HOME / BGMのギモンWEB版|2016年10月号|楽器によってBGMの印象はどう変わる?――後編

With Musicで連載中の「BGMのギモン」がウェブ版コラムになりました。
音環境コンサルタントの齋藤 寛さんがBGMに関するちょっとした疑問や豆知識をわかりやすく解説します。

2016年10月号
楽器によってBGMの印象はどう変わる?――後編



メインパートを司る楽器によってBGMの印象がどう変化するのか?という考察の後編をお届けします。前編に続いて、ピアノとギターを例にとってお話ししましょう。

ピアノやギターはほとんどの人が名前も音色も分かるので、そういう意味ではリラックス系のチャンネルに使うのはマッチしています。聴いたこともない音は人はリラックスして聴くことは難しいので、ピアノやギターは自然と聴き入ることができていいですね。USENでは「I-08 ボサノヴァBGM」や、新番組の「I-18 ネオ・サーフ・ミュージック」がこうしたチャンネルの代表例と言えるでしょう。また、アルトサックスやチェロは人の声に近いので安心できるというような話を聞いたことがありますが、真偽のほどはともかくなかなか面白い考察だと思います。親近感のある音には安心感を抱く。異質な音には人間は警戒感を示しますので、誰もが知っている楽器というのは安心感がありますね。

つまり、ピアノやギターの音にリラックスさせる要素があるというよりも、誰もが聴いたことがある楽器でリラックスできる音楽を演奏しているということが一番の効果です。楽器が持っている音色というのは、沈静と活性のベクトルを持っていることは間違いありませんが、必ずしもそれだけでは判断できません。音楽なのに、テンポやリズム、音量が存在しないということはあるはずもなく、それぞれが共存してさまざまな印象を作り上げています。トランペットが高音を演奏したからといっても、その音がとても静かで柔らかく、そして減衰が遅く演奏したならそれらの特徴がトランペットの「元気な音」を打ち消し、リラックスできる音と認識されるのです。

音楽から受ける印象の中で、リズム、音量、そして音の高さが高揚感に影響することが分かっています。これらを変化させることで実際に人間の血流量が変わったという実験結果もあるほどです。リズムを一定にして、音量の変化が少なく、そして中庸的な音域で、親しみのある楽器で演奏すれば、間違いなくリラクシンでヒーリーなチャンネルの出来上がりです。音楽を構成する要素を同じベクトルに向けると、一層その印象が強くなります。ピアノやギターはどの方向にも持っていける万能の楽器といえそうです。特にピアノは音域も広く、その特徴を持ち合わせています。楽器の持つ音色を意識しながら、音楽そのものが持っている特徴とどう組み合わさっているのか、そんなことを考えながら音楽を味わってみるのも面白いでしょう。

BGMのギモンWEB版、次回は11月1日(火)公開予定です。お楽しみに!



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  • 齋藤 寛(さいとう・ひろし)

    音環境コンサルタント、音楽心理カウンセラー。商用BGMのコンサルティングや執筆活動で知られる。USENの「With Music(業務店用)」で「BGMのギモン」を連載中。著書に『心を動かす音の心理学〜行動を支配する音楽の力〜』(ヤマハミュージックメディア刊)がある。

    公式HP「BGMの心理学」
    http://www.otokan.com/