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D-51 ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお送りします。毎夜22:00~24:00の「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定で、後藤雅洋が執筆したコラムとともにジャズの魅力をお伝えします。

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月曜日 22:00~『ジャズ・レーベル完全入門』~コンテンポラリー編

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アート・ペッパー『ミーツ・ザ・リズム・セクション』(Contemporary)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第38回
『ジャズ・レーベル完全入門』~コンテンポラリー編(再放送)

コンテンポラリー・レーベルの特徴は、「サウンド」という言葉で言い表わすことが出来るだろう。まず、会社が西海岸のロスにあるので、1950年代当時隆盛を極めていたウエスト・コースト・ジャズ特有の軽快なサウンドを捉えているということ。そして、録音の音色という意味でもこの会社は独自性を持っている。
東海岸の代表的ジャズ・レーベル、ブルーノートの伝説的録音技師、ルディ・ヴァン・ゲルダーにも比肩される、ロイ・デュナンという名録音技師が録ったコンテンポラリー・サウンドは、独特の明快な軽やかさを持っている。つまりジャズ・スタイルのサウンドの特徴と、録音の音色の傾向が一致しているのだ。
最初の1枚は、名盤紹介に必ず出てくるアート・ペッパーの『ミーツ・ザ・リズム・セクション』から、おなじみの《ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ》。このアルバムは、録音のよさからオーディオファンが装置のチェックに使うことでも有名。そして次はこれも良く知られた名盤、ソニー・ロリンズの『ウエイ・アウト・ウエスト』。ブルーノート盤のゴリゴリした録音と比べてみると、同じ人が吹いているとは思えないほど明るく軽やかに聴こえるのがわかるだろう。
ウエスト・コースト・ジャズの職人アルト奏者、レニー・ニーハウスはちょっと馴染みが薄いかもしれないけれど、音楽監督として良くこの人の名が映画のクレジットに出てくる。有名なところでは、クリント・イーストウッド監督の映画『バード』で、チャーリー・パーカーの演奏をデジタル処理し、現代のミュージシャンと共演させるというアクロバット技を仕掛けたのがこの人だ。
第2次大戦後、進駐軍(占領軍のこと)として日本に来たこともあるハンプトン・ホースは、バド・パウエル直系のウエスト・コースト・ピアニスト。パウエル派ならではのノリの良いピアノには定評がある。
ジャズ雑誌の人気投票第1位、すなわちポール・ウイナーが3人集まった『ポール・ウイナーズ』は、バーニー・ケッセルのギターをレイ・ブラウンのベースとシェリー・マンのドラムが支えた、ウエストのスター・バンド。そのシェリー・マンがリーダーになったアルバム、『マイ・フェアー・レディ』は、ミュージカル・ナンバーをクラッシク畑でも活躍するピアニスト、アンドレ・プレヴィンに弾かせた名作。
コンテンポラリー・レーベルは80年代になっても活動し、オーソドックスなスタイルの傑作を残している。ロフト・シーンで知られたテナー奏者、チコ・フリーマンとウィントン・マルサリスの若手二人を、ベテラン、ヴァイヴ奏者、ボビー・ハッチャーソンが支えた『デスティニーズ・ダンス』は80年代の名盤だ。同じくウェザーリポートのドラマーとして知られたピーター・アースキンの初リーダー作『ピーター・アースキン』は、軽快なドラムソロのトラックに続く《E.S.P》が気持ちよい。ジョージ・ケイブルスのピアノは、現代的でありながら古きよき時代のフレイバーを感じさせるところが魅力だ。センチメンタルな味の《ブルー・ナイツ》は、なかなかの名曲。
再び50年代に戻り、知られざるベーシスト、カーティス・カウンスのリーダー作をご紹介しよう。フロントのトランペッター、ジャック・シェルドンの名前を知らずとも、聴けば納得の隠れ名盤だ。ベテラン、アルト奏者、ベニー・カーターの『スインギン・ザ・20s』は軽やかなアルトの音色が聴き所。これも録音の良さがカーターの魅力を引き出している。
そして最後は、70年代に吹き込まれたレイ・ブラウンの『サムシング・フォー・レスター』。ピアノ・トリオ・フォーマットでシダー・ウオルトンの演奏が光る。意外なことに、この編成でブラウンがリーダーになったのは初めてだとか。タイトルは、この録音の直後に心臓発作で亡くなってしまったコンテンポラリーのオーナー・プロデューサー、レスター・ケーニッヒに捧げたもの。

【掲載アルバム】
アート・ペッパー『ミーツ・ザ・リズム・セクション』(Contemporary)
ソニー・ロリンズ『ウエイ・アウト・ウエスト』(Contemporary)
『ポール・ウイナーズ』(Contemporary)

月曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

火曜日 22:00~ スタン・ゲッツ特集

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スタン・ゲッツ『スタン・ゲッツ・プレイズ』(Verve)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第134回
「ジャズの巨人シリーズ」 第12回 スタン・ゲッツ(再放送)

「ジャズの巨人」と呼ばれているミュージシャンの中には、時代によって微妙にイメージが変わる人がいます。白人テナー奏者、スタン・ゲッツもそうした傾向があって、初期40年代末から50年代初頭にかけては、「クール・ジャズの巨人」という印象を多くのファンにもたらしました。今回収録した『スタン・ゲッツ・カルテット』(Prestige)はその時代の代表作で、独特のクールなテナー・サウンドの肌触りが特徴的です。
しかし彼が「クール派」の代表だった時期は意外と短く、次第次第にテナー・サウンドに暖か味と力強さが増してきます。『スタン・ゲッツ・プレイズ』(Verve)はその過渡期的名盤で、アドリブの切れ味も申し分ありません。
その次に収録した『スタン・ゲッツ・プレイズ・ザ・ブルース』(Verve→VSP)は、ゲッツの多面性を知るに最適のアルバムです。50年代当時ゲッツが契約していたヴァーヴのオーナー・プロデューサー、ノーマン・グランツは大のジャム・セッション好き。そのグランツが製作したさまざまなセッション・アルバムに参加したゲッツ・レコーディングから、ブルースものを集めた一種のコンピレーション・アルバムがVSPから出されたこの作品なのです。
ハリー・エディソンやらロイ・エルドリッジといったスイング時代から活躍してきたベテラン、トランペッターやら、オスカー・ピーターソン、ジェリー・マリガンといった「モダン派」たちと、ゲッツは何の違和感も無く快適にブルースを演奏しています。
共に同じヴァーヴ・レーベルに属しながら、いかにもありそうでなかったのがビル・エヴァンスとの共演盤です。『ビル・エヴァンス・アンド・スタン・ゲッツ』(Verve)は70年代に入ってからリリースされた未発表音源シリーズで、ゲッツとエヴァンスの夢の共演が聴けます。
そしてご存知「ボサ・ノヴァ、ゲッツ」です。ボサ・ノヴァは50年代の中ごろから後半にかけて、ブラジルの富裕・知識階級から生まれた洗練された音楽です。それがいろいろな経路でアメリカ人ミュージシャンに知られるようになったのが60年代に入ってから。
当時ヨーロッパで活動していたゲッツは、久しぶりに帰国したアメリカで人気回復のためこの新しい音楽に手を染めました。これが大成功。たちまち「ボサ・ノヴァのゲッツ」として以前以上の人気を得たのです。『ゲッツ / ジルベルト』(Verve)はその記念碑的作品で、本場のボサ・ノヴァ歌手、ジョアン・ジルベルトとの共演アルバムです。
その余波を駆って60年代後半にチック・コリアをサイドマンに採用して生まれた傑作が『スィート・レイン』(Verve)でした。ボサ・ノヴァ、タッチをうまく取り入れたこの作品は、ジャズ・アルバムとしての完成度の高さはかなりのもの。『ゲッツ / ジルベルト』でも採り上げたヴォーカル・チューン《オ・グランジ・アモール》をインスト・ヴァージョンで聴き比べてみて下さい。
ゲッツの凄いところは、晩年になっても創作意欲に衰えが見えないことです。『アパショナード』(A&M)はポップなサウンドながら、ゲッツのテナーの勢いは第一級です。そして最晩年、癌を宣告されながら最後の力を振り絞って吹き込んだ『ピープル・タイム』(EmArcy)に収録された名曲《ファースト・タイム》は、死を直前にしたミュージシャンの演奏とは思えないほど力に満ちていますね。いまさらながらテナー奏者ゲッツの凄みを実感させられたアルバムです。

【掲載アルバム】
スタン・ゲッツ『スタン・ゲッツ・プレイズ』(Verve)
スタン・ゲッツ『スィート・レイン』(Verve)
スタン・ゲッツ『ピープル・タイム』(EmArcy)

火曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

水曜日 22:00~ マイルス・デイヴィス特集

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マイルス・デイヴィス『カインド・オブ・ブルー』(Columbia)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第123回
「ジャズの巨人」シリーズ 第1回 マイルス・デイヴィス(再放送)

今回から、私が監修している小学館刊行のCD付隔週マガジン『ジャズの巨人』にちなみ、ジャズ史に名を残したビッグ・ネームたちの名演・名盤をご紹介して行こうと思います。第1回目はマイルス・デイヴィスです。マイルスは時代によって大きくスタイルを変え、そして彼の「新趣向」自体が「モダン・ジャズ」の領域を広げて行った、文字通りジャズの巨人です。
マイルスは天才アルト奏者、チャーリー・パーカーのサイドマンとしてジャズマン人生をスタートさせますが、パーカー流、即興第一主義に疑問を感じ、アンサンブルにも意を払った9重奏団によるアルバム「クールの誕生」(Capitol)を40年代末に録音します。このサウンドは後にウエスト・コースト・ジャズに影響を与えました。
しかしマイルス自身は次の時代のジャズ、ハードバップの先駆けとも言えるアルバム「ディグ」(Prestige)を、ソニー・ロリンズ、ジャッキー・マクリーといった次世代のスターたちとレコーディングしています。50年代初頭のことでした。そして54年のクリスマス・イヴに録音された「バグス・グルーヴ」(Prestige)は、マイルスが共演者の先輩、セロニアス・モンクに「オレがソロをとっている間はバックでピアノを弾くな」と言った、有名なアルバムです。
「喧嘩セッション」などと言われていますが、むしろハードバップ流、「楽想の統一」を考えたマイルスの音楽観が背後にあったのではないでしょうか。そして、その成果ともいうべき名盤が56年に大量録音されます。世に言う「プレスティッジ・マラソン・セッション」と、それと同時期のコロンビア録音「ラウンド・ミッド・ナイト」です。これらに録音された名曲「ラウンド・ミッドナイト」や「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は、マイルスの名を不動のものとした名演です。
58年、早くもハードバップの行き詰まりを感じ取ったマイルスは、新時代のジャズを目指し「モード」の考えを取り入れた演奏「マイルストーン」(Columbia)を録音します。そしてこの発想は、翌59年録音の歴史的名盤「カインド・オブ・ブルー」(Columbia)に結実します。このアルバムは現在に至るまで、ジャズ・アルバムとしては驚異的な累積販売枚数を誇っています。
そして60年代マイルス初期の名盤として、レギュラー、テナー奏者、ハンク・モブレイと、ゲスト参加した元サイドマン、ジョン・コルトレーンが共演した「いつか王子さまが」(Columbia)がジャズ喫茶で大人気を博します。この時期はサイドマンがなかなか一定せず、さまざまなテナー奏者がマイルス・コンボに去来します。
64年録音のライヴ盤「フォア&モア」(Columbia)は、ジョージ・コールマン参加の名ライヴ盤として知られると同時に、まだ10代のトニー・ウィリアムスの火の出るようなドラミングが素晴らしい。そしてようやくレギュラー、テナー奏者がウェイン・ショーターに決まり、傑作「ソーサラー」(Columbia)が67年に吹き込まれます。しかしマイルスの前進は止まりません。69年にはエレクトリック楽器を大胆に取り入れた記念碑的作品「ビッチズ・ブリュー」(Columbia)を吹き込み、エレクトリック・マイルスの次代が始まります。「アット・フィルモア」(Columbia)は70年代前半の名演です。
そしてマイルスは75年の大阪公演を最後に、6年に及ぶ活動停止期間を経た後、81年に「ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン」(Columbia)を引っさげ、颯爽とシーンにカムバック。その後は今回最後に収録した「デコイ」(Columbia)など、多くのレコーディング、そしてライヴで80年代シーンを牽引して行ったのです。

【掲載アルバム】
マイルス・デイヴィス『クッキン』(Prestige)
マイルス・デイヴィス『カインド・オブ・ブルー』(Columbia)
マイルス・デイヴィス『ビッチズ・ブリュー』(Columbia)

水曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

木曜日 22:00~  新譜特集 第12回

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The Comet Is Coming 『Channel The Spirits』

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第147回
新譜特集 第12回(再放送)

冒頭に少し宣伝をさせてください。私は2014年4月から『ジャズ100年』、2015年4月から『ジャズの巨人』、そして2016年5月から『ジャズ・ヴォーカル・コレクション』という、小学館から刊行されたCD付きムックの選曲・監修をさせていただいてます。隔週刊行それぞれ年に26巻、トータルで78巻もようやく終るかと思いきや、好評に付き今年の5月から半年12巻の「ヴォーカル編」延長が決まりました。わたくしごとながら、いまや何度目かの「ジャズ・ブーム」が到来していることがヒシヒシと実感されます。
それは新譜状況を見ても明らかで、今までに無い斬新なジャズ・グループが続々と登場しています。スナーキー・パピーは既にご紹介してきましたが、今回はその重要なメンバーであるキーボード奏者、ビル・ローレンスのロンドンでのライヴ・アルバム『ライヴ・アット・ユニオン・チャペル』(Verve)からの選曲です。サイドマンとしてスナーキーの主要メンバーであるベーシストのマイケル・リーグ、ドラムスのロバート・シアライトが参加していることでもわかるように、サウンドはかなりスナーキー的。
リーダーがマイケルなので当然ですが、彼の斬新な音楽性、キーボード・センスが堪能できます。シアライトの切れの良いドラミングも気持ちいいですね。マイケルはイギリス人ということもあり、スナーキーのもう一人のキーボード奏者、コリー・ヘンリーとは対照的な音楽的バック・グラウンドの持ち主。それが、スナーキーの音楽の多様性に大きく貢献していることがこのマイケルのリーダー作を聴くと良くわかります。
次にご紹介する「ザ・コメット・イズ・カミング」もイギリスのグループで、キーボード、テナー・サックス、ドラムスによるトリオ。彼らのアルバム『チャネル・スピリット』は、「リーフ」というヨークシャーに拠点を置くエレクトロニック・ミュージックのレーベルから出されているだけに、サウンドは極めて鮮烈かつアグレッシヴ。ともあれ、こうしたUK勢の「非アメリカ的」感覚が、ジャズに新風を吹き込んでいるのは間違いないようです。それにしても、楽器編成からは想像がつかないサウンドではあります。
ぐっと雰囲気が変わってジョン・ゾーン名義のアルバム『オン・リーヴス・オブ・グラス』(Zadic)は、ゾーンの楽曲を「メデスキ・マーチン・ウッド」のピアニスト、ジョン・メデスキとケニー・ウォルセンのヴァイブを、ジョーイ・バロンのドラムスらが支える落ち着いた演奏です。この、懐かしいようなそれでいてちょっとエキゾチックなサウンドは心地良いですね。ゾーンの作曲センスはやはりユニーク。
ギタリスト、ライアン・ブロトニックの新作『クッシュ』(Songline)は、異色のサックス奏者マイケル・ブレイクの参加が効いています。ブロトニックのギターは地味ながら聴くほどに味わいが出るタイプ。じっくりと聴き込みたいですね。
ご存知アントニオ・サンチェスの『スリー・タイムス・スリー』(Cam Jazz)は、彼がブラッド・メルドー、ジョン・スコフィールド、そしてジョー・ロバーノの3人をそれぞれゲストに迎えたトリオ演奏で、今回はジョンスコとの共演トラックを収録しました。 最後にご紹介するのはベテラン、ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィの2014年の録音『ダブル・サークル』(Cam Jazz)です。新進ギタリスト、フェデリコ・カサグランデとのデュオ作品で、ピエラヌンツィがいいのは言うまでもありませんが、カサグランデのギターが凄い。これは名演です。

【掲載アルバム】
The Comet Is Coming 『Channel The Spirits』(Leaf)
John Zorn 『On Leaves Of Grass』(Zadic)
Enrico Pieranunzi 『Double Circle』(Cam Jazz)

木曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

金曜日 22:00~ 新譜特集 第32回

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Time Groove『More ThanOne Thing』(Ring)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第167回
「新譜特集」第32回(再放送)

このところUKジャズが注目されています。このコーナーでもシャバカ・ハッチングスなどのイギリスのジャズ・ミュージシャンたちを採り上げて来ましたが、今回冒頭でご紹介する『There is a Olace』 (Beat Record)もまた、サウス・ロンドンのジャズ・シーンを代表するニュー・グループ「マイシャ」のデビュー作です。マイシャはドラマーのジェイク・ロング率いる6人組グループで、注目すべきは女性版カマシ・ワシントンと呼ばれたサックス奏者ヌビア・ガルシアの存在です。
彼らの音楽は、かつてスピリチュアル・ジャズと呼ばれた60~70年代のファラオ・サンダースらの影響も受けつつ、ロンドンという多文化が混交した都市で生まれた音楽らしい斬新な発想が魅力になっています。2曲目に収録したタイトル曲はかつてドン・チェリーが演奏したナンバーで、こうした埋もれた名曲を採り上げるアイデアはなかなかアメリカのジャズ・ミュージシャンからは出てこないように思います。
2番目『More ThanOne Thing』(Ring)もまた話題のミュージシャンを大勢誕生させているイスラエル発のニュー・バンド、「タイム・グルーヴ」による新譜です。プロデューサーであるリジョイサーことユヴァル・ハヴキンがイスラエルの新人たちを終結した作品で、まさに現代ジャズの見本のようなクールで多彩なサウンドが心地よい。
次は、イタリアを代表するピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィがその才能を認めた新人、クラウディオ・フィリッピーニ率いるピアノ・トリオによる『Bifor The Wind』(Cam Jazz)です。オーソドックスなスタイルながら随所に見せるタッチの切れ味など、ピアノ・トリオ好きなら見逃せない実力の持ち主と言っていいでしょう。
そして昨年カート・ローゼンウィンケル率いる「カイピ・バンド」の一員として来日した、ブラジル・ミナスを代表するシンガー・ソング・ライター兼マルチ奏者、アントニオ・ロウレイロの6年ぶりの新作が『Livre』(NRT)です。サイドにはカート・ローゼンウィンケルや、以前このコーナーでご紹介したペドロ・マルチンスが参加しており、極上のミナス・サウンドが聴き所となっています。
今回の目玉はウェイン・ショーターのコミック付きCD3枚組大作『エマノン』(Blue Note)でしょう。一度実物を手に取ってご覧になることをお勧めしますが、ショーターが自ら推薦したコミック作家とのコラボ作品で、ショーターの思い描く世界がビジュアル化された魅力的なアルバムです。
もちろん音楽も壮大で、ストリングス・オーケストラを率いるショーターの作曲家としての才能が全面開花したスケールの大きな世界が繰り広げられています。バック・サウンドから浮かび上がるショーターのミステリアスなソロが聴き所で、その年齢を感じさせないイマジネーションの広がりには圧倒されるばかり。ちなみにタイトルの「エマノン」とは、ノー・ネームの綴りを逆さまにしたものです。
最後に収録したキース・ジャレットのソロ・ピアノ・アルバム『ラ・フェニーチェ』(ECM)は、2006年にベネチアのラ・フェニーチェ劇場で収録したもので、キースの即興演奏家としてのパフォーマンスが素晴らしい。それだけに聴衆の反応も熱狂的で、はるか昔、70年代から世界各地で繰り広げられたキースのソロ・ピアノに対する人気の幅広さを21世紀に伝えた名演と言っていいでしょう。

【掲載アルバム】
マイシャ『There is a Olace』 (Beat Record)
Time Groove『More ThanOne Thing』(Ring)
ウェイン・ショーター『エマノン』(Blue Note)

金曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

[Recommend!] 土・日曜日 22:00~  新譜特集 第42回

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バンコク・リンゴ『Smells-Coluurs-Noise』(Losen)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第178回
新譜特集 第42回

最初にご紹介するアルバムは「バンコク・リンゴ」というノルウェイのグループによる『Smells-Coluurs-Noise』(Losen)です。楽器編成はトランペット、サックス、ベース、ドラムス、パーカッション。つまりピアノレスの2管クインテットですね。ジャケットの雑然としたイメージやタイトルからは中身の想像が付きにくい作品ですが、オーソドックスでありながらも熱気に満ちた演奏はかなり気に入りました。
北欧ジャズにありがちなクールな気配は毛頭なく、とにかくパワフルで躍動的。そして随所に顔を出すエスニックなテイストは北欧的ではまったくなく、またヨーロッパ・ジャズにありがちな整った風情とも無縁。強いて言えば、東欧というかバルカン半島のブラス・ミュージックに似た所も感じられます。
聴き所は、完璧なテクニックを備えつつ味わいもたっぷりなホーン陣が、エネルギッシュなドラムス、パーカッションに支えられ暴れまくるところ。かなり広範囲のジャズファンに支持されそうなアルバムです。
「ロウニン・アーケストラ」のアルバム『ソンケイ(尊敬)』(Rings)は、以前ご紹介した日本テイスト満載のピアノ、キーボード奏者マーク・ド・クライブ・ロウが自身のルーツである日本のミュージシャンを糾合して作り上げたニュー・プロジェクトによる注目作です。ロウニンは浪人、アーケストラはサンラのグループをイメージしているのでしょう。参加メンバーは類家心平、石若駿といった日本を代表する手練れたち。
石若の切れの良いドラミングに乗って華麗かつ濃密なサウンドが心地よく繰り広げられる好演で、「日本のジャズ」が変わりつつあることが実感できる注目作と言えますね。
ゴー・ゴー・ペンギンの新作『Ocean In A Drop』(Blue Note)は、1982年のマニアックな映画『コヤニスカッティ』にインスパイアーされた映画音楽。2016年に発表されたスタジオ・ライヴEP『ライヴ・アット・アビイ・ロード』に4曲追加した5曲のミニ・アルバム。いつもの快調な演奏ですが、この作品では切れの良さ、ノリの良さがとりわけ強調され、このグループの聴き所であるスピーディなグルーヴ感が満喫できます。
フィンランドのピアニスト、アレクシ・トゥマリオの『Sphere』(EDN)はとにかくピアノの切れ味が尋常ではありません。ツボに嵌ったときのインプロヴィゼーションの広がりが素晴らしい。また、ゲスト参加しているトランぺッターの気合の入った演奏も聴き所ですね。グループとしての密度感も充実しており、これは傑作です。
次にご紹介するのは1974年ニュージーランド生まれのベーシスト、マット・ペンマンの10年ぶりのリーダー作『グッド・クエスチョン』(Sunnyside)です。マットは1995年にニューヨークに渡り、多くの著名ミュージシャンとの共演歴を誇る強力ベーシスト。今回はマーク・ターナー、アーロン・パークスといったミュージシャンを迎えた完璧の布陣でペンマン自身のオリジナル楽曲を演奏しています。
そして最後に収録したのはマイルス・デイヴィスにもリスペクトされた大ベテラン、アーマッド・ジャマルのソロ・ピアノ・アルバム『バラーズ』(Harcourt)です。とても来年90歳を迎えるとは思えない演奏で、いわゆる「枯れた味」「渋さ」という誉め言葉では語り切れない優れた内容です。強いて言えば華麗で端正。とは言え、こうした雰囲気を醸し出せるのは年輪の故というもの間違いのところでしょう。これは傑作です。

【掲載アルバム】
バンコク・リンゴ『Smells-Coluurs-Noise』(Losen)
「ロウニン・アーケストラ」『ソンケイ(尊敬)』(Rings)
アレクシ・トゥマリオの『Sphere』(EDN)

土・日曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

インフォメーション

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■ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

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