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D-51 ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお送りします。毎夜22:00~24:00の「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定で、後藤雅洋が執筆したコラムとともにジャズの魅力をお伝えします。

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月曜日 22:00~  『ジャズ・ジャイアンツ、これだけ聴けば大丈夫』 その10 ローランド・カーク

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ローランド・カーク『あふれ出る涙』(Atlantic)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第63回
『ジャズ・ジャイアンツ、これだけ聴けば大丈夫』 その10 ローランド・カーク(再放送)

ローランド・カークはテナーサックスの他に、サックスの仲間の楽器であるマンゼロとストリッチの3本のホーン楽器を同時に演奏することで有名だが、彼の才能はそうした曲芸的なテクニックだけに終わらない奥深さを持っている。幼児期の事故が原因で失明したカークは、失った視覚を補って余りある豊かな音の世界を私たちに示してくれる、優れた音楽家だ。
最初にご紹介するアルバムは『イントロデューシング』(Argo)とタイトルされているが、実際はリーダー2作目の作品。ここでのカークはオーソドックスなハードバップ・サックス奏者としての実力を遺憾なく発揮すると同時に、サイドにオルガンを入れることによって早くも彼の持ち味である「黒い世界」を描き出している。
1961年に録音された『ウィ・フリー・キングス』(Mercury)は初期の代表作。テーマを得意技、複数楽器同時演奏で魅力的にハモり、楽器をフルートに持ち替えソロをとる《スリー・フォー・ザ・フェスティヴァル》を聴けば、彼が同時に楽器を吹いたり、複数の楽器を使用するのは決して見世物的な芸ではなく、音楽的効果を狙ってのことだとわかるだろう。
もしかするとカークの演奏で一番有名なのは《ドミノ》かもしれない。シャンソンの曲をジャズマンが演奏した例はマイルスの《枯葉》が有名だが、カークの《ドミノ》も原曲の魅力を生かしつつカークのユニークな世界を描き出した名演だ。複数楽器同時演奏、楽器持ち替えワザが一段と冴え、完全に彼のトレードマークとなっていることがわかる。
もしチャンスがあればぜひカークの映像を見ていただきたいのだが、カークの音楽はジャズがまだ大衆芸能音楽だった頃のサービス精神、ユーモアがタップリと含まれている。とは言え、彼の凄いところは、聴衆サービスをしつつも決してジャズスピリットをないがしろにしていないところだ。そうしたカークのしたたかなジャズマン魂がライヴで炸裂した傑作が『カーク・イン・コペンハーゲン』(Mercury)で、ハーモニカとの掛け合いで聴衆を盛り上げる《ザ・モンキー・シング》など、ライヴハウスの熱気がじかに伝わってくる熱演。
カークの音楽がただ楽しいだけの芸能音楽ではなく、聴き手の心にじんわり染み通るしっとりとした味わいを持っていることを示しているのが、名盤『あふれ出る涙』(Atlantic)だ。イングリッシュホーンとテナーで演奏された《ブラック・アンド・クレイジー・ブルース》は、カークが自分が死んだときにはこの曲を演奏してくれと言ったそうだ。
1960年代後半、ジャズはロックによって押され気味だったが、もともと黒人大衆音楽の血筋を引き継いでいるカークは、リズム・アンド・ブルース的要素を大胆に取り入れ名盤『ヴォランティアード・スレイヴリー』(Atlantic)を発表した。とりわけ《アイ・セイ・ア・リトル・プレイヤー》の熱演はこのアルバムの白眉と言って良い。途中でジョン・コルトレーンの名演『至上の愛』の一節が引用されているが、コルトレーンの音楽とはまったく雰囲気が違っているのが面白い。
そしてカークの早すぎた晩年に残した、知られざる名盤が『カーカトロン』(Warner Bros.)だ。CD化が遅れたためあまり知名度は無いが、レオン・ラッセルの名曲《ジス・マスカレード》のしみじみとした味わいをお聴きになれば、カークの音楽の底の深さが実感されるだろう。

【掲載アルバム】
ローランド・カーク『ウィ・フリー・キングス』(Mercury)
ローランド・カーク『あふれ出る涙』(Atlantic)
ローランド・カーク『ヴォランティアード・スレイヴリー』(Atlasntic)

月曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

火曜日 22:00~  新譜特集 第23回

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ジュリアン・ラージ『モダン・ロア』(Mac Avenue)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第158回
新譜特集 第23回(再放送)

今回は初めての試みとして、昨年2017年のベスト盤を選んでみました。正確には2017年発売では無いものも少し混ざっていますが、要するに「私が昨年聴いたアルバム」ということでご容赦いただければと思います。個々のアルバムの内容については、末尾にこのコラムに登場した回を記しましたので、提示した回のコラムをご覧ください。
作ってみて驚いたのですが、数年前でしたらベスト5を選ぶのにも苦労したのに、今では簡単に10枚選べるばかりでなく、「次点」を作らざるを得ないほどなのです。また、いわゆるビッグネームが相対的に少ないのは、新人を積極的にご紹介したいという気持ちとともに、新人、そして相対的に知名度が低いミュージシャンのレベルが飛躍的に上がっていることの反映でもあります。

●2017ベスト盤
1, Kurt Rosenwinkel / Caipi (148回)
2, Kamashi Wasington / Harmony of Difference (154回)
3, The Passion of Charlie Parker (152回)
4, Chihiro Yamanaka / Monk Studies (151回)
5, Mamal hands / Floa (146回)
6, Ky / 心地よい絶望 (150回)
7, Rebecca Martin / The Upstate Project (150回)
8, Lizz Wright / Grace / Barley (154回)
9, Stephan Tsapis / Border Lines  (155回)
10, Ollie howell / Self-Identity (152回)
次点 Hamshire and Foat / Galaxis Like Grains of Sand (152回)

さて、今回のアルバムのご紹介に移りましょう。1枚目はカンザス・シティを拠点として活動する新人トランぺッター、ハーモン・メハリの『Blue』(自主製作)です。聴き所はサイドに参加したアルトのローガン・リチャードソン、ピアノ、キーボードのアーロン・パークスの活躍ぶりです。
2枚目はリトアニア出身のサックス奏者Kestutis Vaiginisの『Lights of Darkness』(自主製作)です。いわば「現代ハードバップ」とでも言うのでしょうか、オーソドックスな演奏がらその斬新なエネルギーはまさに21世紀。
そして昨年はセロニアス・モンク生誕100周年だったこともあり、様々なモンク・トリビュート作が出ましたが、『セロニアス・スフィアー・モンク』(Alph Pap)は、マルチ楽器奏者・プロデューサーであるマストこと、ティム・コンリーによる意欲作です。モンクの楽曲の想像力は21世紀のジャズ・シーンにも確実に届いているのです。
今話題の新人ギタリスト、ジュリアン・ラージの新譜『モダン・ロア』(Mac Avenue)は、彼の音楽的バック・グラウンドの広さを印象付ける軽快な作品。圧倒的なテクニックによるサウンドの万華鏡が心地よい。
そして大御所ビル・フリゼールの新作『ミュージック・イズ』(Okeh)は、何と18年ぶりのソロ・アルバムです。個人的体験ですが、私は90年代でしたか彼のアコースティック・ギターによるソロ・コンサートを観て、その音楽的センスの素晴らしさに圧倒されたのでした。今回の作品はその時の感動を彷彿させます。
最後にご紹介するのは、フランス領マルティニーク島出身のピアニスト、グレゴリー・プリヴァによる『ファミリー・ツリー』(ACT)です。彼はフランスの名ピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニに触発されてジャズ・ピアニストを目指したという経歴の持ち主で、切れの良いタッチとラテンのフレーヴァーが聴き所です。

【掲載アルバム】
マスト『セロニアス・スフィアー・モンク』(Alph Pap)
ジュリアン・ラージ『モダン・ロア』(Mac Avenue)
ビル・フリゼール『ミュージック・イズ』(Okeh)

火曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

水曜日 22:00~  新譜特集 第12回

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The Comet Is Coming 『Channel The Spirits』(Leaf)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第147回
新譜特集 第12回(再放送)

冒頭に少し宣伝をさせてください。私は2014年4月から『ジャズ100年』、2015年4月から『ジャズの巨人』、そして2016年5月から『ジャズ・ヴォーカル・コレクション』という、小学館から刊行されたCD付きムックの選曲・監修をさせていただいてます。隔週刊行それぞれ年に26巻、トータルで78巻もようやく終るかと思いきや、好評に付き今年の5月から半年12巻の「ヴォーカル編」延長が決まりました。わたくしごとながら、いまや何度目かの「ジャズ・ブーム」が到来していることがヒシヒシと実感されます。
それは新譜状況を見ても明らかで、今までに無い斬新なジャズ・グループが続々と登場しています。スナーキー・パピーは既にご紹介してきましたが、今回はその重要なメンバーであるキーボード奏者、ビル・ローレンスのロンドンでのライヴ・アルバム『ライヴ・アット・ユニオン・チャペル』(Verve)からの選曲です。サイドマンとしてスナーキーの主要メンバーであるベーシストのマイケル・リーグ、ドラムスのロバート・シアライトが参加していることでもわかるように、サウンドはかなりスナーキー的。
リーダーがマイケルなので当然ですが、彼の斬新な音楽性、キーボード・センスが堪能できます。シアライトの切れの良いドラミングも気持ちいいですね。マイケルはイギリス人ということもあり、スナーキーのもう一人のキーボード奏者、コリー・ヘンリーとは対照的な音楽的バック・グラウンドの持ち主。それが、スナーキーの音楽の多様性に大きく貢献していることがこのマイケルのリーダー作を聴くと良くわかります。
次にご紹介する「ザ・コメット・イズ・カミング」もイギリスのグループで、キーボード、テナー・サックス、ドラムスによるトリオ。彼らのアルバム『チャネル・スピリット』は、「リーフ」というヨークシャーに拠点を置くエレクトロニック・ミュージックのレーベルから出されているだけに、サウンドは極めて鮮烈かつアグレッシヴ。ともあれ、こうしたUK勢の「非アメリカ的」感覚が、ジャズに新風を吹き込んでいるのは間違いないようです。それにしても、楽器編成からは想像がつかないサウンドではあります。
ぐっと雰囲気が変わってジョン・ゾーン名義のアルバム『オン・リーヴス・オブ・グラス』(Zadic)は、ゾーンの楽曲を「メデスキ・マーチン・ウッド」のピアニスト、ジョン・メデスキとケニー・ウォルセンのヴァイブを、ジョーイ・バロンのドラムスらが支える落ち着いた演奏です。この、懐かしいようなそれでいてちょっとエキゾチックなサウンドは心地良いですね。ゾーンの作曲センスはやはりユニーク。
ギタリスト、ライアン・ブロトニックの新作『クッシュ』(Songline)は、異色のサックス奏者マイケル・ブレイクの参加が効いています。ブロトニックのギターは地味ながら聴くほどに味わいが出るタイプ。じっくりと聴き込みたいですね。
ご存知アントニオ・サンチェスの『スリー・タイムス・スリー』(Cam Jazz)は、彼がブラッド・メルドー、ジョン・スコフィールド、そしてジョー・ロバーノの3人をそれぞれゲストに迎えたトリオ演奏で、今回はジョンスコとの共演トラックを収録しました。
最後にご紹介するのはベテラン、ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィの2014年の録音『ダブル・サークル』(Cam Jazz)です。新進ギタリスト、フェデリコ・カサグランデとのデュオ作品で、ピエラヌンツィがいいのは言うまでもありませんが、カサグランデのギターが凄い。これは名演です。

【掲載アルバム】
The Comet Is Coming 『Channel The Spirits』(Leaf)
John Zorn 『On Leaves Of Grass』(Zadic)
Enrico Pieranunzi 『Double Circle』(Cam Jazz)

水曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

木曜日 22:00~  新譜特集 第36回

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エリック・ドルフィー『ミュージカル・プロフェット』 (Resonance)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第171回
新譜特集 第36回(再放送)

今回の新譜特集は、それぞれ貴重な発掘音源と復刻音源です。最初にご紹介するのは、1973年にチャールス・ミンガスがデトロイトのジャズ専門ラジオ局のためにレコーディングした『ジャズ・イン・デトロイト』(Strata) です。この時の録音は5本のテープに記録され、すべてが未発表でした。今回発売されたアルバムは、それぞれのテープに対応するCDが5枚収録されています。すべてに共通するメンバーはミンガスの他、サックスにジョン・スタブルフィールド、トランペット、ジョー・ガードナー、ピアノ、ドン・プーレン、そしてドラムスがロイ・ブルックスのクインテットです。聴き所は25分に及ぶ名曲「直立猿人」のでしょう。
そして2枚目の未発表録音は、ミンガス・グループに在籍していたこともあるサックス奏者、エリック・ドルフィーの貴重な発掘音源『ミュージカル・プロフェット』 (Resonance)です。このアルバムは3枚組CDで、すべてアラン・ダグラスがプロデュースした音源。1枚目と2枚目はFMレコードから既発の『カンヴァセーション』と、ダグラス自身のレーベルから出された『アイアン・マン』。そして残る1枚がブルーノートに残された『アウト・トウ・ランチ』直前のドルフィーの姿を捉えた貴重な未発表音源です。
「和ジャズ」が独特の視点からイギリスで注目を集めていることはご承知かと思いますが、イギリスの発掘コレクター、トニー・ヒギンスとマイク・ぺデンが監修した3枚組アナログ盤『J JAZZ』(BBE)は、今回収録した松風紘一トリオや森山威男のほか、1964年から84年にかけての「和ジャズ」の希少名演を選りすぐっています。これらの演奏は21世紀の今でも独特の香りを漂わせています。
ピアニスト相澤徹の名前はまったく知らなかったのですが、それもそのはず、今回収録した橘郁二郎が自主制作したアルバム『Tachibana』 (ウルトラ・ヴァイヴ)は、当初200枚ほどしか製作されなかったそうです。メンバーは相澤のピアノの他、サックスが森村恭一郎、ドラムス森村哲也の森村兄弟に、渡辺好造のベースによるカルテット編成。かつての日本ジャズ・シーンの熱気を今に伝える熱演が素晴らしく、マニアが必死になって探したというのも納得です。彼らの演奏は先ほど紹介した『J JAZZ』にも収録されており、むしろイギリス人の方が日本の知られざる名演に対する関心は高いことが知られます。イギリス発ジャズというとクラブ・シーンを連想する方が多いようですが、こうしたシリアスな演奏にも目が向けられているのですね。
そしてやはりイギリスのBBEから出された森山威男の『East Plants』も聴き応えがある快演です。録音は1983年で、メンバーはドラムスの森山の他、榎本修一、井上淑彦がサックス、定成庸司のパーカッション、そしてベースは望月英明です。それにしても森山のドラミングはすさまじいですね。かなり異色の作品ながら、こちらも日本ジャズの熱気を今に伝える名演と言っていいでしょう。
そして最後に収録したのは、北海道在住のピアニスト福居良が1976年にトリオ・レコードに残した幻のファースト・アルバム『Scenery』(JAZZ)です。ごく自然ながらオリジナリティにあふれ、まさに名演と言っていいでしょう。聴き所は、繊細でありながら表情豊かなピアノのタッチですね。ノリも良く、オーソドックスなピアノ・トリオ・ファンに安心してお勧めできるアルバムです。

【推薦アルバム】
エリック・ドルフィー『ミュージカル・プロフェット』 (Resonance)
相澤徹『Tachibana』 (ウルトラ・ヴァイヴ)
福居良『Scenery』(JAZZ)

木曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

金曜日 22:00~ 新譜特集 第55回

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イマニュエル・ウィルキンス『オメガ』(Blue Note)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第191回
新譜特集 第55回(再放送)

新譜紹介の目標は、現在の活性化しつつも多様なジャズシーンの「傾向」や「伝統的ジャズ」との繋がりを聴き取れれば、というところにあります。それと同時に、今一つ「現代ジャズ」に馴染めないとおっしゃるベテラン・ジャズファンの方々に、「今どきのジャズ」の面白さをお伝えできればという願いも込め、毎回さまざまな新譜をご紹介してきました。そういう意味で、今回はその良いサンプルとなるようなアルバムに恵まれたと言えるでしょう。
最初にご紹介するイマニュエル・ウィルキンスのデビュー作『オメガ』(Blue Note)などは、まさにベテランファン向けのアルバムではないでしょうか。彼は今回もご紹介する話題のヴァイブ奏者、ジョエル・ロスのブルーノート・デビュー作『Kingmaler』(以前このコーナーに登場)にサイドマンとして参加していた期待のアルト奏者。
まだ22歳の彼はジュリアード音楽院出身で、注目のトランぺッター、コンポーザー、アンブローズ・アキムシーレや一世代上のピアニスト、ジェイソン・モランらの薫陶を受け、今回のデビューに繋がりました。
聴き所は何と言っても彼の気合の入ったアルトソロでしょう。伝統的ジャズマニアはソロ中心に聴く傾向が強く、そうした方々にも違和感なく彼の魅力が伝わるはずです。おそらくは、現在も続くブラック・ピープルに対する不当な扱いに対する彼の想いが、演奏に力と一貫性を与えているのでしょう。そういう意味では、音楽の傾向こそ異なれど、ジョン・コルトレーンなどの情熱的演奏の伝統に連なっていると考えることも出来るのではないでしょうか。お奨めです。
ある意味でウィルキンスの行き方とは対照的なのが、こちらも注目のサックス奏者、ベン・ウェンデルの新作『High Heart』(Core Port)です。彼はロックやR&B、ヒップホップなどさまざまな音楽ジャンルで活動する音楽的集合体「ニーボディ」に参加していたことでもわかるように、エレクトロニクス・サウンドも積極的に導入しているミュージシャンです。
聴き所はマイケル・マヨのヴォイスを取り入れた広がりのあるサウンドでしょう。この、「人の声」を積極的に取り入れるというのはまさに現代ジャズの大きな特徴で、それぞれ音楽的傾向こそ異なれど、カマシ・ワシントンやカート・ローゼンウィンケルが大きな成果を上げていますね。
そして何より広がりのあるサウンドから飛び出すウェンデルのサックス・ソロが力強い。加えてシェイ・マエストロ、ジェラルド・クレイトンのピアノの冴えも、伝統的ファンをうなずかせるに充分です。
一転してベテランギタリスト、ピーター・バーンスタインの新作『What Comes Next』(Smoke)は心にしっとりと沁み入る落ち着いた演奏ですが、彼がこれを吹き込んだのはコロナ禍の真っ最中。よく聴けばタイトルが示す現代の混沌とした気分が伝わってくるようです。
そして前述のジョエル・ロスの第2弾『Who Are You?』(Blue Note)は、ヴァイブジャズの常識を覆すと同時に、現代ジャズの特徴を表した傑作です。緻密に組み上げられたサウンドとソロの有機的結合が聴き所です。
もしかするとユニークなサウンドのコルネット奏者、ロン・マイルスの新作『レインボウ・サイン』(Blue Note)は、はじめはスピーカーに対峙するような聴き方でなく、ハーブティーでも飲みつつゆったりとB.G.M.的に聴いてみるのが良いかもしれません。そのうち、何とも不思議な浮遊感のあるロンのコルネット・サウンドや、懐かしくも奇妙な曲想に次第に心が惹かれて行くのではないでしょう。こうした、過去を想起させるような音楽的趣向もまた、現代的なのです。
最後にご紹介するアフリカ、ベニン出身のギタリスト、リオーネル・エルケの新作『H H』(EDN)は、彼をシーンに紹介したハービー・ハンコックのカヴァー集。よく知られたハンコックの楽曲が思いもしなかった姿に変容するさまは圧巻です。まさに現代の「ニュー・スタンダード」ですね。

【掲載アルバム】
イマニュエル・ウィルキンス『オメガ』(Blue Note)
ベン・ウェンデル『High Heart』(Core Port)
ジョエル・ロス『Who Are You?』(Blue Note)

金曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

[Recommend!] 土・日曜日 22:00~  新譜特集 第66回

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テレンス・ブランチャード『Absence』(Blue Note)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第202回
新譜特集 第66回

前回も触れましたが、毎月入手する新譜の内容はアトランダムなので「総評」的なコメントは難しいのですが、それでもなにがしかの傾向はあるものです。今回はベテラン、中堅、新人ともに、注目されていたミュージシャンたちがそれぞれ興味深い新作を発表してくれたなという感想を持ちました。
テレンス・ブランチャードは80年代初頭にアート・ブレイキー・バンドでデビューした新人の頃から知っていますが、1962年生まれといえば来年は還暦を迎える大ベテラン。その彼が今回3年ぶりに引っ提げたニュー・アルバム『Absence』(Blue Note)は、ジャズ・ジャイアンツ、ウェイン・ショーターへのオマージュです。
ショーターの音楽性の中にはSF的とでも呼べる要素がありますが、今回のブランチャードのアルバムはそうした気分を彷彿させる内容で、ストリングスの使用を含め聴き手の想像力を羽ばたかせるスケールの大きな作品に仕上がっています。
ケニー・ギャレットもまた新人発掘の名人アート・ブレイキーのバンド出身で、その後あのマイルス・バンド最後のサックス奏者となったレジェンドであると同時に、現代ジャズ・シーンでも大きな存在感を示している注目ミュージシャンです。
今回のギャレットの新作『Sound From The Ancestors』(Mack Avenue)は、クールなテイストが聴き所だったブランチャード作品とは対照的に、明るく開放的なサウンドが心地よく、本人のサックスが前面にフィーチャーされた直球ジャズといっていいでしょう。とは言え、バック・サウンドの多彩さはタイトルに示された「先祖たちのサウンド」どおり、ジャズがアフリカン・アメリカンの伝統・文化に連なるものであることを実感させてくれます。
次にご紹介するのは文字通り注目の新人女性ハープ奏者、ブランディ・ヤンガーのインパルス、デビュー作『Somewhere Different』です。一般的にハープはジャズの中心楽器では無いと思われていますが、ジャズ史を紐解けばドロシー・アシュビーやアリス・コルトレーンが、ハープならではのサウンド効果でジャズに新風を吹き込んで来たのです。
確かにハープの音色が醸し出すユートピア的サウンドは、ハードなジャズにもドリーミーな気分を与えてしまう絶大な効果がありますね。ブランディの新作はそうした効用を全面的に意識したもので、「どこか違うところ」というタイトル、楽園をイメージさせるジャケットとともに、とにかく聴き手の気持ちを「コロナ禍で荒んだ気分を転換させよう」という明確な意思が感じられるのです。理屈抜きに楽しめ、心が和む傑作と言っていいでしょう。
説明の要もない大物ギタリスト、パット・メセニーの新譜『Side Eye NYC』(Modern Recordings)は、タイトル通り彼のニュー・プロジェクトSide Eye によるもの。そのコンセプトは、若手ミュージシャンを起用し彼の過去の楽曲に21世紀的新解釈を加えたり、新人たちのために新曲を提供するというもので、メセニーがジャズの伝統の継承に意を注いでいることが聴き取れます。
メセニー日本デビュー・アルバムに収録された印象的な名曲「ブライト・サイズ・ライフ」や、メセニーの意外とも言える側面オーネット・コールマンの「ターン・アラウンド」などが披露され、それを暖かく迎える聴衆の反応はまさにジャズ文化の継承を実感させますね。
どこへ向かうのか判然としないながらもジャズの未来を想像させる新人ミュージシャンがジェームス・フランシーズではないでしょうか。ピアニストであると同時にコンポーザー、プロデューサーでもあるフランシーズの音楽は、とにかく「枠」がない。とは言え、今回の新作『Purest Fprm』(Blue Note)では、彼のピアニストとしてのずば抜けた才能が思う存分発揮されています。それがあるため、いかに奔放にふるまおうとも彼の音楽は否応もなく「ジャズ」なのですね。
実は今回個人的に一番心に残ったのが未知のミュージシャン、レミス・ランチースの『パヴェイユ』(インパートメント)でした。調べたところ彼はリトアニアのマルチ・サックス奏者だそうですが、そのほかのバック・グラウンドはまったく不明。エスニックな要素、フォーキーなムードこそあれ、本人のソロからは音楽に対する真摯なパッションが素直に伝わってくるのです。
ブランディ・ヤンガーの音楽が「コロナ禍の癒し」でもあると書きましたが、ランチースのこのアルバムも、音楽の方向性こそブランディとは異なれど、安心して音楽に浸れるという点ではまさに「今聴きたい音楽」の一つと言えそうです。

【掲載アルバム】
テレンス・ブランチャード『Absence』(Blue Note)
ブランディ・ヤンガー『Somewhere Different』(Impulse)
レミス・ランチース『パヴェイユ』(インパートメント)

土・日曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

インフォメーション

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■ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

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