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D-51 ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお送りします。毎夜22:00~24:00の「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定で、後藤雅洋が執筆したコラムとともにジャズの魅力をお伝えします。

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月曜日 22:00~  『チェット・ベイカー特集 その2』

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チェット・ベイカー『チェッツ・チョイス』(Criss Cross)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第49回
チェット・ベイカー特集 その2 「後期チェット・ベイカー」(再放送)

実を言うと、私がチェット・ベイカーの魅力に開眼したのは80年代になってからだった。それまではウエストコースト・ジャズのスターの一人、ぐらいの認識しかなく、あまり積極的に彼のアルバムを聴くことは無かった。
それが変わったのは、雑誌に掲載された1枚の壮絶なポートレイトだった。若い頃の面影はなく、人生の深遠を覗いたかのようなすさんだ表情からは一種迫力のようなものがにじみ出ている。そこで70年代以降のアルバムを集中して聴いてみると、演奏も良くなっているのだ。確かにトランペットの音色のなめらかさや勢いに衰えはうかがえるものの、シンプルなフレーズから醸し出される深みやコクは、むしろ増している。
その中でも1978年にフランスで録音された『トゥー・ア・デイ』(All Life)は歳を感じさせない快適な演奏で、ウエストコースターというよりはハードバッパーと言っても差し支えないようなノリの良いアルバム。ジャズ喫茶で受けるタイプで、小気味よさが聴き所だ。1曲目のタイトル曲も良いが、《イフ・アイ・シュド・ルーズ・ユー》はまさにチェットのために書かれたような憂いを篭めた名曲・名演。
ちょっと音質は悪いが、迫力という点では『スター・アイズ』(Marshmallow)は白眉と言って良い。デューク・ジョーダンのピアノとベースだけという変則トリオだが、ドラムスのいない分、チェットが補って余りある気合の充実した演奏で、あえてビ・バップ的と言いたくなるような緊張感がたまらない。
チェットがドイツのヴァイヴ奏者、ウォルフガング・ラッカーシュミットとデュオで吹き込んだ『バラッズ・フォー・トゥー』(Sandra)は、異色作だが、チェットの新たな魅力が浮き彫りにされた興味深い作品。底力のあるミュージシャンはどんなフォーマットでも自分の個性を発揮できるという良い見本である。
一方、ヨーロッパ、ジャズ・ピアノ界のベテラン、ルネ・ユルトルジュのトリオをバックにした『ライヴ・アット・ザ・パリ・フェスティヴァル』(Carlyne)は、オーソドックスなワン・ホーンでチェットが伸びやかにトランペットを吹きまくる。かつて、アート・ペッパーと共演した作品で披露した《フォー・マイナーズ・オンリー》が聴ける。
ギターのフィリップ・カテリーンをサイドに迎えた『チェッツ・チョイス』(Criss Cross)はまさにチェットの80年代的傑作。麻薬を巡るさまざまなトラブルをはじめ、人生の深遠を覗き見たものにしか出せない枯れた境地は、50年代のチェットの演奏からは聴くことができないものだ。個人的には晩年の作品を愛聴する私にとって、このアルバムがチェット評価の転機となった。
最後の1枚は『スター・アイズ』でも共演したデューク・ジョーダンがキチンとしたピアノ・トリオでバックを務める人気盤『ノー・プロブレム』(Steeple Chase)。タイトル曲であるジョーダンの名曲《ノー・プロブレム》がやはり良い。ジョーダンの哀愁とチェットの黄昏た感じが実にうまくこの曲のマイナー・イメージとマッチしている。
正直に言って、晩年のチェットのアルバムにはマトモに音の出ていないような怪しげなシロモノも多いが、良いものは若い頃の勢いだけの演奏より含蓄、滋味に満ちた、聴き飽きのこない傑作ぞろいだ。ぜひ晩年のチェットの演奏にも興味を持っていただきたいと思う。

【掲載アルバム】
『トゥー・ア・デイ』(All Life)
『スター・アイズ』(Marshmallow)
『チェッツ・チョイス』(Criss Cross)

月曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

火曜日 22:00~  新譜特集 第10回

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ラリー・ヤング『ラリー・ヤング・イン・パリ』(Resonance)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第145回
新譜特集 第10回(再放送)

新譜特集も10回目を迎えましたが、今回初めて「発掘音源」をいくつかご紹介しようと思います。ラリー・ヤングは1960年代半ばにブルーノート・レーベルで活躍したオルガン奏者で、ジミー・スミスに代表される従来のオルガン・ジャズのイメージを一新した、「オルガンの革命児」と呼ばれていました。ブルーノート時代は『イントゥ・サムシン』、『ユニティ』などのアルバムでマニアの間で知られており、今回発掘された「ラリー・ヤング・イン・パリ」(Resonannce)は、同時期にヤングがパリでトランペットのウディ・ショーとテナー・サックスのネイサン・デイヴィスを迎えたカルテット演奏で、絶頂期のヤングに斬新なオルガンが堪能できます。
2枚目にご紹介するアルバム『ライヴ』(DOX RECORD)は、オランダのアルト・サックス奏者、ベンジャミン・ハーマンの作品で、独特の濁りのあるサウンドは、21世紀に60年代ジャズの熱気を蘇らせました。共演のピアニスト、ミゲル・ロドリゲスはスペイン出身。採り上げる楽曲もレトロで、ケニー・ドーハム60年代の名演で知られた懐かしのジャズ・ロック・ナンバー「ウナ・マス」です。ライヴの聴衆も大喜びで盛り上がっています。 『チャーリー・ヘイデン&ジム・ホール』(Impulse)も発掘音源で、このところ相次いで亡くなった二人の巨匠、チャーリー・ヘイデンとジム・ホールが1990年にカナダのモントリオール・ジャズ・フェスティヴァル行ったデュオ演奏の初CD化アルバムです。採り上げた楽曲はセロニアス・モンクの「ベムシャ・スウィング」とヘイデン作の名曲「ファースト・ソング」です。
次にご紹介する『De L’usage du Sextoy en Temps de Crise』(Openmusic)は、映画のサントラです。冒頭に登場する女性ヴォーカルは、フランスを拠点として活躍するサックス奏者、仲野麻紀で、作曲は彼女とチームKy(キィ)を組んでいるパリ市立音楽院の同窓生、ヤン・ピタールです。昨年末、来日した彼女たちのライヴを見ましたが、まさに世界中の音楽が融合したユニークなもの、今年の4月に再び帰国コンサートを行う予定だそうです。これは見逃せません。
『デュオ』(2Birds 1Stone)は旧ユーゴスラビア、ベオグラード出身のピアニスト、ボヤン・ズルフィカパシチとフランスのサックス奏者、ジュリアン・ルロウのデュオ・アルバムです。彼らはフランスのベーシスト、アンリ・テキシェのグループで共演体験があり、息はばっちっりです。エキゾチックなメロディはすべてボヤンの作曲。バルカン半島は、東西の文化が交流する地域だけに、イスラーム圏の音楽の影響がうかがえます。
最後にご紹介する『Lisan Al Tarab』(edit record)は、2010年のセロニアス・モンク・コンペティションで作曲賞を受賞したベイルート出身のピアニスト、タレク・ヤマニの2014年の作品です。メンバーはギリシャのグループ、トリオイズムのベーシスト、ペトロス・クランパニスに、カサンドラ・ウィルソンや山中千尋との共演で知られるドラマー、ジョン・デイヴィスです。
フォーマットはオーソドックスですが、エキゾチックな曲想も含め、現代ピアノ・トリオはかつてのピアノ・トリオのイメージを覆す斬新なスタイルが魅力ですね。こうしてみると、今や「ジャズ」は明らかに「世界音楽」としてかつて無い広がりを見せていることが実感できます。

【掲載アルバム】
ラリー・ヤング『ラリー・ヤング・イン・パリ』(Resonance)
仲野麻紀『De L’usage du Sextoy en Temps de Crise』(Openmusic)
タレク・ヤマニ『Lisan Al Tarab』(edit record)


火曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

水曜日 22:00~  スタン・ゲッツ特集

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スタン・ゲッツ『スタン・ゲッツ・プレイズ』(Verve)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第134回
「ジャズの巨人シリーズ」 第12回 スタン・ゲッツ(再放送)

「ジャズの巨人」と呼ばれているミュージシャンの中には、時代によって微妙にイメージが変わる人がいます。白人テナー奏者、スタン・ゲッツもそうした傾向があって、初期40年代末から50年代初頭にかけては、「クール・ジャズの巨人」という印象を多くのファンにもたらしました。今回収録した『スタン・ゲッツ・カルテット』(Prestige)はその時代の代表作で、独特のクールなテナー・サウンドの肌触りが特徴的です。
しかし彼が「クール派」の代表だった時期は意外と短く、次第次第にテナー・サウンドに暖か味と力強さが増してきます。『スタン・ゲッツ・プレイズ』(Verve)はその過渡期的名盤で、アドリブの切れ味も申し分ありません。
その次に収録した『スタン・ゲッツ・プレイズ・ザ・ブルース』(Verve→VSP)は、ゲッツの多面性を知るに最適のアルバムです。50年代当時ゲッツが契約していたヴァーヴのオーナー・プロデューサー、ノーマン・グランツは大のジャム・セッション好き。そのグランツが製作したさまざまなセッション・アルバムに参加したゲッツ・レコーディングから、ブルースものを集めた一種のコンピレーション・アルバムがVSPから出されたこの作品なのです。
ハリー・エディソンやらロイ・エルドリッジといったスイング時代から活躍してきたベテラン、トランペッターやら、オスカー・ピーターソン、ジェリー・マリガンといった「モダン派」たちと、ゲッツは何の違和感も無く快適にブルースを演奏しています。
共に同じヴァーヴ・レーベルに属しながら、いかにもありそうでなかったのがビル・エヴァンスとの共演盤です。『ビル・エヴァンス・アンド・スタン・ゲッツ』(Verve)は70年代に入ってからリリースされた未発表音源シリーズで、ゲッツとエヴァンスの夢の共演が聴けます。
そしてご存知「ボサ・ノヴァ、ゲッツ」です。ボサ・ノヴァは50年代の中ごろから後半にかけて、ブラジルの富裕・知識階級から生まれた洗練された音楽です。それがいろいろな経路でアメリカ人ミュージシャンに知られるようになったのが60年代に入ってから。 当時ヨーロッパで活動していたゲッツは、久しぶりに帰国したアメリカで人気回復のためこの新しい音楽に手を染めました。これが大成功。たちまち「ボサ・ノヴァのゲッツ」として以前以上の人気を得たのです。『ゲッツ / ジルベルト』(Verve)はその記念碑的作品で、本場のボサ・ノヴァ歌手、ジョアン・ジルベルトとの共演アルバムです。
その余波を駆って60年代後半にチック・コリアをサイドマンに採用して生まれた傑作が『スィート・レイン』(Verve)でした。ボサ・ノヴァ、タッチをうまく取り入れたこの作品は、ジャズ・アルバムとしての完成度の高さはかなりのもの。『ゲッツ / ジルベルト』でも採り上げたヴォーカル・チューン《オ・グランジ・アモール》をインスト・ヴァージョンで聴き比べてみて下さい。
ゲッツの凄いところは、晩年になっても創作意欲に衰えが見えないことです。『アパショナード』(A&M)はポップなサウンドながら、ゲッツのテナーの勢いは第一級です。そして最晩年、癌を宣告されながら最後の力を振り絞って吹き込んだ『ピープル・タイム』(EmArcy)に収録された名曲《ファースト・タイム》は、死を直前にしたミュージシャンの演奏とは思えないほど力に満ちていますね。いまさらながらテナー奏者ゲッツの凄みを実感させられたアルバムです。

【掲載アルバム】
スタン・ゲッツ『スタン・ゲッツ・プレイズ』(Verve)
スタン・ゲッツ『スィート・レイン』(Verve)
スタン・ゲッツ『ピープル・タイム』(EmArcy)

水曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

木曜日 22:00~  新譜特集 第23回

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ジュリアン・ラージ『モダン・ロア』(Mac Avenue)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第158回
新譜紹介 第23回(再放送)

今回は初めての試みとして、昨年2017年のベスト盤を選んでみました。正確には2017年発売では無いものも少し混ざっていますが、要するに「私が昨年聴いたアルバム」ということでご容赦いただければと思います。個々のアルバムの内容については、末尾にこのコラムに登場した回を記しましたので、提示した回のコラムをご覧ください。
作ってみて驚いたのですが、数年前でしたらベスト5を選ぶのにも苦労したのに、今では簡単に10枚選べるばかりでなく、「次点」を作らざるを得ないほどなのです。また、いわゆるビッグネームが相対的に少ないのは、新人を積極的にご紹介したいという気持ちとともに、新人、そして相対的に知名度が低いミュージシャンのレベルが飛躍的に上がっていることの反映でもあります。

●2017ベスト盤
1, Kurt Rosenwinkel / Caipi (148回)
2, Kamashi Wasington / Harmony of Difference (154回)
3, The Passion of Charlie Parker (152回)
4, Chihiro Yamanaka / Monk Studies (151回)
5, Mamal hands / Floa (146回)
6, Ky / 心地よい絶望 (150回)
7, Rebecca Martin / The Upstate Project (150回)
8, Lizz Wright / Grace / Barley (154回)
9, Stephan Tsapis / Border Lines  (155回)
10, Ollie howell / Self-Identity (152回)
次点 Hamshire and Foat / Galaxis Like Grains of Sand (152回)

さて、今回のアルバムのご紹介に移りましょう。1枚目はカンザス・シティを拠点として活動する新人トランぺッター、ハーモン・メハリの『Blue』(自主製作)です。聴き所はサイドに参加したアルトのローガン・リチャードソン、ピアノ、キーボードのアーロン・パークスの活躍ぶりです。
2枚目はリトアニア出身のサックス奏者Kestutis Vaiginisの『Lights of Darkness』(自主製作)です。いわば「現代ハードバップ」とでも言うのでしょうか、オーソドックスな演奏がらその斬新なエネルギーはまさに21世紀。
そして昨年はセロニアス・モンク生誕100周年だったこともあり、様々なモンク・トリビュート作が出ましたが、『セロニアス・スフィアー・モンク』(Alph Pap)は、マルチ楽器奏者・プロデューサーであるマストこと、ティム・コンリーによる意欲作です。モンクの楽曲の想像力は21世紀のジャズ・シーンにも確実に届いているのです。
今話題の新人ギタリスト、ジュリアン・ラージの新譜『モダン・ロア』(Mac Avenue)は、彼の音楽的バック・グラウンドの広さを印象付ける軽快な作品。圧倒的なテクニックによるサウンドの万華鏡が心地よい。
そして大御所ビル・フリゼールの新作『ミュージック・イズ』(Okeh)は、何と18年ぶりのソロ・アルバムです。個人的体験ですが、私は90年代でしたか彼のアコースティック・ギターによるソロ・コンサートを観て、その音楽的センスの素晴らしさに圧倒されたのでした。今回の作品はその時の感動を彷彿させます。
最後にご紹介するのは、フランス領マルティニーク島出身のピアニスト、グレゴリー・プリヴァによる『ファミリー・ツリー』(ACT)です。彼はフランスの名ピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニに触発されてジャズ・ピアニストを目指したという経歴の持ち主で、切れの良いタッチとラテンのフレーヴァーが聴き所です。

【掲載アルバム】
マスト『セロニアス・スフィアー・モンク』(Alph Pap)
ジュリアン・ラージ『モダン・ロア』(Mac Avenue)
ビル・フリゼール『ミュージック・イズ』(Okeh)

木曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

金曜日 22:00~ 新譜特集 第42回

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バンコク・リンゴ『Smells-Coluurs-Noise』(Losen)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第178回
新譜特集 第42回(再放送)

最初にご紹介するアルバムは「バンコク・リンゴ」というノルウェイのグループによる『Smells-Coluurs-Noise』(Losen)です。楽器編成はトランペット、サックス、ベース、ドラムス、パーカッション。つまりピアノレスの2管クインテットですね。ジャケットの雑然としたイメージやタイトルからは中身の想像が付きにくい作品ですが、オーソドックスでありながらも熱気に満ちた演奏はかなり気に入りました。
北欧ジャズにありがちなクールな気配は毛頭なく、とにかくパワフルで躍動的。そして随所に顔を出すエスニックなテイストは北欧的ではまったくなく、またヨーロッパ・ジャズにありがちな整った風情とも無縁。強いて言えば、東欧というかバルカン半島のブラス・ミュージックに似た所も感じられます。
聴き所は、完璧なテクニックを備えつつ味わいもたっぷりなホーン陣が、エネルギッシュなドラムス、パーカッションに支えられ暴れまくるところ。かなり広範囲のジャズファンに支持されそうなアルバムです。
「ロウニン・アーケストラ」のアルバム『ソンケイ(尊敬)』(Rings)は、以前ご紹介した日本テイスト満載のピアノ、キーボード奏者マーク・ド・クライブ・ロウが自身のルーツである日本のミュージシャンを糾合して作り上げたニュー・プロジェクトによる注目作です。ロウニンは浪人、アーケストラはサンラのグループをイメージしているのでしょう。参加メンバーは類家心平、石若駿といった日本を代表する手練れたち。
石若の切れの良いドラミングに乗って華麗かつ濃密なサウンドが心地よく繰り広げられる好演で、「日本のジャズ」が変わりつつあることが実感できる注目作と言えますね。
ゴー・ゴー・ペンギンの新作『Ocean In A Drop』(Blue Note)は、1982年のマニアックな映画『コヤニスカッティ』にインスパイアーされた映画音楽。2016年に発表されたスタジオ・ライヴEP『ライヴ・アット・アビイ・ロード』に4曲追加した5曲のミニ・アルバム。いつもの快調な演奏ですが、この作品では切れの良さ、ノリの良さがとりわけ強調され、このグループの聴き所であるスピーディなグルーヴ感が満喫できます。 フィンランドのピアニスト、アレクシ・トゥマリオの『Sphere』(EDN)はとにかくピアノの切れ味が尋常ではありません。ツボに嵌ったときのインプロヴィゼーションの広がりが素晴らしい。また、ゲスト参加しているトランぺッターの気合の入った演奏も聴き所ですね。グループとしての密度感も充実しており、これは傑作です。
次にご紹介するのは1974年ニュージーランド生まれのベーシスト、マット・ペンマンの10年ぶりのリーダー作『グッド・クエスチョン』(Sunnyside)です。マットは1995年にニューヨークに渡り、多くの著名ミュージシャンとの共演歴を誇る強力ベーシスト。今回はマーク・ターナー、アーロン・パークスといったミュージシャンを迎えた完璧の布陣でペンマン自身のオリジナル楽曲を演奏しています。
そして最後に収録したのはマイルス・デイヴィスにもリスペクトされた大ベテラン、アーマッド・ジャマルのソロ・ピアノ・アルバム『バラーズ』(Harcourt)です。とても来年90歳を迎えるとは思えない演奏で、いわゆる「枯れた味」「渋さ」という誉め言葉では語り切れない優れた内容です。強いて言えば華麗で端正。とは言え、こうした雰囲気を醸し出せるのは年輪の故というもの間違いのところでしょう。これは傑作です。

【掲載アルバム】
バンコク・リンゴ『Smells-Coluurs-Noise』(Losen)
ロウニン・アーケストラ『ソンケイ(尊敬)』(Rings)
アレクシ・トゥマリオ『Sphere』(EDN)

金曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

[Recommend!] 土・日曜日 22:00~  新譜特集 第53回

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ヌバイア・ガルシア『ソース』(Conbcord)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第189回
新譜特集 第53回

今回の目玉は何と言っても注目のロンドン発新人女性サックス奏者、ヌバイア・ガルシアのデビュー・アルバム『ソース』(Conbcord)でしょう。あえてわかりやすいたとえをすれば、UK版カマシ・ワシントンとでも言えましょうか。作曲能力と楽器演奏力を兼ね備え、“サウンド”と“ソロ”が両立しているところなど、カマシの優れた特徴を受け継いでいます。
もちろん違いもあって、UKシーンならではの多様な音楽的ルーツを感じさせる斬新さが彼女の持ち味・聴き所なのですね。ロンドン生まれのガルシアの父親はカリブ諸島トリニダード・トバゴ出身、母親もまたカリブ海に面した南米ガイアナ共和国出身です。両国ともイギリス連邦加盟国なので、ロンドンにはこうした人たちが多く移り住んでいるのでしょう。
ですから彼女のルーツには、ジャズ誕生に多くの影響を与えたと言われているカリブ海地域の音楽的要素があるのですね。典型的なのは、冒頭に収録した楽曲《La Cumbia Me Esta Llamando feat. La Perla》で、この曲はガルシアが訪れたカリブ海に面したコロンビア共和国の伝統音楽を演奏する女性トリオ、「La Perla」がフィーチャーされた魅力的な楽曲です。
2番目に収録したのはイスラエル出身のトランぺッター、アヴィシャイ・コーエンのECM作品『Big Vicious』です。同姓同名で同じくイスラエル出身のベーシストがいるので紛らわしいのですが、両者共に優れた才能を示しているのは、近年イスラエル・ジャズシーンが極めて活性化していることを示しているのでしょう。
トランぺッター、アヴィシャイは情熱的なデビュー・アルバム『ザ・トランペット・プレイヤー』(Fresh Sound New Talent)以来注目しているのですが、近年は良い意味で音楽的洗練が進んでいるようです。とりわけ本作はECM的とも言える抑制された美意識に貫かれた傑作です。とは言え、アヴィシャイの優れた特質であるトランペット・サウンドに込められた深みのある情感は健在で、じっくり聴くほどに味わいが深まるミュージシャンと言えるでしょう。
傑作『カイピ』で話題を集めたギタリスト、カート・ローゼンウィンケルの新作は、何とスタンダードを集めた『Angels Arouund』(Hartcore)です。とは言え、カートならではの個性的解釈で演奏された冒頭のナンバー《Ugly Beauty》を聴けば、このアルバムが通り一遍のスタンダード集ではないことがわかります。一音でカートわかる独特のギターサウンドで繰り出されるポール・チェンバース作の《Ease It》も極めて斬新。 近年のUKシーンの面白さを伝えているのがロンドン発の5人組Ezra Collectiveのデビュー・アルバム『You Can’t Steal My Joy』(Impartmennto)でしょう。彼らはヌバイア・ガルシアとも共演し、彼女と同じようにさまざまな音楽的要素が絡み合って生まれたUKジャズの面白さを伝える有望なグループです。
そしてこちらも新世代イギリス・ジャズシーンの活発さを示すトリオ、ママル・ハンズの3年ぶりの新作『Captured Spirits』(Gondwana)は、期待通りの出来。彼らの長所は、音楽的志向性が極めて明確なところです。「何をやりたいのか」がはっきりしているので、ごく自然に彼らの演奏に入って行けるのです。ヌバイアやエズラとはまったく傾向は異なるのですが、こうした「多様性」こそがUKジャズの魅力なのでしょう。
最後に収録したのは説明の要もない巨匠、ビル・フリゼールのトリオによる新作『Valentine』(Blue Note)です。取り立てて目新しい趣向は無いのですが、何気ないフレーズもビルが弾くと深い味わいが生まれているのですね。まさに彼は音楽の化身と言っていいでしょう。聴き飽きることなの無い傑作です。

【掲載アルバム】
ヌバイア・ガルシア『ソース』(Conbcord)
アヴィシャイ・コーエン『Big Vicious』(ECM)
ママル・ハンズ『Captured Spirits』(Gondwana)

土・日曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

インフォメーション

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■ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

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