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D-51 ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお送りします。毎夜22:00~24:00の「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定で、後藤雅洋が執筆したコラムとともにジャズの魅力をお伝えします。

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月曜日 22:00~  『ジャズ喫茶リアル・ヒストリー』

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ジョン・コルトレーン『ライヴ・アット・ヴィレッジ・ヴァンガード』(Impulse)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第47回
『ジャズ喫茶リアル・ヒストリー』(再放送)

このたび河出書房新社から『ジャズ喫茶リアル・ヒストリー』という本を出版することとなりました。この本はタイトルからもわかるように、日本にしかない特殊な音楽空間であるジャズ喫茶の歴史を、私自身のジャズ喫茶体験を含め、戦前から現在まで語ったものです。今回はそのジャズ喫茶の歴史を音でたどってみました。
意外なことにジャズ喫茶は戦前から既にあって、その情報伝達スピードは驚くほど速い。ルイ・アームストロングやデューク・エリントンのSPアルバムは発売から1年もしないうちに日本のジャズ喫茶で聴けたという。現在でも録音されてから発売まで1年ぐらいタイムラグのあるCDは珍しくないのだから、これは注目に値する。昭和のジャズファンはルイ・アームストロングの「ホット5・ホット7」の演奏や、エリントン・バンドのサウンドをほぼリアルタイムで聴いていたのだ。
ところが第2次世界大戦が始まると、敵国であるアメリカのレコードは輸入が止まり、ちょうどその時期に起こったチャーリー・パーカーらによる“ビ・バップ"が日本に伝わったのは戦後のことだった。だからここでご紹介したチャーリー・クリスチャンの『ミントンズ・ハウス』のセッションやパーカーのアルバムは、同時代には聴くことができなかった。そのため日本のジャズマンは、戦後再開されたジャズ喫茶でこの新しいジャズスタイルを研究したという。1954年に横浜のジャズクラブ『モカンボ』で行われた守安祥太郎らによるジャム・セッションは、ようやく日本人ジャズマンがアメリカの動向に追いついた様子を記録している。
とはいえ、一般の人たちにまで広く“モダンジャズ”が知れ渡ったのはもっと遅く、1961年のアート・ブレイキー率いる“ジャズ・メッセンジャーズ"来日まで待たなければならなかった。しかし彼らの演奏は日本に“ファンキージャズ・ブーム"をもたらすと同時に、全国にジャズ喫茶が開店するきっかけとなった。戦後のジャズ喫茶を代表する新宿『DIG』は、メッセンジャーズ来日に刺激されて作られたという。
当時のジャズ喫茶でもっとも流行ったのがソニー・クラークの『クール・ストラッティン』であり、マル・ウオルドロンの『レフト・アローン』だった。そしてこうしたオーソドックスなハードバップとともに、60年代ジャズ喫茶を象徴するのがジョン・コルトレーンによるハードな演奏だ。当時、都内だけでも100軒近くあったジャズ喫茶では、連日コルトレーンのアルバムがターンテーブルの上に乗っていたものだ。
こうした動きに変化をもたらしたのがマイルス・デイヴィスによる“エレクトリック・ジャズ”で、1969年に発表された『ビッチェス・ブリュー』は、ジャズファンの間でジャズかロックかという大論争を巻き起こした。しかし70年代に入るとジャズ・シーンはマイルスの撒いた種によって大きく変化し、チック・コリア、ウエイン・ショーターといったマイルスのサイドマンたちがジャズ・シーンの主導権を握るようになる。
そして1971年録音の『ウエザーリポート』、72年の『リターン・トゥ・フォエヴァー』はジャズ・シーンのみならず、ジャズ喫茶自体の変質をもたらした。聴衆の層が変化したのである。特にキース・ジャレットの大ヒット・アルバム『ケルン・コンサート』は、60年代ジャズ喫茶の主流だったサヨク青年たちとはまったく異なった、若い女性ファンから圧倒的に支持されたのだった。

【掲載アルバム】
ソニー・クラーク『クール・ストラッティン』(Blue Note)
ジョン・コルトレーン『ライヴ・アット・ヴィレッジ・ヴァンガード』(Impulse)
キース・ジャレット『ケルン・コンサート』(ECM)

月曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

火曜日 22:00~  新譜特集 第8回

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ダニー・マッキャスリン『ビヨンド・ナウ』(AGATE)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第143回
新譜特集 第8回(再放送)

初に収録したのは、突然の死が惜しまれたデヴィッド・ボウイの遺作『ブラック・スター』のバックバンドを務めたことで注目された、ダニー・マッキャスリンの新作『ビヨンド・ナウ』(AGATA)です。メンバーもキーボード、ジェイソン・リンドナー、ドラムス、マーク・ジュリアナ、エレクトリック・ベース、ティム・ルフェーヴルなど、その時のメンバーと重なり、デヴィッド・ボウイの作品も演奏していることもあって、サウンドは『ブラック・スター』の最新ジャズ版といった感じです。
思い出せば、ずいぶん昔にニューヨークの「55バー」で若き日のダニー・マッキャスリンの演奏を聴いたことがあるのですが、以来この人の進化は凄まじいものがあります。ごく大ざっぱに言えば、マイケル・ブッレッカーの影響を受けていると言えるのでしょうが、斬新なリズム、サウンド・コンポジションによって、まさしく「現代のジャズ」となっており、そこも含め、完全にオリジナリティを確立させたと言っていいでしょう。名演です。
BIGYUKIという名前でデビューしたニューヨーク在住のキーボード奏者、平野雅之の新作『グリーク・ファイアー』(Universal)は、現代性を感じさせつつも不思議な懐かしさも覚える独自のテイストが面白い。それにしても、ビッグユキというニックネームの由来が笑えます。バークリーの修行時代に、もう一人「ユキ」と呼ばれた日本人ミュージシャンが居たため、その人物と区別するため背の高い平野が「ビッグ・ユキ」と呼ばれたそうです。彼はニューヨークを拠点とし、多くのセッションに引っ張りだこの注目株です。
3枚目に収録したアルバムは、今話題のノラ・ジョーンズの新作『ディ・ブレイクス』(Blue Note)です。久しぶりに彼女自身がピアノなどを弾き語りしているだけでなく、サイドマンがたいへんに豪華、一音だけで存在感のあるウエイン・ショーターがいくつかのトラックに参加しているのですね。また、採り上げた楽曲も非常に魅力的で、これはヒット間違いなし。実際、既にいろいろなところでこの新作が流れています。
マイルス・デイヴィスの残されたマスター・テープを自在に使い、ロバート・グラスパーがマイルスを現代に蘇らせた話題作が『エヴリシングス・ビューティフル』(Columbia)です。この作品の特徴は、素材がマイルスであっても、音楽自体はあまりマイルス・ミュージックを思い起こさせるようなテイストではなく、まさにグラスパーのスタイルになっているところでしょう。こうした発想はヒップ・ホップ以降の世代ならでは。
つい最近来日公演をしたトランペッター、クリスチャン・スコットが共同プロデュースしたことで話題となっているのが新人女性ヴォーカリスト、サラ・エリザベス・チャールズの新譜『インナー・ダイアローグ』(Concord)です。私も初めて彼女の歌声を聴いたのですが、これは素晴らしい。声の張り、テクニック抜群で、しかもたいへん個性的。間違いなく彼女はこれからの注目株となるでしょう。サイドマンとしてクリスチャン・スコット自身も参加しているところも聴き所です。
最後に収録したEMY・Trioの『Genesi』(le Havre)は2年ほど前の作品ですが、これは傑作です。哀愁を帯びた旋律が魅力的なブルガリアの民族音楽を取り入れたピアノ・トリオ演奏で、このところヨーロッパのジャズ・シーンに顕著なエスニック・テイストの見直しの流れに沿った作品と言えるでしょう。オーソドックスなフォーマットながら、エリス・デュフォーの演奏するピアノには、現代ジャズならではの斬新さが感じられます。

【掲載アルバム】
ダニー・マッキャスリン『ビヨンド・ナウ』(AGATE)
ノラ・ジョーンズ『デイ・ブレイクス』(Blue Note)
サラ・エリザベス・ジョーンズ『インナー・ダイアローグ』(Concord)

火曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

水曜日 22:00~  クリフォード・ブラウン特集

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セロニアス・モンク『モンクス・ドリーム』(Columbia)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第132回
「ジャズの巨人シリーズ」 第10回 セロニアス・モンク(再放送)

そのユニークなピアノスタイルで知られたジャズピアノの巨人、セロニアス・モンクは、モダン・ピアノの開祖、バド・パウエルに音楽理論を教えたほどの人物なのに、人気のほどはいまひとつでした。それは、独特のよじれたフレージングや、けつまずいたようなリズム感が、流麗なパウエル流バップ・スタイルを聴き慣れたファンに受け入れられ難かったからでした。
しかし、一度モンクの世界に馴染んでしまうと、誰にも似ていないオリジナリティに愛着がわくだけでなく、彼の音楽が実に聴き手の気持ちを自由にさせてくれることに気がつきます。まさにジャズなのですね。
最初に収録したのは初期のピアノトリオ演奏で、確かにふつうのリズム感とは違っているのですが、モンク流のドライヴ感の心地よさが聴き手を引き込みます。もちろんユニーク極まりないモンクのオリジナル曲の魅力も満載です。
しかしモンクは、パウエルやビル・エヴァンスのようにトリオ・フォーマットで演奏するより、自作曲をホーン奏者に演奏させてモンクス・ミュージックを世に問う方向に進みます。基本的にテナー奏者を入れたカルテット編成が好みのようで、最初のテナーマンがソニー・ロリンズでした。モンクにしては珍しく、スタンダード・ナンバーである「今宵の君は」などを演奏していますが、モンクとロリンズの相性はなかなか良かったのですね。
その流れは名盤『ブリリアント・コーナーズ』(Riverside)に引き継がれますが、この作品はアルトのアーニー・ヘンリーも参加した2管クインテット。地味な存在のヘンリーがモンクの世界で自由奔放にアイデアを飛翔させています。そしてもちろんロリンズも絶好調。
ロリンズと並ぶテナーの巨人、ジョン・コルトレーンはじめ、スイング時代から活躍するテナー・サックスの父と言われたコールマン・ホーキンスまでが参加した臨時セッション『モンクス・ミュージック』(Riverside)では、メンバーがけっこう間違えたりしているのですがジャズ的緊張感はいささかもゆるいではいません。これもまた名演です。  そのコルトレーンは一時マイルス・グループを離れ、モンクのサイドマンとなった時期があるのですが、彼はこの間にモンクから音楽理論を叩き込まれ、一気に上達します。『セロニアス・モンク・ウィズ・ジョン・コルトレーン』(Jazzland)は、その貴重な記録です。
モンクの次のテナーマンはジョニー・グリフィンで、彼はブルーノートなどにハードバップの名演をたくさん残していますが、モンクのサイドマン時代は完全にモンクス・ミュージックの枠に収まりつつ、しかも自らのアイデアも自在に表現しています。この辺りはモンクのリーダー・シップの巧みさですね。収録したのは有名なファイヴスポットでのライヴ盤『ミステリオーソ』(Riverdide)です。
その後リヴァーサイドからコロンビアに移籍したモンク・カルテットは、サイドマンもチャーリー・ラウズに変わります。彼はツアーの準備や楽譜の用意など、いわゆるバンド・マネージャー的な仕事も器用にこなし、その辺りをモンクから重用されたようです。しかし音楽的まとまり感は素晴らしく『モンクス・ドリーム』(Columbia)などは、まさにバンドが一体となってモンクの世界を表現しています。
 最後に収録したソロピアノでは、珍しくスタンダード・ナンバーを披露していますが、モンクが演奏すると聴き慣れた曲目まで、まるでモンクのオリジナルのように聴こえるから不思議です。

【掲載アルバム】
セロニアス・モンク『ブリリアント・コーナーズ』(Riverside)
セロニアス・モンク『モンクス・ミュージック』(Riverside)
セロニアス・モンク『モンクス・ドリーム』(Columbia)

水曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

木曜日 22:00~  新譜特集 第21回

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バンダ・マグダ「ティガー」(Ground Up)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第156回
新譜特集 第21回(再放送)

新年おめでとうございます。私の担当するジャズ・チャンネルももうずいぶん長くなりました。これも番組を長らくお聴きくださっているジャズ・ファンのみなさま方のおかげです。この場を借りてあつく御礼いたします。ところで、「新譜紹介」のコーナーも無事3年目を迎えることが出来ました。こちらはここ数年、バラエティに富んだ新譜、新人がたくさん出てきており、「とりあえず聴いてみる」べきアルバム、ミュージシャンが飛躍的に増えたことと関係があります。
選曲の方針として、レギュラーの番組は「聴きやすさ」「楽しさ」「面白さ」を一番に考えますが、「新譜紹介」では、ある意味で「評価」や「好悪」はお聴きになるファンの皆様に委ねるようなスタンスを採っています。というわけで今年最初にご紹介するアルバムは、多彩な活動を見せるドラマー、ブライアン・ブレイドの「ブライアン・ブレード・アンド・ザ・フェローシップ」による3年ぶりの新作「ボディ・アンド・シャドウ」(Blue Note)です。ニューヨークのような都市ではなく、アメリカの広大な自然を感じさせるゆったりとしたサウンドが心地よいですね。
2枚目は映画「バードマン」の音楽で新たな方向性を見出したドラマー、アントニオ・サンチェスの「Bud Hombre」(Cam Jazz)です。このアルバムはサンチェスのメキシコ人としての誇りが大きな基本テーマで、自宅の地下室を改造したスタジオで半ば実験的に作られた作品と言っていいでしょう。自身のドラムソロに多重録音を重ね、実にエネルギッシュなサウンドが現出しています。
3枚目は今注目の新人キーボード奏者、ビッグユキのファースト・フル・アルバム「リーチング・フォー・ケイローン」(Universal)です。「ケイローン」とは、ビッグユキ自身の言葉によれば「ギリシャ神話の中に出てくるケンタウロスの中でも頭が良く、周りを教え諭す奴」だそうです。また彼はこのアルバムのコンセプトとして、AIの技術を取り込んだ人間を半身半獣に例え、新技術で世界に貢献するという思いを込めているとも語っています。彼の多彩な音楽の引き出しが伺えるサウンドが面白い。
スナーキー・パピーでフィーチャーされたギリシャ人シンガー・ソング・ライター、マグダ・ヤニクゥが中心となって結成された多国籍バンド、「バンダ・マグダ」による新作「タイガー」(Ground Up)は、彼女のヴォーカルがフィーチャーされたエキゾチックなテイストの楽しいアルバム。こういうタイプのバンドはライヴを観たかったのですが、アントニオ・サンチェスのライヴと重なってしまい、残念ながら今回は見送り、ぜひ次の機会に観てみたいですね。
このところチック・コリアの活躍が目立っています。「チャイニーズ・バタフライ」(Strech Record)はスティーヴ・ガッドとの共作です。ベテラン同士らしい手慣れたサウンドながら、演奏の密度はなかなかのもの。
そして最後に収録したのは若手の注目株、ピアニストの桑原あいと今や日本人ドラマーとして高い評価を得ている石若駿によるデュオ・アルバム「ディアー・ファミリー」(Verve)です。ドラムスとピアノの二人だけというフォーマットならではの、シンプルながら心地よい緊張感が聴き所となった作品で、じっくりと聴き込むことによってレコーディング現場での二人音楽的やり取りの模様が浮かび上がって来ます。

【掲載アルバム】
BIGYUKI「リーチング・フォー・ケイローン」(Universal)
バンダ・マグダ「ティガー」(Ground Up)
桑原あい×石若駿「デアー・ファミリー」(Verve)

木曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

金曜日 22:00~ 新譜特集 第40回

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エスパソ『First Impresion』(May Record)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第176回
新譜特集 第40回(再放送)

ニューヨークを拠点に活動する若手日本人ミュージシャンたちによるJ-Squadは、3年前に日本のTVの音楽を録音するために作られた臨時編成グループでした。今回最初に収録した『J-Squad 2』(Universal)は、昨年発売された彼らの2作目のアルバムです。
メンバーは既に『ジグザガー』(Concord)などのリーダー作を出している黒田卓也(tp)、話題のグループ、スナーキー・パピーのメンバーとして知られる小川慶太(ds, per)、そしてバークリー在学中たびたび優秀賞を獲得した気鋭のテナー奏者、馬場智章らによる2管クインテット。
聴き所は気負いのない中にも現代を感じさせる闊達な演奏で、「日本人のジャズ」という「別枠限定」を抜きに彼らが現代ジャズの担い手であることが実感されます。これは嬉しい。
新譜特集第19回でもご紹介したJD アレンは、1972年ミシガン州デトロイト生まれの中堅テナー奏者です。彼はピアノレス・トリオで演奏することが多いのですが、今回のアルバム『Barracoon』(Savant)もベース、ドラムスのみを従えたトリオ編成です。率直に言って地味な演奏ですが、私はかなり好きです。
聴き所はテナーの音色ですね。特に激しくシャウトするわけでは無いのですが、内に秘めた情熱と言いましょうか、フレーズの一音一音にエネルギー、存在感が漲っているのです。最近のミュージシャンはみなテクニックは圧倒的に巧くなっているのですが、アレンのように音自体が力を持っているジャズマンは珍しい。じっくり腰を据えて聴きたいアルバムです。
エスパソはベーシスト、柳原達夫をリーダーとするグループで、今回ご紹介するアルバム『First Impresion』(May Record)はなんと15年ぶりの新譜だそうです。楽器編成はギター入りテナー・クインテットですが、そのサウンドは極めて新鮮。ダイナミックなリズムに乗ったエキゾチックなメロディが心地よい。ちなみに「エスパソ」とはポルトガル語で「空間・宇宙」を意味するそうです。知名度はありませんが注目に値するグループと言っていいでしょう。気に入りました。
スイス出身の新進ピアニスト、イヴ・タイラーによる新アルバム『We』(Intakt)はヨーロッパ・ジャズ的な要素もありながら、自己主張が明快なところが聴き所でしょう。伝統的なアコースティック・ピアノ・トリオですが、出てくる音は思いの外押し出しが強いのですね。「オレの言いたいことはこれだ」という気迫が伝わってくるのです。要注目。 アーロン・パークスの新譜『Little Big』(Ropearope)はパークスのピアノ、キーボードにギターが加わったカルテット。アルバム・タイトル、バンド名はSF小説から取ったということですが、確かにエレクトリック・ギターを前面に押し出したサウンドはSF的と言えそうです。聴き所はイヴ・タイラーと同じで、音楽的主張がはっきりとしているところでしょう。パークスはバンド・サウンド、アルバム・コンセプトをしっかりとコントロールしているのですね。
最後にご紹介する『Yin And Yang』(Can Jazz)はイタリアの女性ピアニスト、リタ・マルコチェリと、同じくイタリアのドラマー兼ヴォーカリスト、イスラエル・バレーラによるライヴ・レコーディングです。聴き所は何と言ってもマルコチェリの気合の入った演奏ですね。切れ味と気迫が凄まじい。これこそがジャズの醍醐味です。

【掲載アルバム】
エスパソ『First Impresion』(May Record)
JDアレン『Barracoon』(Savant)
リタ・マルコチェリ&イスラエル・バレーラ『Yin And Yang』(Can Jazz)


金曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

[Recommend!] 土・日曜日 22:00~  新譜特集 第50回

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Bloto『Erozje』(Astigmatic)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第187回
新譜特集 第51回

今回最初にご紹介するBlotoはポーランドのグループで、どうやら「泥」という意味のようですね。実際ジャケットには日本語のひらがなで「どろ」と書かれています。そしてアルバム・タイトル『Erozje』(Astigmatic)の意味は「浸食」です。そしてこれもジャケットに大きく日本語で記されているので、最初てっきり日本のグループと勘違いしてしまいました。
彼らは、ポーランドの7人組音楽集団「EABS」のメンバーによるキーボード、ベース、ドラムス、そしてテナー・サックスによるカルテットで、2018年のEABSのツアーのセッションで誕生しました。今回のアルバムは、90年代のニューヨークをテーマにしたそうです。既成のイメージに収まらない奔放かつパンク的でもある刺激的なサウンドは、歴史的に大国ロシアとドイツに挟まれたポーランドならではの「地政学的緊張感」がもたらしているのかもしれません。
期待のピアニスト、アーロン・パークスのリトル・ビッグIIによる新作『Dreams of a Mechanical Man』(Ropeadope)は、グレッグ・デューイのギター、デヴィッド・ギンヤードのベース、トミー・クレインによるドラムスにパークスの華麗なピアノの旋律が絡むドリーミーなアルバムです。クールで透明感のあるサウンドはいかにも現代的ですね。 以前この新譜紹介に登場したママル・ハンズのメンバー、ピアノ奏者ニック・スマートとサックス奏者ジョーダン・スマートの兄弟による新チーム、Sunda Arc によるデビュー・アルバム『Tides』(Gondwana)は、クラシカルな要素とポスト・エレクトロミュージックを巧妙に接続させた現代UKジャズの一つの方向を示した作品と言えそうです。
 さまざまな音楽的要素が絡み合う中から生まれる近未来SF的サウンドは、聴き手の想像力を活性化させると同時に21世紀ジャズの行方も示しているようです。
 今やUKジャズシーンの重要人物となったサックス奏者、シャバカ・ハッチングスはさまざまなフォーマットで活動を行っていますが、今回ご紹介するのは南アフリカのミュージシャンたちを率いたシャバカ・アンド・ジ・アンセスターズによる新作『ウィ・アー・セント・ヒア・バイ・ヒストリー』(Impulse)です。
シャバカはカリブ海地域に住んでいたこともあって、ジャズのルーツの一つであるカリビアン・ミュージック的要素もありつつ、今回はよりルーツを遡った南アフリカ的サウンドが見事に現代ジャズとして結実しています。南アフリカと言えば、ユニークなジャズ・ミュージシャン、ダラー・ブランドを生んだ地域ですが、そうしたアフリカ経由のジャズ的要素とUKジャズの重要なサックス奏者の先輩、コートニー・パインが持つカリブ海的気分が複雑な形でシャバカの音楽に反映されているようです。
クイン・キルヒナーはシカゴ出身のドラマー、作曲家で、キューバでパーカッショニストに師事した後奨学金を得てニューオルリンズ大学に進学という変わった経歴の持ち主です。彼の音楽はフリージャズ的要素とカリビアン・サウンドの結合という、あまり例をみないスタイルで、今後の活躍が楽しみです。
そして最後に収録したのは、ジェームス・ブラウンの伝説的バンドThe J.B.’sで活躍したファンク・レジェンド、アルトサックス奏者、メシオ・パーカーの『Soul Food』(Funk Garage)です。これは理屈抜きに楽しめますね。こうして世界のさまざまな“ジャズ”を並べて聴くと、いまやジャズこそがワールドミュージックとして生き残っているのが実感として伝わって来ます。

【掲載アルバム】
Bloto『Erozje』(Astigmatic)
Shabaka & the Ancestors『We Are Sent Here By History』(Impulse)
Quin Kirchner『The Shadows And The Lights』 (Impertment) 【掲載アルバム】

土・日曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

インフォメーション

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■ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

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