HOME / BGMのギモンWEB版|2017年1月号|音楽と脳——前編

With Musicで連載中の「BGMのギモン」がウェブ版コラムになりました。
音環境コンサルタントの齋藤 寛さんがBGMに関するちょっとした疑問や豆知識をわかりやすく解説します。

2017年1月号
音楽と脳——前編



先日、長野県の大町商工会議所が主催する「新たな文化的創造」というイベントに招かれ、「心にゆとりを〜音楽との上手な関わり方〜」というテーマで講演したのですが、今月は、その講演でも触れた、音楽と脳というテーマでお送りしたいと思います。

音楽とは、生きていく上で必ず必要だとは思えないにも関わらず、なぜか私たちの生活の周りに、常に存在しています。その理由について、脳と音楽という観点で考えてみるとヒントが見つかります。

多くの研究者の間でも「そもそも人間には生まれつき音楽を楽しむ能力がある」という点で概ね一致しています。音楽を聴いたり演奏したりすると、私たちの身体や脳は、気づかないうちに影響を受けているわけですが、これがなかなか特徴的なのです。脳科学的には、視覚に関することは視覚野で、言語に関することは言語野で処理されていると言われていますが、音楽に関しては「音楽野」という場所はなく——将来的には見つかるかもしれません——、脳のあらゆる場所が総動員して音楽を理解しようとしています。身体を動かす運動野や小脳、記憶を司る海馬、感情を司る扁桃体や楽器に触れたときの感覚を左右する触覚、楽譜を読むときには視覚野、というようにハイレベルな活動が行われているのです。

また、好きな音楽を聴いたり、演奏するときには、人間が生きていく上で必要な活動を司る大脳辺縁系という場所が刺激され、ホルモン分泌とともに「気持ちいい!」という感情が生まれます。大脳辺縁系とは、意識の上ではコントロールできない領域のもので、つまり音楽を聴いて快感を感じることはほとんど本能的なもので、理屈が入る余地がないようです。

なぜ、音楽はこんなにも脳の本能的な場所を刺激して、さらに快感を生むのでしょうか。太古の昔、音楽は生命力の証と捉えられていました。音楽を生み出す人は、生命力があり、魅力的に映ったのかもしれません。ミュージシャンがモテるのはそんなところに理由があるのではないでしょうか。それから、音楽は集団や組織をひとつにまとめるという機能があると言われています。応援歌や校歌、国家、子守唄など、多くの歌には心をひとつにする機能が働いていることが分かります。人間が生きていく上で、特定の集団をまとめるという機能はとても重要だったのでしょう。文字を持たない文化はあっても、音楽がない文化は存在しないと言われているのも頷ける話です。

BGMのギモンWEB版、次回は1月16日(月)公開予定です。お楽しみに!



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  • 齋藤 寛(さいとう・ひろし)

    音環境コンサルタント、音楽心理カウンセラー。商用BGMのコンサルティングや執筆活動で知られる。USENの「With Music(業務店用)」で「BGMのギモン」を連載中。著書に『心を動かす音の心理学〜行動を支配する音楽の力〜』(ヤマハミュージックメディア刊)がある。

    公式HP「BGMの心理学」
    http://www.otokan.com/