HOME / 加古 隆スペシャル・インタビュー


40thアニバーサリーを迎えたピアノの詩人=加古 隆。
今回、当チャンネルで特集放送を行うに当たり、
4月にリリースする2枚の新譜や、5月に開催するコンサートのこと
そして、これまでの音楽活動におけるターニングポイントなど、
自身の音楽観について語っていただきました。
詳しい放送内容はこちら

A-54 Piano Compilation

|放送期間|

4月中 土・日 22:00~ 2時間番組

新録とベスト、ふたつのCDをリリース

――4月24日に『QUARTETⅡ』がリリースされますね。

「加古隆クァルテット」のデビューアルバム『QUARTET』が出たのが2010年で、当初から、どんなに短くても最低3年間はこのグループを続けるという強い気持ちがありました。そして3年が経過し、さらに40周年と重なったこともあって、セカンドアルバムを出すことになったのです。デビュー盤の時は、最初のクァルテットとしてのアルバムなので、「パリは燃えているか」とか、「黄昏のワルツ」とか、僕の代表作をまず入れていきました。今回は第2作と言うこともあって、作品の選び方も少し変えてみました。この3年間のコンサートの中でずっと演奏してきて、“ここで音として残す時だな”と感じたものを選んだり、新作のために新しい曲も用意しました。この「テンペスト」という新曲は、まだコンサートで演奏したことがないので、5月のサントリーホールで行う演奏が初めてになります。
僕の作品はレパートリーが広くて、ピアノのソロは再演の機会も多いのですが、オーケストラ編成のものになってくるとなかなか再演される機会が少ないんです。でも、できるだけオーケストラのアレンジや要素を使って演奏したいという気持ちがあるので、このクァルテットはピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという編成にしたわけです。とてもクラシカルな編成なんですけど、実際のコンサートではクラシック的な配置にはしていません。それによって新しい響きを感じることができるし、古典的な室内楽ではない、もっと華やかなものになっているはずです。オーケストラやソロとは違った独特の響きがあるので、それもクァルテットの魅力ですね。


――『ANTHOLOGY』というベスト盤もリリースされますよね?

この『ANTHOLOGY』は2枚組で僕自身が選曲したものですが、面白いのは、1枚を全部ジャズ時代でまとめたことですね。長いことジャズの演奏はやっていないし、ファンの方からたまにはやってほしいとか言われるんですが(笑)、今それをもう一度やるというのは、僕自身ほとんど有り得ないと思っていて……。けれども、昔作った音楽自体は、今でもすごく好きなんですよ。それはいつまでも聴き継がれていって欲しいなと思っています。そういう理由もあって、1枚はジャズだけでまとめてみようと、これは初めてのことですね。ライヴでのかなり熱い演奏も入っています!
もう1枚は、ピアノのソロと映画やドラマなど映像のために書いた音楽、そういう切り口で選曲しています。当然代表作は入れたいという思いはあるので、70年代から、現在の一番近いところの作品まで出来るだけ入れるようにしました。



40年間の音楽活動を振り返る

――長年の音楽活動の中で、ターニングポイントと呼べるものはありましたか?

帰国後の1985年に、ジャズ評論家の野口久光先生から、誰でも知ってるメロディを1曲取り上げたらどうかと言われたことがきっかけで、イングランドの伝統民謡「グリーンスリーヴス」を題材にして作った「ポエジー」をコンサートで演奏しました。それまで僕は、結構前衛的なスタイルで即興演奏が中心だったんですが、「ポエジー」を取り上げたことで、シンプルで美しいメロディの持つ力というものを強く認識したんです。「ポエジー」を作っているときに初めて、即興ではなくメロディから生まれてくるものを譜面に書いていって、曲が1冊の楽譜になっていったんです。そういう意味で「ポエジー」は僕の音楽スタイルが変わっていくきっかけとなった曲であり、僕のピアノソロという世界を生み出してくれた曲でもあるわけです。そんなこともあって、今回の『QUARTET Ⅱ』でも「ポエジー」を録音してみました。これはヴァイオリンとピアノによる最新のアレンジですが、初演というのは先程お話しした1985年のソロ・コンサートで、こちらは『ANTHOLOGY』に入れました。ですから、同じ曲で全く違う雰囲気の演奏を楽しめると思いますよ。
それからもう1曲、ターニングポイントになったかなと思うのは「パリは燃えているか」。これはNHKで1995~96年に放送されたドキュメンタリー『映像の世紀』のテーマ音楽なんですが、僕の書いた作品のなかで、一番多くの方がメロディを耳にしたことのある曲だと思います。大きな反響をいただいたことで、そこから僕の映像音楽に大きな道が開けていくきっかけとなった曲ですね。


――映像音楽を作るときに意識すること、苦労することなどあれば教えてください。

映像音楽の作曲方法で大事なのは、最初から映像に捉われて作曲するのではなくて、もっと自分の中で絵を見ることだと思っています。台本を読み、自分の中で浮かんでくるイメージがあって、どういう音楽が必要なのか、まずそれを見つけるんです。最終的には、単純な言葉で自分の中でコンセプトを掴み取る。そのコンセプトから音楽を、曲を探し出します。曲はそのコンセプトに当てはまっているのが第一ですけど、当然のことながらいい音楽でなくてはなりません。僕にとっていい音楽というのは、自分のコンサートで取り上げることができるか、それをひとつの目安にしています。難しい部分というのは、コンセプトを掴み取ることができ、かつ、自分のコンサートでも弾ける曲を作るということですね。


――加古さんの中ではクラシックとジャズは、どのように繋がっているのでしょうか?

僕の中では共通するものはあったんですよ。ジャズといってもダンス音楽をやっていたわけではなく、かなり進んだジャズというか、クリエイティヴと呼ばれるジャズでした。そこには、現代音楽に通じるような響きとか、メロディや音の動きがかなりあったと思います。フリージャズを即興で演奏しているなかで、面白い部分に出会ったら、それをよく覚えておいて、次に作曲の時にそれを材料として音を組み立ててみるとか。そんな面白い展開はクラシックとジャズとの間でありました。


――好きな、または影響を受けたピアニストはいらっしゃいますか?

ジャズでは、一番聴いていたのはビル・エヴァンス。僕が高校・大学くらいの頃ですかね、一番心の深いところに入ってきたピアニストです。それまでのピアニストには出せなかった音の響きがあったし、ロマンティシズムというか、リリカルでとても内省的な音楽が僕は好きでした。
クラシックではたくさんの人を聴いていますけど、一番好きなのはホロヴィッツかな。あのダイナミズムに聴き惚れていましたね。僕もピアノを弾いているときには、早い時は誰よりも早く、優しい時は誰よりも優しく、甘い時は誰よりも甘くという幅に惹かれているほうでしたから、ホロヴィッツのそういうところが好きでした。



5月に開催するコンサートと新曲について

――5月26日のコンサートも、アニバーサリーと言うことで期待が高まります。

40周年としてやるわけですから、40年の歴史をきちんと感じられるのが大事なことです。“時代的にこの年代のものは弾きません”というのはちょっと違うだろうということで、ジャズ時代の曲もレパートリーに入れています。
もうひとつは編成ですね。長いこと僕の中心あったのはピアノソロ。そして、映像音楽の「パリは燃えているか」などのオーケストラ・サウンドをベースにしたものがあって、これまでだったら、そのふたつを用意して、年代をきちんと入れていけば良かったわけです。ところが、この3年間で僕が一番中心にやってきたことは、「加古隆クァルテット」です。今回のコンサートでソロ、クァルテット、オーケストラの3部構成にしたというのはそういう意味があります。
40周年ともなると、あの映画のテーマも、これも、あれもとやってると、それだけでコンサートが終わってしまうことになるので、今回初めて、さまざまな映画音楽をメドレーに作り直して演奏します。これは聴きどころといえるでしょう。


――最後に新曲「テンペスト」と「鎮魂歌」について教えてください。

「テンペスト」というタイトルは、レコーディングが終わって随分時間が経ってから付けたものです。ある楽想(アイデア)がずっと僕の中にあって、いつかそれをまとめたいと思っていたんですが、クァルテットであればどんな曲想であっても演奏できるはずなので、今回がいい機会だなと思いました。ピアノ四重奏の編成が一番ふさわしいと直観していましたから。そうして出来上がった曲は、激情感が頭から最後まで続いているんです。それで「テンペスト」(嵐)というタイトルになりました。
「鎮魂歌」という曲は、ピアノソロなんですが、『QUARTET Ⅱ』に入っています。これは去年の夏に、NHKの3Dドキュメンタリー番組『疾走!相馬野馬追~東日本大震災を越えて~』の音楽を手掛けたときに書いたものです。演出家の方から、この番組のテーマ音楽は、震災で亡くなった方への鎮魂の曲にしたいということで、相馬の方だけでなく震災で亡くなられたすべての方へ鎮魂歌のつもりで作りました。それを今回のアルバムでも録音したんです。こちらも今回のコンサートで演奏するので、みなさんぜひ聴いてください。

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