプルにメロディを歌わせるだけで聴き手を魅了する表現力を持っているのです。ですからブラウニーは当然歌伴もうまく、サラ・ヴォーンはじめ、ヘレン・メリルなどと優れたヴォーカル・アルバムを録音しています。サラの「バードランドの子守唄」も、メリルの「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」も、歌い手がいいのは当然ですが、サイドに登場するブラウニーの輝かしいソロが華を添えているのも、大きな聴き所となっているのです。
ローチとの双頭バンドは途中からテナー奏者が当時の新人、ソニー・ロリンズに変わります。「アット・ベイジン・ストリート」(EmArcy)は、まだちょっと荒削りなところが垣間見えるロリンズを相手に、ブラウニーならではの輝かしく勢いのあるトランペットが堪能できる名演です。彼、相手によってけっこう頑張っちゃうんですね。
そして最後にご紹介するのは、冒頭と同じアルバムに収録されているブラウニーの死の1年前の録音です。発売当初は「死の直前」とされていましたが、近年もっと前の記録であったことがわかりました。地方の無名ミュージシャンたちとの気軽なジャム・セッションにもかかわらず、「チュニジアの夜」にしても「ドナ・リー」にしても、その気合の入り加減は尋常ではありません。こうした演奏を聴くたびに、ジャズマンという人種の表現に賭ける意気込み、凄みに心底圧倒される思いです。

【掲載アルバム】
クリフォード・ブラウン「スタディ・イン・ブラウン」(EmArcy)
クリフォード・ブラウン「ベイジン・ストリートのクリフォード・ブラウン」(EmArcy)
クリフォード・ブラウン「ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド」(Columbia)

月曜日 22:00~ 2時間番組

火曜日 22:00~

ジョー・ヘンダーソン『モード・フォー・ジョー』(Blue Note)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第56回
『ジャズ・ジャイアンツ、これだけ聴けば大丈夫』 その3 ジョー・ヘンダーソン(再放送)


ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズといった2大テナー奏者が健在だった1960年代は彼らの影に隠れがちだったが、80年代に入り、新生ブルーノート・レーベルにレコーディングしたあたりから、ジョー・ヘンダーソンは大物の風格を漂わせ始めた。そしてマイルスがいなくなった90年代以降のジャズシーンにおいて、ジョーヘンはジャズの伝統を次世代に引き継ぐ重要な位置を占めるに至ったが、21世紀を迎えた2001年、惜しくも没した。
1937年生まれのジョー・ヘンダーソンは、1926年生まれのコルトレーンや1929年生まれのロリンズの一世代下に属し、ジャズシーンへのデビューも、60年代に入ってからのブルーノート・レーベルへの吹込みがきっかけだった。『モード・フォー・ジョー』(Blue Note)はリー・モーガン、カーティス・フラーを従えた3管に、ボビー・ハッチャーソンまで加わった豪華な7人編成で、タイトルどおり“60年代モードジャズ”の代表的作品。
実を言うと、ジョー・ヘンダーソンはワンホーンでじっくり聴かせるタイプのミュージシャンで、それだけに地味な印象だが、一度彼の渋い魅力に目覚めるとかなり中毒的にのめり込むようになる。『インナー・アージ』もいわゆる“60年代ブルーノート新主流派”の傑作で、勢いのあるマッコイのピアノとダイナミックなエルヴィンのドラミングに乗った、静かに燃え上がるジョーヘンのテナーが堪能できる。
巨匠の地位に登りつめた90年代の作品『ポギーとベス』(Verve)は、新世代のギタリスト、ジョン・スコフィールドをサイドに従え、ヴォーカルにはチャカ・カーンを迎えた大作で、黒人文化の伝統を現代に伝えようとするジョーヘンの意欲が伝わってくる。晩年の作品だがまったく古さを感じさせず、時代の空気を演奏に反映させる表現力はさすがと言いたい。
再び60年代に戻り、『ページ・ワン』はブルーノート初リーダー作で、先輩格のケニー・ドーハムがサイドを務めている。そのせいもあってちょっとハードバップ的なところもあるが、ドーハム作《ブルー・ボッサ》はやはり名曲。続く『テトラゴン』は、60年代後半、ジョーヘンがブルーノートからマイルストーンに移籍して出したワンホーンの傑作で、これも名曲《インヴィテーション》では、ゴリゴリ吹きまくるジョーヘンの魅力が全開だ。
92年の『ソー・ニア・ソー・ファー』(Verve)はマイルスの死を悼んだ作品で、マイルスにちなんだ曲が捧げられている。ジョー・ヘンダーソンはマイルスとの正式な録音は残っていないが、彼もまたマイルスの影響を受けたミュージシャンだけに、真摯な哀悼の意が伝わってくる。
最後のアルバムは冒頭に書いた80年代新生ブルーノートへの記念すべき吹込みで、由緒あるジャズクラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」でのライヴ・レコーディングなのもブルーノート的だ。60年代のアルバム『インナー・アージ』でも吹き込まれている自作曲《アイソトープ》を再演しているが、こちらはライヴだけに10分に及ぶ長尺演奏。20年後の演奏であるにも関わらず、パワーはまったく落ちていないどころか、表現の深みはむしろ増している。
コルトレーンのように派手なところがないのであまり知名度が高いとは言えないが、ジョー・ヘンダーソンが現代テナー奏者に与えた影響は思いのほか大きい。

【掲載アルバム】
ジョー・ヘンダーソン『モード・フォー・ジョー』(Blue Note)
ジョー・ヘンダーソン『インナー・アージ』(Blue Note)
ジョー・ヘンダーソン『テトラゴン』(Milestone)

火曜日 22:00~ 2時間番組

水曜日 22:00~

マイルス・デイヴィス『フォア&モア』(Columbia)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第70回
「『一生モノのジャズ名盤500』を聴く」 その1「新・これがジャズだ!」(再放送)


このたび小学館新書から『一生モノのジャズ名盤500』という本を出しました。実を言うと、この新書は有線放送のこの番組が下敷きとなっているのです。
「D/H-51 ジャズ喫茶いーぐる」は、私の経営するジャズ喫茶「いーぐる」の選曲をそのまま流しています。ジャズ喫茶の選曲は、ジャズ好きのお客様にそれぞれのミュージシャンの個性を堪能していただくと同時に、長くおいでになっても飽きられないよう、それなりの工夫をしています。
簡単にご説明すると、アナログ時代の片面単位で、音楽の自然な流れとメリハリのバランスをとりながら、ジャズをお楽しみいただくわけです。こうしたプログラムを組むためには、膨大な数のジャズアルバムの「聴いた感じ」をあらかじめ掴んでおき、それぞれ「似た傾向のアルバム」を一まとめにして、メモしておく必要があります。この「聴いた感じ」は、ジャズの解説書に出てくる“ハードバップ”だとか“モードジャズ”という用語とは必ずしも一致しません。
ところでジャズ喫茶では、お客様からのご質問でもっとも多いのが、「今かけているアルバムに似た感じの演奏を教えてください」というものなのです。やはりお客様は“モード”だとか“クール”といった「ジャズ用語」で音楽を聴いているわけではないのですね。
こうしたとき、「似た傾向のアルバムメモ」が役に立つのです。マイルス・デイヴィスの『フォア&モア』(Columbia)が気に入られたお客様には、もちろんマイルスの他のアルバムをご紹介しても良いのですが、たとえば今回ご紹介するハービー・ハンコックの『エンピリアン・アイルズ』(Blue Note)などにも、自然に入っていかれることが多いのです。
つまり、さまざまなタイプの演奏を気に入られたお客様それぞれに、単に同じミュージシャンのアルバムを推薦するだけでなく、より広範囲から「似た感じ」の演奏をご推薦できるというわけなのです。そしてその「さまざまなタイプ別演奏」500枚を、わかりやすく解説したのが『一生モノのジャズ名盤500』なのです。
今回から、同著の「タイプ別、似た傾向アルバム」をご紹介するシリーズを始めさせていただきます。第1回の「新・これがジャズだ!」は、なにか新しい仕事に手を付けるときなどに聴くと、全身に気合が入る演奏ばかりです。前述の『フォア&モア』などはその代表で、嫌でも気持ちが前向きになりますね。
また、チック・コリアの名盤『リターン・トゥ・フォエヴァー』(ECM)で一躍有名になったジョー・ファレルの『スケート・ボード・パーク』(XANADU)は、彼の知られざるオーソドックスな演奏が聴ける名演で、サイドのチックもいい演奏をしています。そして『エンピリアン・アイルズ』は現代ジャズの源流ともなった名盤で、この時期(60年代)のフレディ・ハバードの切れ味が聴きどころです。
サム・リヴァースの『フューシャ・スイング・ソング』(Blue Note)は、ちょっとフリーっぽいところもありますが、今ではごく自然に聴けるはずです。『ラヴ・ダンス』(Muse)は、才能がありながらいまひとつ知名度的にマイナーなウディ・ショーの70年代の作品で、フュージョンっぽいところが懐かしい。最後にご紹介するフィル・ウッズの『アライヴ・アンド・ウエル・イン・パリ』(Pathe)は、彼の記念すべきヨーロピアン・リズム・マシーンの第一作です。これも定評のある名盤です。

【推薦アルバム】
マイルス・デイヴィス『フォア&モア』(Columbia)
ハービー・ハンコック『エンピリアン・アイルズ』(Blue Note)
フィル・ウッズ『アライヴ・アンド・ウエル・イン・パリ』(Pathe)

水曜日 22:00~ 2時間番組

木曜日 22:00~

『セロニアス・モンク・ウイズ・ジョン・コルトレーン』(Jazzland)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第84回
「サイドマン聴きシリーズ」 その2・ジョン・コルトレーンその2(再放送)


同い年の大物、マイルス・デイヴィスに比べて遅咲きのコルトレーンは、1950年代に多くのアルバムにサイドマンとして参加しています。時代が時代だけに、そのほとんどがハーバップ・アルバムなので、ジャズを聴き始めたばかりの方でも耳なじみが良いのではないでしょうか。ですから、ある意味では「コルトレーン入門編」としてはかっこうのセレクションでもあるのです。
1枚目はいわずと知れたマイルス・デイヴィスの大傑作、いわゆる「ing4部作」の中でももっとも出来がよいのではないかと言われている『リラクシン』(Prestige)です。やはり御大マイルスの方が役者が上なのですが、少々荒削りながらエネルギッシュに迫るコルトレーンの演奏には新人らしい溌剌とした気迫が感じられます。
コルトレーンはマイルス・バンドの一員としてジャズファンの注目を集めましたが、麻薬常習でバンドを首になってしまいます。また、この頃はいまひとつ演奏にまとまりを欠くこともあったのですが、それはまだ音楽理論に精通していないからでした。そんなコルトレーンに救いの手を差し伸べたのがセロニアス・モンクです。
コルトレーンはモンクのバンドで音楽理論をみっちり叩き込まれ、今まで以上に自信を持って演奏に望むことができるようになったのです。この時期のモンク、コルトレーン・カルテット『セロニアス・モンク・ウイズ・ジョン・コルトレーン』(Jazzland)には、複雑なフレーズをやすやすと吹きこなすコルトレーンの雄姿が記録されています。
ハードバップ・テナーの第一人者、ジョニー・グリフィンを筆頭に、コルトレーン、ハンク・モブレイの3人のテナー奏者が妙技の限りを尽くす『ア・ブローイング・セッション』(Blue Note)は、ハードバップ・ファンなら一聴しただけで購入を決定することでしょう。メンバーも素晴らしく、トランペットはジャズ・メッセンジャーズで名高いリー・モーガン、そしてピアノはマイルス・バンドのサイドも務めたウイントン・ケリーとくれば、もう言うことはありません。
ジャズでは珍しい楽器、チューバを吹くレイ・ドレイパーの『ザ・レイ・ドレイパー・クインテット』(New Jazz)は選曲もユニークで、有名なシャンソン《パリの空の下》が取りあげられています。途中でクラシックの名曲が挿入されるのも面白い趣向。音域が低くいささか鈍重なチューバと、軽やかなコルトレーンのサウンドの対比が聴き所です。
マイルス・バンドの名脇役、レッド・ガーランドをリーダーに据えた『ソウル・ジャンクション』(Prestige)は、ドナルド・バードの輝かしいトランペットとコルトレーンの力強いテナー・サウンドが実にいいアンサンブルを醸し出しています。まさに典型的ハードバップ2管サウンドですね。
少々異色なのがアレンジャー、ジョージ・ラッセルの意欲作『ニュー・ヨーク、N.Y.』(Decca)です。冒頭に繰り広げられるラップの元祖みたいなナレーションがニュー・ヨークの風景を勢い良く活写して始まる華麗なサウンドは、アート・ファーマーのトランペットにハル・マクシックのアルト、そしてコルトレーンにボブ・ブルック・マイヤーのトロンボーンが加わった豪華な4管編成。ピアノにはビル・エヴァンスが起用されています。
最後は名盤の誉れ高い『ケニー・バレル・アンド・ジョン・コルトレーン』(New Jazz)です。アーシーなバレルのギターに乗って、コルトレーンが小気味良くドライヴしていきます。まさに名演にして名盤ですね。

【掲載アルバム】
『セロニアス・モンク・ウイズ・ジョン・コルトレーン』(Jazzland)
ジョニー・グリフィン『ア・ブローイング・セッション』(Blue Note)
『ケニー・バレル・アンド・ジョン・コルトレーン』(New Jazz)

木曜日 22:00~ 2時間番組

金曜日 22:00~

レッド・ガーランド『ア・ガーランド・オブ・レッド』(Prestige)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第117回
レッド・ガーランド特集(再放送)


1955年に結成された、伝説的マイルス・デイヴィス・クインテットの一員としてその名を知られた名ピアニスト、レッド・ガーランドは、バド・パウエルの系列に連なる典型的ハードバップ・ピアニストです。しかし、その特徴的な「球を転がす」ようなタッチはまさにワン・アンド・オンリーで、誰しも一聴して「これはガーランドだ」と聴き分けられる優れた個性の持ち主でもあります。もちろん、だからこそマイルスは彼をサイドマンとして起用したのでしょう。
彼は1958年までマイルス・コンボに在籍していましたが、その間プレスティッジ・レーベルと契約し、自分自身のリーダー作を吹き込むだけでなく、マイルス・コンボの同僚、ジョン・コルトレーンのサイドマンを務めていたりもします。面白いのは、そのコルトレーンを自分名義のアルバムではサイドマンとして使うなど、同時期に主役が入れ替わるような吹き込みが混在し、プレスティッジらしさが現れているように思います。
「プレスティッジらしさ」とは、同じような顔ぶれをスタジオに集め、とりあえずセッションを行ない、てきとうにリーダー名をつけて発売してしまうような、ある意味で「ジャジー」な感覚です。『ハイ・プレッシャー』(Prestige)は、そのコルトレーンにトランペットのドナルド・バードを加えた典型的ハードバップ2管クインテットで、いかにも50年代的な気分が好ましい。もちろんガーランドのピアノ・ソロがタップリ聴けるところは、やはり彼のリーダー作。
時代は一気に70年代に飛び、録音もドイツのMPSレーベルです。このアルバムを新譜で聴いた時はほんとうに驚きました。まず、当時すでに「伝説のピアニスト」と化していたガーランドの健在振りと、録音のせいなのでしょうか、まったくピアノの音色が変わっているところ。キラキラと輝かしいタッチは、プレスティッジ・レーベルでは聴けなかった新鮮さです。そしてもう一つの聴きどころはサイドのテナー奏者、ジミー・ヒースの好演ですね。このアルバムは「70年代ハードバップ・リバイバル」の先鞭となった傑作です。
そしてまた50年代に戻り、『ハイ・プレッシャー』と同じメンバーによる『ソウル・ジャンクション』(Prestige)を聴くと、時代の違いが浮き彫りになります。こちらの演奏はコルトレーンのソロもドナルド・バードの出番も十分に確保され、聴きようによっては誰がリーダーでもおかしく無い。うがった見方をすれば、金看板マイルスをコロンビア・レーベルに取られてしまったプレスティッジが、バードを代役に見立てた巻き返し作戦とも言えなくもありません。
そしてご存知、ガーランドの代表作『グルーヴィ』(Prestige)です。まさにピアノトリオによる名演。その秘密は何といっても、彼もまたマイルス・コンボの同僚、ポール・チェンバースの参加でしょう。ぐんぐんと演奏を前進させ活気を与え続けるチェンバースのベースは、それだけ聴いても充分気持ちがよい。『ディグ・イット』(Prestige)は『ハイ・プレッシャー』『ソウル・ジャンクション』と同一メンバーによる《ビリーズ・バウンス》の他に、チェンバースを迎えたトリオ演奏と、バードが抜けたカルテット演奏が収録されたアルバム。最後にご紹介する『ア・ガーランド・オブ・レッド』(Prestige)は、トリオによる初リーダー作で、こちらもチェンバースが参加しています。それだけに聴き応え充分な傑作となっています。

【掲載アルバム】
レッド・ガーランド『ザ・クオータ』(MPS)
レッド・ガーランド『グルーヴィー』(Prestige)
レッド・ガーランド『ア・ガーランド・オブ・レッド』(Prestige)

金曜日 22:00~ 2時間番組

[Recommend!] 土・日曜日 22:00~

『レム・ウィンチェスター・アンド・ラムゼイ・ルイス・トリオ』(アーゴ)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第261回
「シチュエーションで聴くジャズ」 第1回 「朝の目覚め、あるいは仕事始めのジャズ」


これまで「ジャズ喫茶のジャズ」シリーズを20回に渡ってお送りしてまいりましたが、今回から新たに「シチュエーションによって聴くジャズ」とでもいうべきコンセプトの番組を月に1回お届けしようと思います。
私たちはその日の気分、あるいは仕事が終わった後など、シチュエーションによって聴きたくなるジャズのセレクトも変えているようです。それは半分無意識の行動なのであまり選択基準を深く考えないものですが、今回のシリーズではある程度その中身を検証しつつ「状況別ジャズ・シリーズ」とでも言える番組をお送りするつもりです。
最初は手探り状況でもあるので、自分自身の体験に根差した番組です。それはジャズ喫茶で開店最初にかけるアルバム。最近はまたアナログ・ブームのようですが、私がジャズ喫茶を始めた60年代は当然CDなどなくすべてアナログ盤でした。
アナログ・プレイヤーはCDより使い勝手が難しく、針にホコリが付いていたりするとすぐに音が濁ってしまいます。ですからそれを開店時にチェックする必要がある。サックスなどでは、例えばベン・ウエブスターのようにあえて音を濁らせた効果を出すジャズマンもいるので、サックス・アルバムはテストに不向き。
音の濁りが一番目立つのはやはりヴァイブラフォンです。あの楽器は「音叉」にも似て浸透感のある透明な音が信条ですから、針が汚れていたりするとたちまち音の濁りが目立つんです。ものを叩いた音はそうした性質があるんでしょうね。そういう点ではピアノ線をハンマーで叩いて音を出すピアノの音もヴァイヴに近い。
というわけで私は開業当時、朝一番にはまずヴァイヴ、あるいはピアノ盤をかけてオーディオのチェックをしていました。そして気が付いたのですが、こうしたジャズは朝の目覚めに聴いてもジャスト・フィットなのですね。その気分を敷衍すれば、仕事始め、つまり少しづつ頭や身体を日常状態にフィットさせて行く「準備運動的ジャズ」としてもこれらは合っているんです。

最初はちょっと意外な組み合わせ、ピアノのラムゼイ・ルイスとヴァイブのレム・ウィンチェスターです。60年代ラムゼイ・ルイスはファンキーなアルバムでジャズ喫茶人気を博しましたが、この50年代の作品ではレム・ウィンチェスターと組んで渋い好演を繰り広げています。楽器編成で想像される通り、このアルバムは「モダン・ジャズ・カルテット」と同じ。そして音楽の傾向も似ているんです。聴きどころは亡きクリフォード・ブラウンのお馴染みナンバーを好演しているところ。
ギター・サウンドはグラント・グリーンのようにファンキーなテイストもありますが、70年代にECMから登場したパット・メセニーはECM的透明感のあるサウンドでギター・シーンに新風を吹き込みました。まさに朝に聴くに適した爽やか名盤です。
ギター、ピアノ以外にも多彩な楽器をこなすブラジルのミュージシャン、エグベルト・ジスモンティもECMサウンドにピッタリなミュージシャンです。今回収録したアルバムは冒頭にアマゾンの早朝の気配を表すかのような鳥の擬音で始まる傑作。
ヴァイヴ、ピアノでなくとも爽やか気分を盛り立てるのがアート・ファーマーのフリューゲル・ホーンです。カーラ・ブレイの名曲を採り上げたこのアルバムはいつ聴いても心が落ち着きますね。
あまり著名ではありませんがピアノのマリリン・クリスペルもまた優れたECM的ミュージシャンです。彼女ならでは独特な世界は嵌るとなかなか抜けられません。最後に収録したトミー・フラナガンの演奏はそろそろ頭脳も身体も温まった頃合いを見計らった純ジャズ・ピアノトリオの快適な演奏。これで今日も一日頑張るぞ!

《参考アルバム》
『レム・ウィンチェスター・アンド・ラムゼイ・ルイス・トリオ』(アーゴ)
パット・メセニー『ブライト・サイズ・ライフ』(ECM)
マリリン・クリスペル『アマリリス』(ECM)

土・日曜日 22:00~ 2時間番組

インフォメーション

ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

関連リンク

タイムテーブル

  • 月曜日

  • 火曜日

  • 水曜日

  • 木曜日

  • 金曜日

  • 土曜日

  • 日曜日

  • 19:00

    Night Time Shuffle

  • 20:00

    Night Time Shuffle

  • 21:00

    Night Time Shuffle

その他おすすめ番組
モダン・ジャズ

モダン・ジャズ黄金期からミディアム~アップテンポの作品を

ジャズ・ヴォーカル (スロー~ミドル)

モダン・ジャズ期のバラードを集めたヴォーカル・チャンネル

ジャズ・スタンダード

スロー~ミディアム・テンポのスタンダード・ジャズを集めて

JAZZ (diskunion)

ディスクユニオンが推薦する現代ジャズをピックアップ

バータイム・ジャズ

ほんのりと哀愁があり、ブルージーな印象を与える楽曲をセレクト

新規加入をご検討中のお客様

\ どこでBGMサービスをご利用ですか /

業種別サービス一覧