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D-51 ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお送りします。毎夜22:00~24:00の「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定で、後藤雅洋が執筆したコラムとともにジャズの魅力をお伝えします。

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月曜日 22:00~  『ジャズ・ジャイアンツ、これだけ聴けば大丈夫』 その5 アート・ペッパー

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アート・ペッパー『サーフ・ライド』(Savoy)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第58回
『ジャズ・ジャイアンツ、これだけ聴けば大丈夫』 アート・ペッパー(再放送)

おそらく、もっとも日本人好みのミュージシャンはアート・ペッパーではなかろうか。独特の哀感が込められた彼のアルトサウンドは、60年代ジャズ喫茶で多くのファンを獲得した。1970年代、ほとんど事前の告知も無くサイドマンとして来日したとき、ファンは暖かい声援で彼を迎えた。麻薬中毒の噂が絶えなかったペッパーは、当時半ば引退状態だと思われていたが、昔からの熱心なファンは彼の存在を忘れてはいなかったのだ。
『サーフ・ライド』(Savoy)は、典型的ウエストコーストの白人ミュージシャンであるペッパー初期の傑作で、確実なテクニックに裏付けられた快適な演奏は、ウエストコースト・ジャズの傑作として知られている。とりわけ、レスター・ヤング作曲の《ティックル・トゥー》は軽やかな名演。
『マーティ・ペイチ・カルテット・フィーチャリング・アート・ペッパー』『アート・ペッパー・カルテット』の2枚は、ペッパー初期の名盤にもかかわらず、共にタンパというマイナーレーベルに録音されていたため、かつては非常に入手が難しかった。《あなたと夜と音楽と》《ベサメ・ムーチョ》など、よく知られた名曲がペッパーならでは深い情感を湛えた演奏で聴くことが出来る。
ウエストコースト・ジャズのもう一人のスター、トランペットのチェット・ベイカーと共演した『プレイボーイズ』(Pacific Jazz)は、アンサンブルの妙が聴き所であるウエストコースト・ジャズの名盤として知られている。3管テーマから各自のソロへの転換が実に滑らか。
50年代のペッパーには名盤が多いのだが、マイナーな会社が多かったため、昔はなかなか聴くことができなかった。イントロ原盤の『モダンアート』や、アラディン原盤の『ジ・アート・オブ・ペッパー』は、90年代になってようやく全容が知られるようになった。派手なところはないが、聴くほどに味わいのあるマニア好みの演奏である。《ブルース・イン》の抑えた表情、《ホリディ・フライト》の楽器の鳴りなど、彼が第一級のアルト奏者であることを示した名演だ。
一方、もう少し大きな会社であるコンテンポラリーの『ミーツ・ザ・リズム・セクション』は、昔からモダンジャズ入門アルバムとして広く知られ、とりわけ録音が優れていたことからオーディオマニアがこぞって買い求めていた。マイルス・コンボのサイドマンであるレッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズという当代一流の黒人ジャズマンを向こうに回し、一歩も引けをとらないペッパーは、もはやウエストコースト・ジャズの枠に収まらない大物の風格を備えている。
スタン・ケントン楽団出身のペッパーは、大編成との共演もお手のものだ。ウエストコーストの名手11人をバックに軽やかに吹きまくる『プラス・イレヴン』(Contemporary)は、明るいペッパーの代表作。
麻薬に溺れたペッパーは70年代に奇跡の復活を遂げる。その第一弾が『リヴィング・リジェンド』(Contemporary)だ。かつての繊細な演奏に馴染んでいたファンは、コルトレーンを思わせるようなフリークトーンを多用するペッパーの変容に驚かされた。復帰後のペッパーはエネルギッシュな活動を続けたが、黒人アルト奏者の大ベテラン、ソニー・スティットと共演したのが『グルーヴィン・ハイ』(Atlas)だ。大物同士の顔合わせながら息はぴったりと合っている。
比較的力強い演奏が多くなった晩年の作品の中で、ストリングスと共演した『ウインター・ムーン』(Galaxy)は、昔ながらの情感あふれたペッパーが聴ける。しみじみとした味わいはやはり年輪のなせる業だ。

【掲載アルバム】
アート・ペッパー『サーフ・ライド』(Savoy)
『マーティ・ペイチ・カルテット・フィーチャリング・アート・ペッパー』(Tampa)
チェット・ベイカー&アート・ペッパー『プレイボーイズ』(Pacific Jazz)

月曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

火曜日 22:00~  新譜特集 第19回

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カマシ・ワシントン『ハーモニー・オブ・デイファレンス』(Young Turks)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第154回
新譜紹介 第19回(再放送)

今回最初にご紹介するのは話題のテナー・サックス奏者、カマシ・ワシントンの最新ミニ・アルバム。タイトルは『ハーモニー・オブ・ディファレンス』(Young Turks)です。トータル30分強の長さなので全曲収録しました。期待たがわぬ傑作です。カマシの魅力が爆発しています。
彼の魅力は二つあると言えるでしょう。まずはサウンド・メーカーとしての才能です。コーラス隊をうまく使ったトータル・サウンドの構築力は驚異のデビュー・アルバム『ジ・エピック』(Brainfeeder) で実証済みですが、今回の作品でもその力量は遺憾なく発揮されています。アルバム後半の盛り上がりが圧巻です。
そしてもう一つの聴き所は彼自身のサックス演奏です。大きな流れで言えば、コルトレーンの影響を受けたファラオ・サンダースに似ているとも言えますが、やはり世代の違いか全体に明るくそしてクールなのです。クールと言っても決して熱気を欠いているわけではなく、極端な感情移入はせず、しかし自己主張は実に明快なのですね。
そして古からのジャズ・ファンが求める要素もちゃんと備えているのです。それは「覚えられる個性的なフレーズを持っていること」なのです。ジャズ・ファンはアドリブ、アドリブと言いがちですが、実は「あ、カマシだ」とわかるフレーズこそ求めているのですね。そしてそれは個性的表現を第一とするジャズの価値観そのものでもあるのです。
次にご紹介するのはアーシーな声が魅力のヴォーカリスト、リズ・ライトの新作『グレイス』(Concord)です。1曲目にはスタンダード・ナンバー《アラバマに星は落ちて》が収録されており、オーソドックスな歌唱力の確かさが印象的です。
話題のアルバム、ブルーノート・オール・スターズによる「アワー・ポイント・オブ・ビュー」(Blue Note)の1曲目は、ウェイン・ショーターとハービー・ハンコックをフィーチャーした《マスカレーロ》です。サイドを固めるのは、新進トランぺッター、アンブローズ・アキンムシーレ、テナーを吹くマーカス・ストリックランドにローズを弾くロバート・グラスパーらという陣容。2曲目に収録したのは、御大たちを除いた若手チームによる《ベイエナ》。新旧のブルーノート勢が結集した豪華なラインナップが魅力です。
そして上原ひろみの新作はジャズ・ハープ奏者、エドマール・カスタネーダとのモントリオール・ジャズ・フェスティヴァルにおけるライヴ録音です。カスタネーダの超絶技法を相手に、ひろみが自由奔放に弾ける様が小気味良い。彼女はどんなフォーマットでも自分の持ち味を引き出せるのですね。
地に足の付いた、そして底力を感じさせるテナー・サウンドが魅力のJD・アレンのアルバム『ザ・マタドール・アンド・ザ・ブル』(Savant)は、地味ながら聴くほどに味わいが増す作品です。ピアノレス・ワンホーンという渋いフォーマットで着実に聴き手を魅了させる力はなかなかのものです。
最後に収録したのは、前回もご紹介したチック・コリアのアルバム『ザ・ミュージシャン』(oncord)です。この作品は2011年に行われたチック70歳の誕生日を記念したライヴ・レコーディングで、今回はハービー・ハンコックとのピアノ・デュオのトラックをご紹介いたします。楽曲は《ドルフィン・ダンス》《カンタロープ・アイランド》といったおなじみのものです。

【掲載アルバム】
カマシ・ワシントン『ハーモニー・オブ・デイファレンス』(Young Turks)
ブルーノート・オールスターズ『アワー・ポイント・オブ・ビュー』(Blue Note)
リズ・ライト『グレイス』(Concord)

火曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

水曜日 22:00~  新譜特集 第8回

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ダニー・マッキャスリン『ビヨンド・ナウ』(AGATE)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第143回
新譜特集 第8回(再放送)

最初に収録したのは、突然の死が惜しまれたデヴィッド・ボウイの遺作『ブラック・スター』のバックバンドを務めたことで注目された、ダニー・マッキャスリンの新作『ビヨンド・ナウ』(AGATA)です。メンバーもキーボード、ジェイソン・リンドナー、ドラムス、マーク・ジュリアナ、エレクトリック・ベース、ティム・ルフェーヴルなど、その時のメンバーと重なり、デヴィッド・ボウイの作品も演奏していることもあって、サウンドは『ブラック・スター』の最新ジャズ版といった感じです。
思い出せば、ずいぶん昔にニューヨークの「55バー」で若き日のダニー・マッキャスリンの演奏を聴いたことがあるのですが、以来この人の進化は凄まじいものがあります。ごく大ざっぱに言えば、マイケル・ブッレッカーの影響を受けていると言えるのでしょうが、斬新なリズム、サウンド・コンポジションによって、まさしく「現代のジャズ」となっており、そこも含め、完全にオリジナリティを確立させたと言っていいでしょう。名演です。
BIGYUKIという名前でデビューしたニューヨーク在住のキーボード奏者、平野雅之の新作『グリーク・ファイアー』(Universal)は、現代性を感じさせつつも不思議な懐かしさも覚える独自のテイストが面白い。それにしても、ビッグユキというニックネームの由来が笑えます。バークリーの修行時代に、もう一人「ユキ」と呼ばれた日本人ミュージシャンが居たため、その人物と区別するため背の高い平野が「ビッグ・ユキ」と呼ばれたそうです。。彼はニューヨークを拠点とし、多くのセッションに引っ張りだこの注目株です。
3枚目に収録したアルバムは、今話題のノラ・ジョーンズの新作『ディ・ブレイクス』(Blue Note)です。久しぶりに彼女自身がピアノなどを弾き語りしているだけでなく、サイドマンがたいへんに豪華、一音だけで存在感のあるウエイン・ショーターがいくつかのトラックに参加しているのですね。また、採り上げた楽曲も非常に魅力的で、これはヒット間違いなし。実際、既にいろいろなところでこの新作が流れています。
マイルス・デイヴィスの残されたマスター・テープを自在に使い、ロバート・グラスパーがマイルスを現代に蘇らせた話題作が『エヴリシングス・ビューティフル』(Columbia)です。この作品の特徴は、素材がマイルスであっても、音楽自体はあまりマイルス・ミュージックを思い起こさせるようなテイストではなく、まさにグラスパーのスタイルになっているところでしょう。こうした発想はヒップ・ホップ以降の世代ならでは。
つい最近来日公演をしたトランペッター、クリスチャン・スコットが共同プロデュースしたことで話題となっているのが新人女性ヴォーカリスト、サラ・エリザベス・チャールズの新譜『インナー・ダイアローグ』(Concord)です。私も初めて彼女の歌声を聴いたのですが、これは素晴らしい。声の張り、テクニック抜群で、しかもたいへん個性的。間違いなく彼女はこれからの注目株となるでしょう。サイドマンとしてクリスチャン・スコット自身も参加しているところも聴き所です。
最後に収録したEMY・Trioの『Genesi』(le Havre)は2年ほど前の作品ですが、これは傑作です。哀愁を帯びた旋律が魅力的なブルガリアの民族音楽を取り入れたピアノ・トリオ演奏で、このところヨーロッパのジャズ・シーンに顕著なエスニック・テイストの見直しの流れに沿った作品と言えるでしょう。オーソドックスなフォーマットながら、エリス・デュフォーの演奏するピアノには、現代ジャズならではの斬新さが感じられます。

【掲載アルバム】
ダニー・マッキャスリン『ビヨンド・ナウ』(AGATE)
ノラ・ジョーンズ『デイ・ブレイクス』(Blue Note)
サラ・エリザベス・ジョーンズ『インナー・ダイアローグ』(Concord)

水曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

木曜日 22:00~  新譜特集 第32回

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Time Grove『More Than One Thing』(Ring)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第167回
新譜紹介 第32回(再放送)

このところUKジャズが注目されています。このコーナーでもシャバカ・ハッチングスなどのイギリスのジャズ・ミュージシャンたちを採り上げて来ましたが、今回冒頭でご紹介する『There is a Olace』 (Beat Record)もまた、サウス・ロンドンのジャズ・シーンを代表するニュー・グループ「マイシャ」のデビュー作です。マイシャはドラマーのジェイク・ロング率いる6人組グループで、注目すべきは女性版カマシ・ワシントンと呼ばれたサックス奏者ヌビア・ガルシアの存在です。
彼らの音楽は、かつてスピリチュアル・ジャズと呼ばれた60~70年代のファラオ・サンダースらの影響も受けつつ、ロンドンという多文化が混交した都市で生まれた音楽らしい斬新な発想が魅力になっています。2曲目に収録したタイトル曲はかつてドン・チェリーが演奏したナンバーで、こうした埋もれた名曲を採り上げるアイデアはなかなかアメリカのジャズ・ミュージシャンからは出てこないように思います。
2番目『More Than One Thing』(Ring)もまた話題のミュージシャンを大勢誕生させているイスラエル発のニュー・バンド、「タイム・グルーヴ」による新譜です。プロデューサーであるリジョイサーことユヴァル・ハヴキンがイスラエルの新人たちを終結した作品で、まさに現代ジャズの見本のようなクールで多彩なサウンドが心地よい。
次は、イタリアを代表するピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィがその才能を認めた新人、クラウディオ・フィリッピーニ率いるピアノ・トリオによる『Bifor The Wind』(Cam Jazz)です。オーソドックスなスタイルながら随所に見せるタッチの切れ味など、ピアノ・トリオ好きなら見逃せない実力の持ち主と言っていいでしょう。
そして昨年カート・ローゼンウィンケル率いる「カイピ・バンド」の一員として来日した、ブラジル・ミナスを代表するシンガー・ソング・ライター兼マルチ奏者、アントニオ・ロウレイロの6年ぶりの新作が『Livre』(NRT)です。サイドにはカート・ローゼンウィンケルや、以前このコーナーでご紹介したペドロ・マルチンスが参加しており、極上のミナス・サウンドが聴き所となっています。
今回の目玉はウェイン・ショーターのコミック付きCD3枚組大作『エマノン』(Blue Note)でしょう。一度実物を手に取ってご覧になることをお勧めしますが、ショーターが自ら推薦したコミック作家とのコラボ作品で、ショーターの思い描く世界がビジュアル化された魅力的なアルバムです。
もちろん音楽も壮大で、ストリングス・オーケストラを率いるショーターの作曲家としての才能が全面開花したスケールの大きな世界が繰り広げられています。バック・サウンドから浮かび上がるショーターのミステリアスなソロが聴き所で、その年齢を感じさせないイマジネーションの広がりには圧倒されるばかり。ちなみにタイトルの「エマノン」とは、ノー・ネームの綴りを逆さまにしたものです。
最後に収録したキース・ジャレットのソロ・ピアノ・アルバム『ラ・フェニーチェ』(ECM)は、2006年にベネチアのラ・フェニーチェ劇場で収録したもので、キースの即興演奏家としてのパフォーマンスが素晴らしい。それだけに聴衆の反応も熱狂的で、はるか昔、70年代から世界各地で繰り広げられたキースのソロ・ピアノに対する人気の幅広さを21世紀に伝えた名演と言っていいでしょう。

【掲載アルバム】
マイシャ『There is a Olace』 (Beat Record)
Time Grove『More Than One Thing』(Ring)
ウェイン・ショーター『エマノン』(Blue Note)

木曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

金曜日 22:00~ 新譜特集 第51回

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Bloto『Erozje』 (Astigmatic)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第187回
新譜特集 第51回(再放送)

今回最初にご紹介するBlotoはポーランドのグループで、どうやら「泥」という意味のようですね。実際ジャケットには日本語のひらがなで「どろ」と書かれています。そしてアルバム・タイトル『Erozje』(Astigmatic)の意味は「浸食」です。そしてこれもジャケットに大きく日本語で記されているので、最初てっきり日本のグループと勘違いしてしまいました。
彼らは、ポーランドの7人組音楽集団「EABS」のメンバーによるキーボード、ベース、ドラムス、そしてテナー・サックスによるカルテットで、2018年のEABSのツアーのセッションで誕生しました。今回のアルバムは、90年代のニューヨークをテーマにしたそうです。既成のイメージに収まらない奔放かつパンク的でもある刺激的なサウンドは、歴史的に大国ロシアとドイツに挟まれたポーランドならではの「地政学的緊張感」がもたらしているのかもしれません。
期待のピアニスト、アーロン・パークスのリトル・ビッグIIによる新作『Dreams of a Mechanical Man』(Ropeadope)は、グレッグ・デューイのギター、デヴィッド・ギンヤードのベース、トミー・クレインによるドラムスにパークスの華麗なピアノの旋律が絡むドリーミーなアルバムです。クールで透明感のあるサウンドはいかにも現代的ですね。
以前この新譜紹介に登場したママル・ハンズのメンバー、ピアノ奏者ニック・スマートとサックス奏者ジョーダン・スマートの兄弟による新チーム、Sunda Arc によるデビュー・アルバム『Tides』(Gondwana)は、クラシカルな要素とポスト・エレクトロミュージックを巧妙に接続させた現代UKジャズの一つの方向を示した作品と言えそうです。 さまざまな音楽的要素が絡み合う中から生まれる近未来SF的サウンドは、聴き手の想像力を活性化させると同時に21世紀ジャズの行方も示しているようです。
今やUKジャズシーンの重要人物となったサックス奏者、シャバカ・ハッチングスはさまざまなフォーマットで活動を行っていますが、今回ご紹介するのは南アフリカのミュージシャンたちを率いたシャバカ・アンド・ジ・アンセスターズによる新作『ウィ・アー・セント・ヒア・バイ・ヒストリー』(Impulse)です。
シャバカはカリブ海地域に住んでいたこともあって、ジャズのルーツの一つであるカリビアン・ミュージック的要素もありつつ、今回はよりルーツを遡った南アフリカ的サウンドが見事に現代ジャズとして結実しています。南アフリカと言えば、ユニークなジャズ・ミュージシャン、ダラー・ブランドを生んだ地域ですが、そうしたアフリカ経由のジャズ的要素とUKジャズの重要なサックス奏者の先輩、コートニー・パインが持つカリブ海的気分が複雑な形でシャバカの音楽に反映されているようです。
クイン・キルヒナーはシカゴ出身のドラマー、作曲家で、キューバでパーカッショニストに師事した後奨学金を得てニューオルリンズ大学に進学という変わった経歴の持ち主です。彼の音楽はフリージャズ的要素とカリビアン・サウンドの結合という、あまり例をみないスタイルで、今後の活躍が楽しみです。
そして最後に収録したのは、ジェームス・ブラウンの伝説的バンドThe J.B.’sで活躍したファンク・レジェンド、アルトサックス奏者、メシオ・パーカーの『Soul Food』(Funk Garage)です。これは理屈抜きに楽しめますね。こうして世界のさまざまな“ジャズ”を並べて聴くと、いまやジャズこそがワールドミュージックとして生き残っているのが実感として伝わって来ます。

【掲載アルバム】
Bloto『Erozje』(Astigmatic)
Shabaka & the Ancestors『We Are Sent Here By History』 (Impulse)
Quin Kirchner『The Shadows And The Lights』 (Impertment)

金曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

[Recommend!] 土・日曜日 22:00~  新譜特集 第62回

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グレアム・コステロ『Second Lives』(Garebox Record)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第198回
新譜特集 第62回

最初にご紹介するのはデイヴ・ホランド、ミンガス・ビッグ・バンドとの共演歴を持つトランぺッター、アレックス・シピアジンのワン・ホーン・カルテット・アルバム『Upstream』(Post-Tone)です。穏やかな表情の中にも繊細さを感じさせるシピアジンのトランペットの音色が魅力的ですね。オーソドックスなスタイルでありながら現代のニューヨーク・シーンを感じさせるスタイルが聴き所でしょう。
1964年生まれ、いまやベテランのアルト・サックス奏者、ビンセント・ハーリングの新作『Preaching to theChoir』(Smoke Sessions Record)も、アルト一本で勝負のワン・ホーン・カルテットですが、こちらは古き良き時代のスタイルを現代に蘇らせた剛腕アルバム。ウェス・モンゴメリーの名曲《Fried Pies》を外連味なくストレートに吹き上げる様は伝統的ジャズ・ファンの喝さいを浴びそうです。
とは言え、このアルバムも21世紀ジャズならではの切れ味がリズム・セクションの冴えに現れており、演奏全体を貫く躍動感はやはり現代ジャズですね。それにしても抜けの良いハーリングのアルト・サウンドの心地よさは格別です。
イギリスの音楽シーンが面白いのは、はるか昔から例えばロック・ミュージシャンとジャズマンの垣根が無いとか、伝統的なジャズが好まれる反面アヴァンギャルドな演奏家も輩出すると言った、良い意味での混交状況です。
現代においてもこの傾向は継承されていて、今回ご紹介するスコットランド出身のドラマーにしてコンポーザーでもあるグレアム・コステロの新作『Second Lives』(Garebox Record)でも、彼はノイズ、ロック、エレクトロニカといった多様な音楽体験を積んだ後、そうした隣接シーンのエッセンスをジャズを融合させる試みに挑戦しています。 ポイントは、スコットランド王立音楽院で優秀な成績を収めたというバック・グラウンドがあるためか、前述のさまざまな音楽要素がバラバラにならず、巧い具合に現代ジャズという入れ物に収まっているところですね。切れの良いドラミングの小気味良さも聴き所です。
私はこの「新譜特集」に収録するアルバムを選ぶとき、事前にはライナー・ノートの類にはあまり目を通しません。先入観を排するため「音」先行でトラックを選ぶようにしています。もちろん始めて聴く新人が多いので、この文章を書くときはライナーはじめネット上の情報を参考にしています。
そうした前提で今回一番感銘を受け、気に入り、しかし音楽のバック・グラウンドについてまったく予想がつかなかったのがミア・ドイ・トッドの『ミュージック・ライフ』(Rings)でした。素直で人間味を感じさせる魅力的でエキゾチックな歌声、ジャズでありながら過去のどんなカテゴリーにも入りそうもない音楽性。
収録後に、原雅明さんのていねいなミュージシャン・インタビューを含んだライナーを読みましたが、意外な事実を知ると、「なるほど」と腑に落ちるところが多々ありました。「声の魅力」は子供を持った親ならでは「優しさ」のようでもあるし、冒頭に収録した長尺の《Daugther of Hope》の不思議な力強さは、彼女が日本の「舞踏」から学んだ「危機の直前まで自分を追い込みむ」ことで、「声と感情が危機に立っている状態」を生み出しているということが理解できたのです。
しかし彼女が日系のハーフであることもわかりましたが、そこから大方の方々が想像するような「日本趣味」はまったく感じられず、それだけにミアの音楽の独自性が改めて実感されました。
台湾の新人ギタリスト、Ginこと林華勁の自主製作アルバム『Tri-polar Syndrome』(Feeling Good Music)はどういうわけかサイドマンが実に豪華なのですね。クリス・チークのテナーにイスラエルの新進ベーシスト、オル・バケットといった逸材を従え、Ginが伸びやかなギター・ソロを展開する新作は、台湾ジャズ・シーンの今後を大いに期待させる注目盤です。
今回ヴォーカル・アルバムが2枚になってしまい、どうしようかと思ったのですが、たいへん素晴らしい新人歌手なのであえて収録しました。サマラ・ジョイのデビュー作『サマラ・ジョイ』(Core Port)です。声良し歌よしオリジナリティありという三拍子そろった文字通りの大型新人です。良く知られたスタンダードを真正面から歌い上げ、誰にも似ていない好ましさを知らしめたのは大したもの。ベテラン・ヴォーカル・ファンにも自信をもって推薦できるお奨め盤です。

【推薦アルバム】
グレアム・コステロの新作『Second Lives』(Garebox Record)
ミア・ドイ・トッドの『ミュージック・ライフ』(Rings)
サマラ・ジョイのデビュー作『サマラ・ジョイ』(Core Port)

土・日曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

インフォメーション

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■ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

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