HOME / BGMのギモンWEB版|2016年3月号 | サティの“家具の音楽”とBGM——前編

With Musicで連載中の「BGMのギモン」がウェブ版コラムになりました。
音環境コンサルタントの齋藤 寛さんがBGMに関するちょっとした疑問や豆知識をわかりやすく解説します。

2016年3月号
サティの“家具の音楽”とBGM——前編



19世紀後半〜20世紀初頭にかけて活躍したフランスの作曲家にしてピアニストのエリック・サティ。ドビュッシーやラヴェル、ストラヴィンスキーたちと同じ時代に活躍した印象派を代表する芸術家です。サティは、いまでは当たり前のように使われているBGM(background Music)という概念を作った重要人物です。おそらく一番有名な曲「ジムノペディ」は誰もが一度は聴いたことがあると思います。耳に心地よい、作業や思考を邪魔しないイージーリスニング的な要素が強い曲ですが、当時はこの音楽の考え方が最先端とされていました。
サティは「家具のように、いつもそこにあって生活に溶け込み、かつ邪魔をしない存在。意識的に聴かれることがない音楽」という概念を生み出し、これを“家具の音楽”と呼びました。「家具の音楽」というタイトルがついた曲もありますが、思想やコンセプトとして語られることもあります。BGMに通じる概念は、当時とてもインパクトがありました。
当時のエピソードとして、『皆さまは音楽に気をとられず、あたかも音楽などは存在しないかのように、休憩時を過ごしていただきたいと思います。この音楽は、個人的な会話とか、飾り絵とか、皆さまの中でかけておられる方もあれば、かけておられない方もあるロビーの椅子などと同じ程度の役割しか果たしていないのですから』と要望書を掲げて、「家具の音楽」を発表したそうですが、演奏が始まると観客は静まり返って聴いてしまったと言われています。なかなか、意識させずに聴かせるというのは難しかったようです。
サティはこの「家具の音楽」の他にもさまざま表現方法を試みています。伝統的な西洋音楽のルールや考え方をどんどん変えていった、まさに異端児だったのです。
さて、後編ではサティのユニークな作品を紹介しつつ、現代のBGMにも受け継がれている彼の前衛性について解説します。

BGMのギモンWEB版、次回は3月1日公開予定です。お楽しみに!



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  • 齋藤 寛(さいとう・ひろし)

    音環境コンサルタント、音楽心理カウンセラー。商用BGMのコンサルティングや執筆活動で知られる。USENの「With Music(業務店用)」で「BGMのギモン」を連載中。著書に『心を動かす音の心理学〜行動を支配する音楽の力〜』(ヤマハミュージックメディア刊)がある。

    公式HP「BGMの心理学」
    http://www.otokan.com/