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D-51 ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお送りします。毎夜22:00~24:00の「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定で、後藤雅洋が執筆したコラムとともにジャズの魅力をお伝えします。

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月曜日 22:00~ 新譜特集 第21回

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ブラディ・ヤンガー
『Wax & Wane』
(Rings)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第157回
新譜特集 第22回(再放送)

聴取者のみなさま方も既にご承知のことと思いますが、この新譜紹介のコーナーに登場するアルバムのテイストと、私の他の番組のサウンドはかなり異なっていますよね。というのも、私が「新譜」としてご紹介するものは過去の発掘音源などを除き、少なくとも21世紀の録音であるという条件を付けているからです。
もっとも21世紀になってもう18年目ですからかなり幅は広いとはいえ、他の番組で使うジャズ喫茶ファンが好む音源は、だいたい50年代から70年代ぐらいまでが中心なので、やはり20年以上の隔たりがあり、その間のジャズ・シーンの変化がテイストの違いをもたらしているわけです。
率直に言って、この新旧二つのジャズはファン層も微妙に異なっていて、従来のジャズ・ファンは現代ジャズに少々戸惑っている様子が伺えるようです。こうしたファン層のギャップを埋めるため、70代の私と50代の村井康司さん、30代の柳楽光隆さんの3人で両者の溝を埋める鼎談集『100年のジャズを聴く』(シンコーミュージック)を昨年末に出版いたしました。
村井さんは昨年やはりシンコーミュージックから『あなたの聴き方を変えるジャズ史』を上梓され、また、柳楽さんもシンコーから既に4冊の「Jazz the New Chapter」シリーズを刊行されている注目の評論家です。幸いこの鼎談は好評で、発売一ヵ月で早くも重版となりました。この本では、現代ジャズとオーソドックスなジャズが実は繋がっていることを具体的に解説しています。ぜひご一読ください。
さて、今回の1枚目『OB 1』(Fresh Sound New Talent)はイスラエル出身のベーシスト、オル・パレケットの初リーダー作です。聴き所は何と言っても若手ギタリスト、シャハル・エルナタンの流麗なギターで、ピアノのガディ・レハウィとの華麗なコラボレーションが素晴らしい。今話題のイスラエル・ジャズの傑作です。
2枚目の『Jersey』(Montema)は、既に中堅として幅広いファンを獲得しているドラマー、マーク・ジュリアナの新作で、テナーのジェイソン・リグビー、ファビアン・アルマザンのピアノ、そしてベーシストはクリス・モリッシーによるサックス・カルテット。ジュリアナの切れの良いドラミングが演奏に活き活きとした躍動感を与えています。
ブラディ・ヤンガーは女性ハープ奏者で、『Wax & Wane』(Rings)は彼女のソロ・デビュー作です。クラシックのテクニックを基としながらヒップ・ホップ、ゴスペルのテイストも感じさせるヤンガーのサウンドは、伸びやかで実に快適。ジャズ・ハープの新世代として注目したいですね。
アイルランド、ダブリン在住のドラマー、ケヴィン・ブラディの新作『Ensam』(Lrp)はビル・キャロラーズのピアノが素晴らしいピアノ・トリオ作品。透明感溢れるタッチから繰り出されるフレーズには意外に強い情熱が感じられます。斬新かつオリジナリティに満ちたピアニストですね。
カナダ生まれでアメリカで活動する作曲家、ダーシー・ジェームス・アーギュの作品は以前にもご紹介しましたが、新作『Real Enemies』(New Amsterdum Records)は、学者による同名の著作にインスパイアされたコンセプト・アルバムです。現代音楽の影響を感じさせつつも、ジャズならではの密度感・質感の濃さが聴き所となっています。 最後にご紹介する『Seaward』(Soul Note)はイタリアの大御所ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィのアルバムで、オリジナル作品とともに「フット・プリンツ」「イエスタディズ」といったスタンダード・ナンバーを採り上げています。楽曲は何であれ、ピエラヌンツィの演奏には親しみやすい哀愁感と同時に、極めて力強い音楽への意思が感じられます。この辺りが単に耳辺りの良いピアノ・トリオ作品と一線を画す彼の素晴らしさでしょう。

【掲載アルバム】
オル・パレケット『OB 1』(Fresh Sound New Talent)
ブラディ・ヤンガー『Wax & Wane』(Rings)
エンリコ・ピエラヌンツィ『Seaward』(Soul Note)

月曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

火曜日 22:00~ ブッカー・アーヴィン特集

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ブッカー・アーヴィン
『ザ・ソング・ブック』
(Prestige)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第118回
ブッカー・アーヴィン特集 (再放送)

ブッカー・アーヴィンはその実力の割にはいまひとつ知名度が低いように思います。というか、ほんとうにジャズが好きな人は黙って聴いている、という感じでしょうか。ハード・バップ・テナー奏者としては、デクスター・ゴードンやジョニー・グリフィンらと互角に渡り合える実力がありながら、あまり話題にならない。もしかするとそれは、彼のリーダー作の多くがプレスティッジ・レーベルから出ていることと関係があるのかな、などと思ってみたりもします。
つまり、ブルーノートなどに比べ、系統的に作品が論じられることが少なかったプレスティッジは、相対的に契約ミュージシャンについての情報が不足がちだったということが言えるのかも知れませんね。加えて、1970年にわずか39歳の若さでアーヴィンが病死してしまったことも大いに影響しているでしょう。もし存命だったなら、それこそゴードンやグリフィンが70年代ハードバップ・リバイバルのスターとして大活躍したように、大いにアーヴィンにも出番があったはずなのです。
アーヴィンの魅力は、何といってもその奔放かつパワフルなテナー・サウンドにあります。一聴しただけで「これはアーヴィンだ」とわかる特徴的なトーンはアーヴィンならでは。彼の代表作にしてワンホーン・テナー・カルテットの名演『ザ・ソング・ブック』(Prestige)は、吹きまくりテナーが好きなファンなら絶対のオススメ盤。サイドマンも名手揃いで、とりわけ、端正なトミー・フラナガンのピアノがブロー・テナー、アーヴィンと絶妙のバランスを見せています。また、アーヴィンと相性の良いドラマー、アラン・ドウソンの切れの良いドラミングも効いている。
極めてオーソドックスなハードバップだった『ザ・ソング・ブック』に比べ、同じワンホーン・カルテットでも、サイドがジャッキー・バイアードになると微妙に雰囲気が変わってきます。エキゾチックなムードを湛えた曲想といい、バイアードの乱れ打ちピアノといい、『ザ・フリーダム・ブック』(Prestige)はかなり異色。しかしこれもアーヴィンの持ち味なのです。
アーヴィンの凄いところはどんな相手とも勝負できるところ。白人テナーの雄、ズート・シムスを共演者に迎えた『ザ・ブック・クックス』(Bethlehem)は、ファンキーな気分が横溢した名盤。このアーシーな気分を支えているのは、ジョージ・タッカーのベースとダニー・リッチモンドのドラムスの名コンビ。そして、ジミー・オウエンスのトランペットにトロンボーンを加えた、豪華3管セクステットによる『へヴィー』(Prestige)は、場の気分を盛り上げるのに最適。
これだけのテナーですから、当然「バトルもの」でも充分ファンを堪能させてくれます。元祖テナー・バトルの雄、デクスター・ゴードンとの20分にも及ぼうとする『セッティング・ザ・ペース』(Prestige)は、豪快なテナー・バトルを好む方なら絶対に好きになるはず。そして最後にご紹介するのは、これも名盤の誉れ高い『ザッツ・イット』(CANDID)。それにしても、シンプルなワン・ホーンで聴き手を飽きさせないのは、奔放なように見えて歌心もタップリ供えたアーヴィンの絶妙なバランス感覚に負っていると言えるでしょう。吹きまくりでありながら「聴き疲れ」しないのは、アーヴィンのフレーズが思いのほか柔軟性実に富んでいるからなのです。

【掲載アルバム】
ブッカー・アーヴィン『ザ・ソング・ブック』(Prestige)
ブッカー・アーヴィン『ザ・ブック・クックス』(Bethlehem)
ブッカー・アーヴィン『ザッツ・イット』(CANDID)

火曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

水曜日 22:00~ ボビー・ハッチャーソン特集

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ボビー・ハッチャーソン
『ハプニングス』
(Blue Note)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第107回
ボビー・ハッチャーソン特集(再放送)

1941年生まれのボビー・ハッチャーソンは、前々回ご紹介した1943年生まれのゲイリー・バートンとほぼ同世代ですが、わずか2歳の年の差が微妙な音楽性の違いを生んでいるようです。しいて言えば、ハッチャーソンはビバップ以来シーンで活躍し続けていたミルト・ジャクソンと、明らかに新世代のヴァイヴ奏者、バートンとを繋ぐ役割を果たしたといえるでしょう。
また、ハッチャーソンは一ヴァイブ奏者であると同時に、1960年代新主流派の重要人物でもありました。60年代新主流派は別名ブルーノート新主流派などとも呼ばれましたが、今回ご紹介するハッチャーソンのアルバムも、すべてブルーノート作品です。 新主流派の特徴は、モード奏法を用いるなど50年代ハードバップに比べ音楽の表情がクールで斬新な響きを持っています。最初にご紹介する『ハプニングス』などはその代表で、新主流派の代表的ピアニスト、ハービー・ハンコックをサイドマンに迎え、ハンコックの名曲《処女航海》を取り上げています。
ホーン奏者の入ったハンコック版の同曲に比べ、ヴァイブとピアノによる演奏は、この曲の特徴をより一層引き立てており、まさに名演です。
 ハッチャーソンはホーン奏者との共演盤でも個性を発揮し、『コンポーネンツ』では、ヴァイブならではのクールで透徹した響きが音楽の表情を引き締め、50年代ハードバップとの違いを際立たせています。ジャケット写真に用いられた金属のアブストラクトのイメージそのまま、「モダンアート」のような切れ味が聴き所。サイドマンのフレディ・ハバードとの相性も抜群です。
『インナー・グロウ』はヴァイヴとマリンバ(木琴)を効果的に使い分けた傑作。《サーチン・ザ・トレーン》では、テーマ部分はヴァイブ、ソロではマリンバとそれぞれの楽器の特徴を生かし、シンプルな曲想を逆手に取った名演を披露しています。
 ハッチャーソンは70年代に入ると微妙にスタイルを変え、『ナックルビーン』冒頭収録の《ホワイ・ノット》はマリンバの柔らかい音色を生かしたメロウな心地よい演奏です。しかし続く《サンダンス・ノウズ》では相変わらず切れ味の良いソロを展開しており、音楽の表情が多様になって明らかに新境地を切り拓きました。長年の相棒、フレディ・ハバードの快演も注目です。
毎度のことですがブルーノートは録音時に未発表の好演がたくさんあり、『スパイラル』は60年代後半に録音されましたが、発売は70年代に入ってから。最初に収録したタイトル曲ではハロルド・ランドをフロントに据え、テナー奏者との相性の良さも見せています。ピアノがスタンリー・カウエルというのも面白い。アルバム最後の曲《ジャスパー》はメンバーが変り、いつものフレディのほか、初リーダー作で共演したサム・リヴァースやアンドリュー・ヒルが参加しています。
『オブリーク』も録音当事未発表のアルバムで、『ハプニングス』と同じようにピアノのハンコックと共演しており、楽器構成はあのM.J.Q.といっしょ。ただ当然描き出される世界は違っており、ミルト・ジャクソンのソウルフルな魅力に対し、こちらはモダンかつクール。この一事に象徴されるように、ハッチャーソンのヴァイブ・サウンドが加わることによって、音楽の表情がクールでモダンなものに変貌するところが彼の魅了であり、聴き所です。

【掲載アルバム】
ボビー・ハッチャーソン『ハプニングス』(Blue Note)
ボビー・ハッチャーソン『コンポーネンツ』(Blue Note)
ボビー・ハッチャーソン『ナックルビーンズ』(Blue Note)

水曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

木曜日 22:00~ クリフォード・ブラウン特集

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クリフォード・ブラウン
「スタディ・イン・ブラウン」
(EmArcy)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第131回
第9回 クリフォード・ブラウン(再放送)

若くして不慮の自動車事故で亡くなってしまったクリフォード・ブラウンは、極めて短い活動期間にもかかわらず、多くの名盤を残しています。それは一にも二にも、彼の演奏技術が優れていたからです。トランペットいう楽器の特性を完璧に生かした、輝かしく勢いのある彼のサウンドは誰にも真似できません。
ブラウニーと愛称されたクリフォード・ブラウンは、デビュー時から完璧なトランペット技術でファンを驚かせました。最初にご紹介するアルバム「ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド」(Columbia)は1952年の録音で、ラテン・バンドのサイドマンとしての初録音です。音楽自体はちょっとレトロな感じですが、後半に登場するブラウニーのソロは既に完成されています。
次にご紹介する「ジャズ・イモータル」(Pacific Jazz)は、珍しくブラウニーがズート・シムス他、ウェスト・コーストのミュージシャンたちと共演したアルバムで、彼がどのようなタイプのジャズマンとも合わせられることが良くわかる、実に心地よい演奏です。 有名なアート・ブレイキーの「バードランドの夜Vol.2」(Blue Note)では、まさにハードバップの夜明けを告げるブラウニーの熱演が記録されていますね。共演のルー・ドナルドソンも元気一杯。そしていよいよマックス・ローチとの双頭バンドです。「スタディ・イン・ブラウン」、「クリフォード・ブラウン・アンド・マックス・ローチ」(共にEmarcy)では、サイドのテナー奏者、ハロルド・ランドの好演も手伝って、どちらも彼らの代表作にふさわしい名盤です。
しかし気が付きにくいのがローチの役割で、メロディ楽器の陰に隠れがちですが、実は演奏を隅々までコントロールしているのは、むしろ年上のローチなのですね。彼がしっかりとリズム・キープしているおかげで、ブラウニーはじめ、ランドもまた彼らの個性を自在に発揮できるのです。
ブラウニーはトランペットの圧倒的技術を誇るだけでなく、「歌心」においても優れていました。ストリングスとの共演では、シンプルにメロディを歌わせるだけで聴き手を魅了する表現力を持っているのです。ですからブラウニーは当然歌伴もうまく、サラ・ヴォーンはじめ、ヘレン・メリルなどと優れたヴォーカル・アルバムを録音しています。サラの「バードランドの子守唄」も、メリルの「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」も、歌い手がいいのは当然ですが、サイドに登場するブラウニーの輝かしいソロが華を添えているのも、大きな聴き所となっているのです。
ローチとの双頭バンドは途中からテナー奏者が当時の新人、ソニー・ロリンズに変わります。「アット・ベイジン・ストリート」(EmArcy)は、まだちょっと荒削りなところが垣間見えるロリンズを相手に、ブラウニーならではの輝かしく勢いのあるトランペットが堪能できる名演です。彼、相手によってけっこう頑張っちゃうんですね。
そして最後にご紹介するのは、冒頭と同じアルバムに収録されているブラウニーの死の1年前の録音です。発売当初は「死の直前」とされていましたが、近年もっと前の記録であったことがわかりました。地方の無名ミュージシャンたちとの気軽なジャム・セッションにもかかわらず、「チュニジアの夜」にしても「ドナ・リー」にしても、その気合の入り加減は尋常ではありません。こうした演奏を聴くたびに、ジャズマンという人種の表現に賭ける意気込み、凄みに心底圧倒される思いです。

【掲載アルバム】
クリフォード・ブラウン「スタディ・イン・ブラウン」(EmArcy)
クリフォード・ブラウン「ベイジン・ストリートのクリフォード・ブラウン」(EmArcy)
クリフォード・ブラウン「ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド」(Columbia)

木曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

金曜日 22:00~ 新譜特集 第16回

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ビル・フリゼール
『スモール・タウン』
(ECM)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第151回
新譜特集 第16回(再放送)

今回最初にご紹介するのは、今年なんと80歳を迎えたという大ベテラン・ドラマー、ルイス・ヘイズのブルーノート、デビュー・アルバム『セレナーデ・フォー・ホレス』です。タイトルからもわかるように、彼が長年サイドマンを務めたブルーノート・レーベルの看板ピアニスト、ホレス・シルヴァーの楽曲を披露しています。楽器編成は、かつてルイスがホレスのバンドにいた時と同じトランペットとテナーの2管クインテットに、楽曲によってヴァイブラフォンが加わった総勢6名。
聴き所は、2曲目に収録したホレスの名曲「セニョール・ブルース」とホレスの人気を不動のものとした、3曲目に収録した「ソング・フォー・マイ・ファーザー」でしょう。とりわけ後者には今人気のグレゴリー・ポーターがゲストに加わるという豪華さです。ブルーノート・レーベルの意気込みが伝わって来ます。
私は2015年に彼が来日した際インタビューを行っていますが、実に元気で、いろいろとホレス・シルヴァーのバンドにいたころの話をしてくれました。印象に残っているのは、ホレスがまだ若かったヘイズにいろいろと親切にジャズ界のことを教えてくれたことや、かなり自由に演奏させてくれたので、たいへんやりやすかったといったエピソードでした。
2枚目は、アメリカのTVトーク番組「トゥナイト・ショー」の音楽監督を降板し、アルバム制作を再開したギタリスト、ケヴィン・ユーバンクスの『イースト・ウェスト・タイム・ライン』(Mack avenue)です。二つのグループで録音していますが、ニコラス・ペイトン、ディヴ・ホランドによるメインストリーム・ジャズが聴き所です。
次は、山中千尋が今年生誕100周年を迎えたセロニアス・モンクをテーマとした新作『モンクス・スタディズ』(Blue Note)です。このアルバムで山中は、ピアノの他、シンセサイザー・オルガンも披露し、積極的にモンクの世界を拡張しています。聴き所は、彼女の前向きな意欲が演奏のクオリティに直結しているところでしょう。モンクの音楽が持つ、ちょっとクセがありつつも懐が深く、ミュージシャンによる解釈の自由度の高さが山中の資質と巧くフィットしたのでしょうね。たいへん素晴らしく聴き応えのある作品で、彼女の代表作となるでしょう。
そしてこの企画が成功の理由の一つに、適切なサイドマンの選択があったと思います。何しろドラマーが、フライング・ロータスやサンダーキャットの新作に参加した元祖人力ドラム・マシーン、ディーントニ・パークス、そしてベーシストもヒップホップ・グループ、ザ・ルーツのレギュラー・ベーシスト、マーク・ケリーです。彼らのまさに21世紀的なリズムが、山中の先鋭な発想と実にうまくマッチしているのですね。
ダーシー・ジェームス・アーギューはカナダで生まれアメリカで活動する作曲家です。今回ご紹介した『Infernal Machine』(New Amsterdam)は彼が率いるラージ・アンサンブル「シークレット・ソサエティ」が2009年に発表したアルバムで、スティーム・パンクを標榜した作品です。お聴きになればお分かりかと思いますが、さまざまなエフェクトを多用したサウンドの斬新さが新時代のジャズ・バンドの在り方を示唆しています。
次はダニー・マキャスリンなどのバンドで活躍するベーシスト、スコット・コリーの新譜『セヴン』(Artist Share)です。聴き所はジョナサン・フィレンソンの軽やかなトランペット。そして最後は、つい先日来日したビル・フリゼールが、トマス・モーガンと共演したデュオ・ライヴ・アルバム『スモール・タウン』(ECM)。フリゼールのギターが素晴らしいのは言うまでもありませんが、モーガンとの息の会い具合が何とも心地よい。ライヴの雰囲気も大変に暖かいものとなっています。

【掲載アルバム】
山中千尋『モンク・スタディズ』(Blue Note)
ダーシー・ジェームス『Inferent machines』(New amsterdam)
ビル・フリゼール『スモール・タウン』(ECM)

金曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

[Recommend!] 土・日曜日 22:00~  新譜特集 第27回

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カマシ・ワシントン
『ヘヴン・アンド・アース』
(Beat Record)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第162回
新譜特集 第27回

今回の目玉は何と言ってもカマシ・ワシントンの話題作『ヘヴン・アンド・アース』(Beat Record)でしょう。ここ数年、ジャズは新しいディメンションに突入し、斬新なアイデアを持った新人ミュージシャン、魅力的なアルバムが続々と登場しています。その流れを決定付ける作品が、ついにカマシによって世に問われたのです。
このアルバムは「アース編」と「ヘヴン編」がそれぞれのCDに収録された大作で、聴き応え十分でありつつ、全編聴き通しても飽きることが無いという、練り上げられた作品です。今回は「アース編」から冒頭の3曲を収録しましたが、これだけでも十分魅力が伝わってくるでしょう。
「アース」とは地球、あるいは大地のことですが、カマシはこの言葉の意味を次のように説明しています。「『アース』のパートは、私が『外向きに』見る世界を表現している。つまり私が存在している世界を表している」。そして「ヘヴン」つまり「天国編」についてもこう述べています。「『ヘヴン』のパートは、私が『内向き』に見る世界、つまり私の中に存在している世界を表している。私が何者であるか、そしてどんな選択をしていくのか。その答えは、それら二つの世界の間にある。」。こう書くとやはり『ヘヴン編』が気になりますよね。こちらは次回のお楽しみということにしておきましょう。
彼の言葉通り、冒頭に収録された楽曲《Fists of Fury》は印象的で親しみやすいメロディがダイナミックなサウンドと共に迫ってくる、良い意味で「世俗的」な名曲です。そして3曲目には、何とフレディ・ハバードの《ハブ・トーン》が。この辺り、カマシが伝統的ジャズ・シーンに連なっていることを印象付けますね。お馴染みの「カマシ節」もふんだんに登場し、今のところ今年のベスト1アルバムと言って間違いありません。
スイス人ピアニスト、ニック・ベルチュのバンド「Ronin」は、日本の「浪人」のことです。そして今回収録したアルバム『AWASE』(ECM)の意味は、日本の武術、合気道などで相手の動きに「合わせ」て動くことのようです。まさにベルチュは「日本ファン」ですね。
シンプルなフレーズが執拗に繰り返されるのですが、次第に彼らの音楽に惹き込まれてしまうのは、「浪人バンド」の演奏力の確かさの賜物と言っていいでしょう。
強面テナー奏者、デヴィッド・マレイが、テリ・リン・キャリントン、昨年惜しくも亡くなったジェリ・アレンらと結成したグループ、パワー・トリオによるデビュー・アルバム『Perfection』(Motema)は、三者の良いところが結実した傑作です。テナー、ピアノ、ドラムスの変則トリオですが、違和感を一切感じさせないのはさすがですね。
エドワード・サイモンはベネズエラ出身のピアニストで、現在はニューヨークで活躍しています。彼の新作『Sorrows & Triumph』(SUNNYSIDE)は、アルトのデヴィッド・ビニー、ベース、スコット・コリー、そしてドラムスのブライアン・ブレードなど、ニューヨークのトップ・プレイヤーが脇を固めています。爽やかな空気感を感じさせるサウンドは、ラテン・ミュージシャンの血が成せる技なのでしょうか。
最後に収録したブラッド・メルドーの新作『Seymour Reads the Constitution!』(NONSUCH)は、ベースのラリー・グレナディア、ドラムス、ジェフ・バラードによるトリオ・アルバムです。オリジナル・ナンバーでみせる「メルドーらしさ」は、やはりこの人の強みですね。

【掲載アルバム】
カマシ・ワシントン『ヘヴン・アンド・アース』(Beat Record)
ニック・ベルチュ『AWASE』(ECM)
デヴィッド・マレー、ジェリ・アレン、テリ・リン・キャリントン『Perfection』(Motema)

土・日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

インフォメーション

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■ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

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