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D-51 ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお送りします。毎夜22:00~24:00の「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定で、後藤雅洋が執筆したコラムとともにジャズの魅力をお伝えします。

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月曜日 22:00~ 新譜特集 第33回

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マーカス・ストリックランド
『ピープル・オブ・ザ・サン』
(Blue Note)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第169回
新譜特集 第33回(再放送)

今回最初にご紹介するのは、デイヴ・ダグラス率いるレギュラー・クインテットによるライヴ・アルバム。レコーディングは2015年で、この年に出た彼らの傑作アルバム『Brazen Heat』の名を冠した『Brazen Heat Live at Jazz Standard Saturay』(Greenleaf Music)というアルバム・タイトルです。
聴き所はライヴならではの活きの良さで、リーダー、ダグラスのトランペットもさることながら、サイドのサックス、ジョン・イラバゴンの活躍が目立ちます。ニューヨーク・シーンの活気が伝わる熱演ですね。
現代ジャズを象徴するサックス奏者、マーカス・ストリックランドの2年ぶりの新作は、本人のプロデュースによる『ピープル・オブ・ザ・サン』(Blue Note)です。コンポーザー、バンド・リーダー、そしてサックス奏者としての役割を統一的に表現した作品で、西アフリカにルーツを持つアフリカン・アメリカンとしての出自、そして多くの現代ジャズ・ミュージシャンが影響を受けて来た、ポップス、ビート・ミュージックといったアメリカン・ミュージック的要素を実に自由なスタンスで融合させています。
イギリスは旧インドの宗主国だったので、インド音楽の影響が根付いているようです。ユナイティング・オブ・オポジッツもそうしたグループで、アルバム『Ancient Lights』(Tru Thoughts)は、彼らの手になる新作です。メンバーは1945年スコットランド生まれのシタール奏者クレム・アルフォードを中心に、ベーシストのベン・ヘイゼルトン、そしてバンドのまとめ役兼プロデュースを行うのはクラブ・シーンで活躍して来たティム・リッケンで、このアルバムではシンセサイザー等を担当しています。
極めてインド音楽的テイストが強い演奏ですが、本格的なインド音楽をクレムがメンバーに教え、録音、エンジニアリング、スタジオ・ワークなどはティムが担当し、インド音楽とジャズの橋渡し役はベンの役割だそうです。現代ジャズはエスニックな要素が重要なポイントとなっていますが、このアルバムなどはその顕著な例と言えるでしょう。
アルバム『This Is It』(Storyville)のリーダーであるカースティン・ヴォーゲルは、1970年代にデンマークで人気を誇ったプログレッシヴ・ロック・バンド、シークレット・オイスターなどで活躍した経歴を持つ、異色のサックス奏者です。それだけに楽曲の解釈もユニークで、2曲目に収録した《Kyoto》は明らかに日本の京都のことだと思うのですが、インド音楽を思わせるサウンドからは古都京都のイメージは浮かびませんよね。とは言え、優しく語りかけるようなヴォーゲルのサックスはなかなか魅力的で、彼にとっての「京都」はこうした印象だったのかな、とも思わせます。
ブラッド・メルドーなど現代有数のピアニストらから敬意を抱かれているフレッド・ハーシュの発掘作品が『フレッド・ハーシュ・トリオ’97 アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』(King International)です。このアルバムは1997年に彼が初めてヴィレッジ・ヴァンガードに出演した際の貴重な記録で、スタンダード・ナンバーを斬新かつ活き活きと演奏しています。
最後に収録した『Ivisible Hand』(Cortez Sound)は、ビッグ・バンドを率い多くの優れたアルバムを残している藤井総子が、水戸のライヴ・ハウス「Cortez」でソロ・ピアノを披露した珍しいアルバムです。ジャズならではの緊張感と音楽的な豊かさが高度なレベルで融合した素晴らしい演奏で、彼女のピアニストとして技量の高さを改めて再認識させられました。名演です。

【掲載アルバム】
デイヴ・ダグラス『Brazen Heat Live at Jazz Standard Saturay』(Greenleaf Music)
マーカス・ストリックランド『ピープル・オブ・ザ・サン』(Blue Note)
藤井総子『Ivisible Hand』(Cortez Sound)

月曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

火曜日 22:00~ M.J.Q.特集

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M.J.Q.『フォンテッサ』
(ATL)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第130回
「ジャズの巨人シリーズ」第8回 M.J.Q.(再放送)

1952年に結成され、初期の一時期を除き不動のメンバーで以後1974年に至るまで、第一線で活躍したM.J.Q.は、オーソドックスでありながらとてもユニークなグループです。ピアノのジョン・ルイスが実質的なリーダーで、彼とヴァイヴのミルト・ジャクソンの織り成す見事なコラボレーションの魅力はたとえようもありません。
最初にご紹介するのは、1952年に録音されたM.J.Q.最初の録音です。曲目もスタンダード・ナンバー「オール・ザ・シングス・ユー・アー」。このときのドラマーはモダン・ドラミングの開祖ケニー・クラークで、M.J.Q.のスタート地点を知るかっこうの音源です。そして、ジョン・ルイスが有名なギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトに捧げた名曲「ジャンゴ」が収録された同名のアルバムで、M.J.Q.の名前は日本のファンにも広く知られるようになりました。
「朝日のように爽やかに」が収録されたアルバム「コンコルド」(Prestige)のドラマーはコニー・ケイで、このときからメンバーは変わっていません。良く知られたスタンダードが、ピアノとヴァイヴの見事なコラボレーションで活き活きと輝いています。このように、アレンジされた部分と各自のソロが緊密に結び付いた演奏スタイルがハード・バップで、1955年の時点で完全に完成されたスタイルを誇っているのはさすがです。
M.J.Q.はプレスティッジからアトランティック・レーベルへと移籍し、より彼らの持ち味が活かされたアルバムが次々とアトランティックから出されます。「フォンテッサ」はその代表とも言うべき名盤で、ジョン・ルイスのクラシック趣味が見事なジャズに昇華された名演です。
彼らの魅力は、ルイスのピアノとミルトのヴァイヴがごく自然に一つの音楽に融合しているところ。面白いのは、同じヴァイヴ・サウンドでも、ミルトのリーダー作とM.J.Q.における演奏ではまったく雰囲気が違うのですね。それにもかかわら、ずミルトの個性はしっかりと活かされているのです。これはルイスのリーダー・シップが極めて優れていたからでしょう。
興味深いのは、ルイスの単独リーダー作のテイストもまた、M.J.Q.のチーム・プレイとは微妙に異なっているところです。そういう意味では、M.J.Q.は実にユニークなグループと言えるでしょう。完全にグループの音楽としての個性が確立されているのです。
さて、M.J.Q.がフリー・ジャズの大物、オーネット・コールマンの名曲「ロンリー・ウーマン」を取り上げています。意表を突くようですが、実は西海岸でデビューしたオーネットをジャズの中心地、ニューヨークのジャズ・シーンに紹介したのは他でもないジョン・ルイスだったのです。一見オーソドックスなタイプに見えるルイスの先見性はたいしたもの。
アトランティックのアルバムはどれも良いのですが、たとえば「ピラミッド」に収録されている「ヴァンドーム」など、プレスティッジ時代にも録音した曲の再演ですが、明らかに洗練の度が高くなっています。興味がおありでしたら聴き比べてみてください。聴き比べといえば、74年のM.J.Q.解散コンサートでも「朝日のように爽やかに」を演奏しており、こちらはライヴでということもありますが、自分達の過去を懐かしく振り返るような熱演となっています。
一度は解散したM.J.Q.ですが、1981年に活動を再開します。最後に収録した「ジス・ワンズ・フォー・ベイシー」(Pablo)は1985年に録音された再結成後のアルバムで、このとき初演の「トプシー」など、このグループの底知れない可能性を感じさせる名演です。

【掲載アルバム】
M.J.Q.『フォンテッサ』(ATL)
M.J.Q.『ピラミッド』(ATL)
M.J.Q.『ザ・ラスト・コンサート』(ATL)

火曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

水曜日 22:00~ スタンレイ・タレンタイン特集

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スタンレイ・タレンタイン
『ルック・アウト』(Blue Note)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第119回
スタンレイ・タレンタイン特集(再放送)

前回、ブッカー・アーヴィン特集の前置きで「実力の割にはいまひとつ知名度が低い」と紹介しましたが、今回のテナー奏者、スタンレイ・タレンタインにも似たようなことが言えると思います。ただ、タレンタインの場合は日本のファンの間でも一定の認知度はあるのですが、少しばかり「軽く」見られている節もある。また、アーヴィンはおそらくアメリカでも一部の熱狂的ファンはいたでしょうが、さほど一般的知名度があったとも思えませんが、タレンタインはアメリカではまさにビッグ・ネームだったのです。
この日米の違いは面白い。その理由は少しわかるような気もします。と言うのも、日本に幅広くジャズが紹介され始めた1960年代、テナー・サックスの王者は何と言ってもジョン・コルトレーンでした。彼は音楽自体の素晴らしさもさることながら、突き詰めたような求道者的な雰囲気も含めて高く評価されていました。その影響で、アメリカではふつうに認められているジャズの大衆的部分とか娯楽的な要素に対して、相対的に低く見る風潮があったように思います。
タレンタインの魅力は何と言ってもその野太くアーシーなテナーのサウンドです。そしてビ・バップ以前のスイング・テナー、たとえば、コールマン・ホーキンスとかベン・ウエブスターが持っていた、濃い味わいも備えている。ただ、コルトレーンやウエイン・ショーターたちのように新しい試みに挑戦したりするタイプではないので、その分「軽く」見られていたのかもしれません。
1枚目にご紹介するアルバムは、彼がおしどり夫妻と言われた妻のオルガン奏者、シャーリー・スコットと共演した『ネヴァー・レット・ミー・ゴー』(Blue Note)です。冒頭に収録された名曲《トラブル》のアーシーでファンキーな気分はタレンタインならでは。シャーリーのオルガン・ソロも素敵です。2枚目の『ジュビリー・シャウト』(Blue Note)は、兄弟コンビ、トミー・タレンタインのトランペットにソニー・クラークのピアノ、そしてケニー・バレルが加わった2管セクステット。アーシーでブルージーな気分が横溢した楽しい作品。
タレンタインが少しばかり「軽く」見られたのは、70年代以降フュージョン的作品にも顔を出したことが理由かもしれません。しかし、アルバム『アップ・アット・ミントンズVol.2』(Blue Note)に収められた極め付きライヴの熱演《ラヴ・フォー・セール》をお聴きになれば、そんな偏見は一掃されることでしょう。圧倒的な演奏テクニックで吹きまくるタレンタインの迫力はまさに第一級テナーマンの貫禄十分です。サイドのギター、グラント・グリーンの燃え具合も素晴らしい。
『ルック・アウト』(Blue Note)はタレンタインがこれまたアーシーなピアニスト、ホレス・パーランをサイドに迎えたシンプルなワン・ホーン・カルテットでタップリとテナーの魅力を伝えています。このアルバムの3曲目に収録された《マイナー・チャント》はアーシーな気分に溢れたまさにマイナー調の名曲です。一転して『ザッツ・ホエア・イッツ・アット』(Blue Note)はレス・マッキャンをピアノに迎えた軽快な《スマイル・ステイシー》で始まります。それでも調所に見せるタレンタインのファナティックな「絶叫」は、彼ならでは。そして最後に収録したのは、彼がCTIに吹き込んだ人気アルバム『シュガー』から、コルトレーンの名演で知られた《インプレッション》です。

【掲載アルバム】
スタンレイ・タレンタイン『ネヴァー・レット・ミー・ゴー』(Blue Note)
スタンレイ・タレンタイン『アップ・アット・ミントンズVol.2』(Blue Note)
スタンレイ・タレンタイン『ルック・アウト』(Blue Note)

水曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

木曜日 22:00~  新譜特集 第8回

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ダニー・マッキャスリン
『ビヨンド・ナウ』(AGATE)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第143回
新譜特集 第8回(再放送)

最初に収録したのは、突然の死が惜しまれたデヴィッド・ボウイの遺作『ブラック・スター』のバックバンドを務めたことで注目された、ダニー・マッキャスリンの新作『ビヨンド・ナウ』(AGATA)です。メンバーもキーボード、ジェイソン・リンドナー、ドラムス、マーク・ジュリアナ、エレクトリック・ベース、ティム・ルフェーヴルなど、その時のメンバーと重なり、デヴィッド・ボウイの作品も演奏していることもあって、サウンドは『ブラック・スター』の最新ジャズ版といった感じです。
思い出せば、ずいぶん昔にニューヨークの「55バー」で若き日のダニー・マッキャスリンの演奏を聴いたことがあるのですが、以来この人の進化は凄まじいものがあります。ごく大ざっぱに言えば、マイケル・ブッレッカーの影響を受けていると言えるのでしょうが、斬新なリズム、サウンド・コンポジションによって、まさしく「現代のジャズ」となっており、そこも含め、完全にオリジナリティを確立させたと言っていいでしょう。名演です。
BIGYUKIという名前でデビューしたニューヨーク在住のキーボード奏者、平野雅之の新作『グリーク・ファイアー』(Universal)は、現代性を感じさせつつも不思議な懐かしさも覚える独自のテイストが面白い。それにしても、ビッグユキというニックネームの由来が笑えます。バークリーの修行時代に、もう一人「ユキ」と呼ばれた日本人ミュージシャンが居たため、その人物と区別するため背の高い平野が「ビッグ・ユキ」と呼ばれたそうです。。彼はニューヨークを拠点とし、多くのセッションに引っ張りだこの注目株です。
3枚目に収録したアルバムは、今話題のノラ・ジョーンズの新作『ディ・ブレイクス』(Blue Note)です。久しぶりに彼女自身がピアノなどを弾き語りしているだけでなく、サイドマンがたいへんに豪華、一音だけで存在感のあるウエイン・ショーターがいくつかのトラックに参加しているのですね。また、採り上げた楽曲も非常に魅力的で、これはヒット間違いなし。実際、既にいろいろなところでこの新作が流れています。
マイルス・デイヴィスの残されたマスター・テープを自在に使い、ロバート・グラスパーがマイルスを現代に蘇らせた話題作が『エヴリシングス・ビューティフル』(Columbia)です。この作品の特徴は、素材がマイルスであっても、音楽自体はあまりマイルス・ミュージックを思い起こさせるようなテイストではなく、まさにグラスパーのスタイルになっているところでしょう。こうした発想はヒップ・ホップ以降の世代ならでは。
つい最近来日公演をしたトランペッター、クリスチャン・スコットが共同プロデュースしたことで話題となっているのが新人女性ヴォーカリスト、サラ・エリザベス・チャールズの新譜『インナー・ダイアローグ』(Concord)です。私も初めて彼女の歌声を聴いたのですが、これは素晴らしい。声の張り、テクニック抜群で、しかもたいへん個性的。間違いなく彼女はこれからの注目株となるでしょう。サイドマンとしてクリスチャン・スコット自身も参加しているところも聴き所です。
最後に収録したEMY・Trioの『Genesi』(le Havre)は2年ほど前の作品ですが、これは傑作です。哀愁を帯びた旋律が魅力的なブルガリアの民族音楽を取り入れたピアノ・トリオ演奏で、このところヨーロッパのジャズ・シーンに顕著なエスニック・テイストの見直しの流れに沿った作品と言えるでしょう。オーソドックスなフォーマットながら、エリス・デュフォーの演奏するピアノには、現代ジャズならではの斬新さが感じられます。

【掲載アルバム】
ダニー・マッキャスリン『ビヨンド・ナウ』(AGATE)
ノラ・ジョーンズ『デイ・ブレイクス』(Blue Note)
サラ・エリザベス・ジョーンズ『インナー・ダイアローグ』(Concord)

木曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

金曜日 22:00~ 新譜特集 第27回

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ジョン・コルトレーン
『ザ・ロスト・アルバム』
(Impulse)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第163回
「新譜特集」第27回(再放送)

今回最初にご紹介するジョン・コルトレーンの『ザ・ロスト・アルバム』(Impulse)は、今ジャズファンの間で大きな話題となっているコルトレーンの未発表音源です。コルトレーンほどの大物ともなると、従来から海外ツアーなどの私製未発表録音は大量に出回っていましたが、これは発売を前提にスタジオで正規に録音されており、それらとはまったく性格が違います。
また録音年月日が1963年3月6日ということですが、これは良く知られたコルトレーンの傑作『ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン』(Impulse)が録音された前日に当たっているのですね。つまりコルトレーンの人気が頂点に達し、マッコイ・タイナー、エルヴィン・ジョーンズといった「黄金のカルテット」が快調に傑作アルバムを発表していた時期の音源なのです。
演奏をお聴きいただければわかると思うのですが、期待にたがわずコルトレーンは絶好調。それを裏付けるように、このアルバムは現在全米アルバム・チャートで21位と、ジャズ・アルバムとしては異例の売れ行きを示しています。そうしてみると、「なぜ、これがお蔵入りだったのか?」という疑問がよぎりますが、60年代はブルーノート・レーベルなども非常に出来の良い演奏が多数「未発表」のまま、後に「発掘」され、その「贅沢さ」が私たちファンを驚かせてきたものです。
『30光年の浮遊』(Verve)は、山下洋輔がベースのセシル・マクビーとドラムスのフェローン・アクラフを従えた「ニューヨーク・トリオ」の結成30周年を記念したアルバムです。彼の著書『ドバラダ門』のタイトルともなった《ドバラダ》に別パートを加えた《ドバラダ2018》、《早春賦》が収録されています。
『Doubtless』(Whirlwind)は1977年スロベニア生まれのサックス奏者ユーレ・プカルが、チリ出身のミュージシャンらと組んだダブル・テナーでピアノレスというユニークなグループ「ダウトレス」のアルバムです。所々でみせるポップな味付けが粋ですね。 山中千尋がクラシックの名曲を現代ジャズとして蘇らせた『Utopia』(Blue Note)は、彼女の才覚の閃きが窺えるアルバムです。《乙女の祈り》のジャズ・ヴァージョンなんて思い付くのは、彼女ぐらいじゃないでしょうか。
そして最後に収録したのは、前回予告したカマシ・ワシントンのシークレット・ディスク付き3枚組『ヘヴン・アンド・アース』(Beat Record)の「ヘヴン編」です。前回も触れましたが、カマシによると「ヘヴン編」は「私が『内向き』に見る世界、つまり私の中に存在している世界を表している」そうです。
前回「アース編」冒頭の《Fists of Fury》を「印象的で親しみやすいメロディ」とご紹介しました。ご存知かと思いますが、あの楽曲はブルース・リーの映画『ドラゴン怒りの鉄拳』の主題歌ですよね。今回冒頭に収録した《ストリート・ファイター・マス》もまた、たいへんメロディアス。カマシの強みは、まずわかりやすいメロディがあって、それがカマシならではのアイデアによって緻密かつ壮大にアレンジされカマシ独特の世界を表現しているところでしょう。従来、ジャズの楽曲は即興の「素材」として扱われ、メロディ・ラインの魅力はないがしろにされがちでしたが、カマシはそこに果敢に挑戦し、旋律の良さとジャズならではの表現を見事に融合させたのです。
ちなみに、次回は話題のシークレット・ディスクもご紹介したいと思います。

【掲載アルバム】
ジョン・コルトレーン『ザ・ロスト・アルバム』(Impulse)
山下洋輔『30光年の浮遊』(Verve)
山中千尋『Utopia』(Blue Note)

金曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

[Recommend!] 土・日曜日 22:00~  新譜特集 第38回

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ジェリー・バーガンジー
『ザ・セヴン・レイズ』
(Savant)

「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」 第174回
新譜特集 第38回

今回最初に収録したのはベテラン、サックス奏者ジェリー・バーガンジーのクインテット・アルバム『ザ・セヴン・レイズ』(Savant)です。楽器編成はバーガンジーのテナー・サックスにフィル・グレナディアのトランペット、それをピアノ・トリオのリズム・セクションが支えるオーソドックスなスタイル。ちなみにフィル・グレナディアは、ブラッド・メルドーのベース奏者として知られたラリー・グレナディアのお兄さんです。
演奏はごくオーソドックスなスタイルでメンバーの息も合い、良い意味で安心して聴ける作品と言えるでしょう。ていねいにフレーズを積み上げて行きつつも温度感の高いバーガンジーのテナー・サウンドは、好感が持てますね。そしてそれを支えるフィル・グレナディアの颯爽としたトランペットも心地よい。
2枚目のアルバムは、第1回新譜特集でご紹介したイギリスのベテラン、サックス奏者、ジュリアン・アーギュロスの『Tonedas』(EDN)。こちらはアーギュロスがワンホーンでじっくりと聴かせる演奏で、けれん味のないストレートなスタイルはジェリー・バーガンジーに通じるものがあります。ただ、バーガンジーがいかにもホットな「アメリカン・ジャズ」なのに比べ、アーギュロスの演奏はイギリスの風土のせいか、若干の渋みというか香辛料が効いているようにも思えます。
そして今回の目玉はブラッド・メルドーの話題作『ファインディング・ガブリエル』(Nonesuch)でしょう。90年代、先ほど触れたラリー・グレナディアらを率いた個性的ではあってもオーソドックスなピアノ奏者としてファンの前に登場し、その後果敢にポップスに挑戦した作品などで単なるピアニストの枠を超える「音楽家」としての存在感を増してきたメルドーが、マーク・ジュリアナと5年ぶりの共演を果たしたのが本作です。
聴き所はコーラスを多用したユニークな世界観の提示で、これは聖書にインスパイアーされたことが大きいようです。タイトルあるガブリエルとは、旧約聖書に登場する大天使ガブリエルのことで、それだけに描き出された音楽世界のスケールは壮大です。メンバーも豪華で、きらびやかなトランペットは話題の新人アンブローズ・アキムシーレ、そして何とバック・コーラスを務めるのはこれも注目のヴォーカリスト、ベッカ・ステーヴンスというのですから、これは聴き逃せません。
音楽の傾向こそ異なれ、メルドーの新作はカマシ・ワシントンらが目指す「テーマ性のあるジャズ」の一環と捉えることが出来るでしょう。
北欧のベース奏者、ジャスパー・ホイビー率いるピアノ・トリオ「フロネシス」によるアルバム『ウィ・アー・オール』(EDN)は、とてもアコースティック・ピアノ・トリオとは思えないダイナミックで刺激的な演奏が魅力ですね。それもいわゆる“フリー・ジャズ”ではないスタイルで斬新さを出しているところが聴き所で、ヨーロッパを中心に彼らが高い評価を得ているのがよく理解できるアルバムです。
次にご紹介するデクスター・ストーリーの新作『Bahir』(Rings)は実に興味深い作品です。デクスターはLAで生まれ育ったアフリカ系アメリカ人ですが、この作品はなんとエチオピア音楽の影響を強く受けているのですね。ご存知かもしれませんが、エチオピアの音楽は日本の歌謡曲にとてもよく似ているのです。以前ご紹介したマーク・ド・クライヴ・ロウの音楽も日本趣味全開でしたが、こうしたタイプのエスニック・テイストが今ジャズ界で注目されているのはたいへん興味深い現象です。
最後にご紹介するジュリアン・ラージのアルバム『Love Hurts』(Mac Avenue)は、彼のギターの上手さが光ると同時に、彼の音楽的バック・グラウンドの広さが聴き所でしょう。懐かしいようなメロディ、心に染み入るフレーズが温かなギターで奏でられます。

【掲載アルバム】
ジェリー・バーガンジー『ザ・セヴン・レイズ』(Savant)
ブラッド・メルドー『ファインディング・ガブリエル』(Nonesuch)
デクスター・ストーリーの新作『Bahir』(Rings)

土・日曜日 22:00~ 2時間番組

ソングリスト

インフォメーション

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■ジャズ喫茶リアル・ヒストリー/後藤雅洋
発売中/河出書房新社/ISBN 978-4-309-27067-8

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